映画を見ていたら登場人物に話しかけられる!? あのアメコミヒーローが話題の理由って?

アメコミのヒーロー映画が人気ですが、今年、話題になっている、あるヒーローは、観客に話しかけるのが特徴とか。一体どのようなヒーローなのでしょうか。
この記事をまとめると
- 舞台と観客の間に存在する「第四の壁」というものがある
- 登場人物が「第四の壁」を超えてくる作品は昔からあった
- 演劇論など知識を得ることで、より深い視点で作品を観ることができる
常識を破壊? 映画や演劇と観客の間に存在する「第四の壁」とは?
ここ数年、「マーベル・コミック」を原作とした作品を中心に、『アベンジャーズ』や『X-MEN』『キック・アス』など、アメリカン・コミック、いわゆる“アメコミ”のヒーロー映画が日本でも大ヒットとなっています。みなさんもお気に入りのヒーローがいるのではないでしょうか?
そんな中、公開前から期待を集めているのが、アメリカでは2016年2月に公開予定(日本では6月を予定)の新作映画、『デッドプール』です。日本でも「デップー」の愛称でアメコミファンの人気を集めているこのキャラクター、なんと作中で読者や作家に語りかけてくるというのです。これは本来、作品ではあり得ないことです。なぜなら、映画や演劇と観客の間には「第四の壁」というものが存在するからです。
この第四の壁とは、もともとは舞台用語で、役者がいる舞台と客席の間に存在する架空の壁のことを指しています。目に見えない壁を設定することで、役者たちは舞台空間の向こうに観客がいることを意識せずに演技をします。しかしデッドプールの場合、自分自身をコミックのキャラクターと自覚しているために、そんなことはまるでお構いなしです。読者に語り掛けてきたり、作者にダメ出しをしてみたり、「第四の壁を超えた常識破りの存在」として人気を得ているのです。
登場人物が「第四の壁」を超えてくる作品は昔からあった?
このデッドプールは当初1回きりの“使い捨てキャラ”だったそうですが、コミックの制作サイドにそのユニークさを買われて、マーベル・コミックでレギュラー化。その悪ノリが人気を博して単独で実写映画化されました。映画のスクリーンから語りかけてくるデッドプールを想像するとなんだかドキドキしてしまいますよね。
デッドプールほど極端ではないにせよ、このように第四の壁を超えて観客に語りかけてくる手法は昔からよく見られます。人気小説を映画化したデビッド・リンチ監督作品『デューン/砂の惑星』では、オープニングで登場人物のイルーラン姫が、観客に向けて物語を見る上で押さえておいてほしい情報を伝えてきます。また、大ヒット映画の続編『グレムリン2』では、作品の枠を超えて特別出演している黒色のカモのキャラクター、ダフィー・ダックがエンドロールにも登場して物語を見終わってエンドクレジットを眺めている観客に早く帰るように促しています。どの作品もユーモアに溢れる作品ですが、スクリーンから突然話しかけられることで強烈に印象に残ってしまいます。
知識や理論を知ることで、映画や演劇がより深い視点で見ることができる
物語の登場人物がこのような発言をするのは、「メタ発言」ともいいます。日本でもギャグマンガなどにも使われる手法ですが、使い過ぎると作品の世界観を損なってしまう可能性もありますから、注意が必要です。
「第四の壁」は、舞台・演劇・舞踏の世界において、いかに観客の存在を意識せずに演技に没頭して表現できるかを追求した結果、生まれた用語だといえるでしょう。学校の部活で演劇部に入っている人や、将来俳優になりたいという夢を持っている人は、このような考え方や、舞台・演劇・舞踏論を勉強することで、自分では気がつかない演劇の世界を知るきっかけになるかもしれません。そうした知識を得たら、今まで見ていた映画や演劇も、きっとより深い視点で観ることができるはずですよ。
この記事のテーマ
「芸術・表現・音楽」を解説
最近では、国内外を問わず活躍し、高い評価を受けているクリエイターが多くいます。絵画や造形、声楽や楽器演奏、演劇や芝居、マンガやアニメーションなど、さまざまな芸術分野で多くの人を感動・共感させる感性や技術を磨きます。また、それを裏打ちする理論や歴史を学び、指導者や研究者としてのスキルも高めます。
この記事で取り上げた
「映像」
はこんな学問です
映像制作に必要な知識と技術を身に付ける学問。映像は、監督、カメラマン、脚本家、音声、美術など複数の技術と知識を合わせて完成するもので、自分がどの役割を担当したいかを考えながら学ぶ必要があるだろう。また、映像のジャンルによって使われる技術も異なる。具体的には、映画、テレビ、プロモーション、TVCM、報道、アニメーションなどが挙げられ、学校では各ジャンルを網羅して概要を学ぶケースが多い。
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