誰も使っていないお金が1,000億円!? 銀行に眠るお金を社会のために役立てる方法って?

銀行などの金融機関には、誰も使わず、眠っているお金があるそうです。そのお金にまつわる取り組みをご紹介します。
この記事をまとめると
- 長い間、取引されず、持ち主も現れない銀行のお金を「休眠預金」という
- 休眠預金は1年で何百億と発生しており、それを社会のために使う動きが出ている
- 社会をよりよくし、困っている人を助けようとシステムを考えるのが「福祉学」
持ち主が現れず、ほったらかしになった「休眠預金」
両親からわたされるお小遣いや、お正月の楽しみであるお年玉など、お金をもらう機会はたくさんあります。人によっては、もらったお金をすぐに使ってしまう人もいれば、もらったお金を銀行などに貯金する人も少なくないでしょう。
そうして銀行に預けられたお金は「預金(よきん)」といわれ、大切に保管されます。そして銀行に預けた“お金の持ち主”は、いつか必要なタイミングでそのお金を引き出して使おうと思っているはずです。もちろん、預けたまま手放してしまうなんて考えていませんよね。
が、しかし、世の中には、長い間預けっぱなしになった預金がたくさんあるのです。もちろん、お金の持ち主があえて預けっぱなしにしているのなら良いのですが、そうではなく、もう誰も取引に現れない、持ち主が現れない状態の預金がたくさん発生しているとのこと。それらは「休眠預金」と呼ばれます。
この休眠預金ですが、なんと1年で1,000億円近く発生しているようです。あまりに多くのお金が休眠状態になるので、実は今、それらを社会のために役立てようという動きが出てきています。
休眠預金を、社会のために使うアイデアが登場
毎年1,000億円近く発生しているという休眠預金。まず、休眠預金とはどんなものなのか、もう少し詳しく説明しましょう。
休眠預金には、2つの条件があります。まずは、銀行などに預けたお金で、10年以上なんの取引もない状態であること。郵便局が管轄する「ゆうちょ銀行」なら5年以上です。ただし、この期間を過ぎたら全てが休眠預金になるわけではありません。もしかしたら、持ち主はワザと10年間ほったらかしにしているかもしれませんから。
そこで2つ目の条件です。その期間を過ぎて取引がなく、さらに持ち主との連絡がつかないこと。この2つの条件に当てはまった預金は、休眠預金となります。そしてこの休眠預金が、毎年1,000億円近くも発生するようなのです。持ち主が現れない預金がそんなにあるなんて、ちょっと信じられませんよね。
もちろん、長い間取引されていない預金について、銀行は持ち主に通知をします。「○○円のお金が銀行に預けられたままですが、どうしますか?」ということですね。そこで持ち主が現れれば問題ありませんが、連絡がつかなかったりどこに持ち主がいるのか分からなかったりするケースもあります。こうなると、本当の意味で“お金の持ち主がいない”状態。では、そのお金はどこに行くのか。実はこういったお金は、銀行の利益になっているのです。
もちろん、一度持ち主が現れなくても、あくまでお金はその人のもの。しばらくたって持ち主が現れれば、銀行はその人にお金を返します。ですが、持ち主がそのまま現れないお金は非常に多い様子。驚くべき話ですが、休眠預金のうち、持ち主が名乗り出ずに銀行の利益となるお金は、年間で600億円近くにのぼるようなのです。
毎年、「持ち主のいないお金」がこれだけ発生し、普通に銀行の利益になるのはちょっともったいない話。そこで最近は、こういった休眠預金をただ銀行で回収せず、社会のために使おうという動きが出ています。
今の日本では、お金を必要としているものがたくさんあります。例えば、収入が少なく生活に苦しむ人は増えており、そういった人をサポートするお金が必要です。あるいは、みなさんのような若者や子どもたちの支援・ボランティアを行うお金も大切。それ以外にも、病気の子どもを持つ家族や、お年寄りのための支援なども、お金が必要なところです。そういったところに対し、休眠預金を使おうという考えなのです。
休眠預金を世の中のために使う動きは、日本だけではありません。海外では、すでにそういったシステムを始めている国があります。その先駆けとなったのは、アイルランド。ここでは、2003年ごろから休眠預金を社会の必要なところに使う方針が固められています。
また、イギリスでも休眠預金の活用を行っています。銀行で生まれた休眠預金は別の機関に移され、それが世の中のために活動する社会事業で使われるのです。また、韓国でも、休眠預金を社会のために使うようなシステムがつくられています。
なお、休眠預金を社会のために使うといっても、本当の持ち主が現れればその分のお金はきちんと返還されます。ですから、持ち主と連絡がつかない間にお金がなくなってしまうわけではないのです。
困っている人を助けるための「福祉学」
私たちが暮らしているこの社会では、いろいろな助け合いが必要となります。それがなければ、平和で安全な暮らしは実現しません。休眠預金を世の中に使うのは、まさにそういった助け合いのためのシステムといえます。
このように、人々が助かる仕組みやよりよく暮らせる環境を考えるのが、福祉学という学問分野です。福祉学では、どうすれば人々の困る問題が解消できるか、そしてそのためにどんなシステムをつくるかを考えます。ただし、どれだけすぐれたシステムも、それを持続できるためのお金や人がいないと成り立ちません。ですから、続けていくための仕組みなども、福祉学における重要な項目となります。
今回紹介した休眠預金の活用も、いろいろなサポートを行えるようになるための仕組みづくりの部分。福祉学の一つといえます。社会をよりよくしたいと思う人や、困っている人を助けるシステムを考えたいという人は、福祉学を学ぶと役に立つはずです。
この記事のテーマ
「福祉・介護」を解説
大きな戦争の減少、食糧事情の向上、医療技術の発達などにより、おもに先進国では平均余命が伸びています。同時に、生きてはいるけれども健康ではないという、要介護状態の高齢者が増加し、医療費の伸びや介護保険費の膨張など、大きな問題が山積しています。福祉は、子どもから高齢者まで人間の発達段階に応じた社会支援の理想的なあり方を探求します。個人だけでは解決できない問題を、集団・組織として考える視点を学びます。
この記事で取り上げた
「福祉学」
はこんな学問です
心身にハンディを背負っていても安心して暮らせる社会にするために、公的な支援がどうあるべきかを研究する学問である。地域、年齢、心身の状態も一人ひとり異なる対象者に、どのようにすれば安定した福祉サービスを提供できるのかが重要なテーマ。そのための制度設計や現場の仕組みづくりなど、研究分野は多岐にわたる。福祉の対象者に限っても、児童福祉から高齢者福祉まで幅広い。
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