刑罰の執行まで時間を置く? ニュースで聞く「執行猶予」って何のためにあるの?

事件を取り上げるニュースなどで聞く「執行猶予」という言葉。なぜ「猶予」が設けられているのでしょうか。意外と知らない、執行猶予の仕組みについてご紹介します。
この記事をまとめると
- 「執行猶予」は刑を与える前に時間の猶予を持つこと
- 目的は、罪を犯した人への更生を促すため
- 法律がある目的、生まれた理由を学び、より快適な社会へ
ニュースなどでよく聞く「執行猶予」。その意味は?
「主文。被告人を懲役3年、執行猶予2年とする」
刑事ドラマや実際の裁判でよく耳にするこのフレーズ、聞いたことがありませんか。最近では法廷を舞台としたドラマやゲームも珍しくありません。裁判に臨む被告のスケッチなどもニュースで取り上げられていますね。そのときに目にしたり、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
「執行猶予」とは、文字通り「刑罰を与える前に時間を置く」ということです。犯罪を起こした被告対し、すぐには罰を与えずに、時間を与える。なぜ、そんなことをするのでしょうか。
刑をすぐに執行しないのはなぜ?
これまで犯罪経験がなかったのに罪を犯した人のことを、初犯と呼びます。
執行猶予とは、3年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金を言い渡された初犯にのみつけることができる制度です。執行猶予期間に罪を犯すことなく過ごせば、言い渡された刑そのものがなくなります。
これは、その期間に反省を促し、己の犯した罪を自覚させるための措置でもあります。だから、初犯限定なのですね。また、執行猶予期間中に再び犯罪を起こせば、執行猶予は取り消しとなり、言い渡されていた刑に加え、新たな犯罪の刑罰を即座に受けることになります。リスクを背負わせることで行動に慎重さが出るよう、配慮されているのです。
刑法の意義と、執行猶予の意味
罪を犯した人に刑罰を与える意義として、罪を犯せば罰を受けるという認識を持たせることと、これを広く認知させることで真似をする人が出ないよう抑止する効果が挙げられますが、それだけではありません。犯罪者本人に罪の意識を持たせ、同じ社会に生きる人間として立ち直らせるという働きもあります。刑を課すだけが刑法ではないのです。
このような刑法の在り方を学べるのが法学です。その知識は刑法のみならず、憲法・民法など幅広い分野での法律を扱っています。法律や条文を単に詰め込むのではなく、法律が生み出された原理を知り、組み合わせてより良い社会生活を成り立たせるための思考法を学ぶ学問です。刑法は、罰を与えるだけではなく、人を更生させる一面も持っている。そこに関心を持った人は、法律をさまざまな角度で学べる法学が向いているかもしれません。
この記事のテーマ
「法律・政治」を解説
国家は通常、多数の国民によって構成されています。それぞれ考え方が異なる国民をひとつの国家としてまとめようと考えれば、法律によって義務や権利を定め、政治(行政)によってそれらをきちんと運用していくことが必要になります。歴史上、多くの国家がこうしたことを目指し、あるものは成功してあるものは失敗してきました。どのようなときにあっても、道しるべとなるべき法曹家や政治家や評論家などの専門職は不可欠です。
この記事で取り上げた
「法学」
はこんな学問です
法学の研究領域は広い。憲法、民法、刑法に刑事・民事の両訴訟法と商法(大部分は会社法に移行)を合わせて六法と呼ぶが、これらは重要な法律のごく一部にすぎない。法学では、限りなく追加されていく法律を覚えるのではなく、それらの法律が生み出される原理と法律を活用して社会問題を解決するための思考法を学ぶ。また、法律は時代や社会制度とも密接に関係しており、社会問題についての最新情報も常にアップデートしておく必要がある。