やっぱりペンが一番? 授業のノートをとるとき、キーボードを使わないのは理由があった!

ノートやメモを取るときは、キーボードを使うよりも手書きのほうがいいそうです。あるアメリカの研究についてご紹介します。
この記事をまとめると
- 授業で取るメモは、キーボードより手書きのほうがいいらしい
- 手書きだと、脳がより刺激されて、注意力が増すそう
- 教育のあり方を考え、子どもの未来を考えるのが「教育学」
授業のメモには、キーボードよりノートが優れている?
みなさんが学校で授業を受けているとき、必ずといっていいほどすることがあります。それはノートを取ったり教科書に書き込んだりなどの「メモ」ですね。先生が黒板に書いたこと、テストに出そうなこと、今後重要になりそうなこと……これらのことを、逐一メモしているのではないでしょうか。
では、そのような「メモ」を、みなさんはどうやって残していますか。おそらくほとんどの人は、ノートに「手書きで」メモを書き記しているかと思います。だからこそ、学校での授業において、ペンもノートも、欠かせないものとなっています。
しかしどうでしょう。メモを取るだけなら、今やノートより「便利なもの」がありますよね。例えば、スマートフォンやノートパソコン。慣れないときは微妙ですが、一度文字入力の操作に慣れてしまえば、メモを取る速さはノートにも勝るはずです。何より、字がきれいに打ち込まれるので、読み返して「え、これなんて書いてあるの?」なんてこともありません。漢字だって、予測変換してくれます。
それでも、授業のメモにキーボードで使うのはあまりいいといえないようです。むしろ、ノートにペンで書き込むからこそ、プラスの部分が出てくるとのこと。一体、どういうことなのでしょうか。
手書きのほうが、脳に刺激を与えて記憶がアップする?
学校の授業でメモを取る際、手書きでノートに書くべきか、キーボードを使ってパソコンに入力すべきか、何度も議論が行われてきました。これだけコンピューターの発達した現代です。キーボードでメモを取るほうが、時代に合っているともいえるのかもしれません。
しかし海外での研究により「メモはノートに取ったほうがいい」という結果が出ています。つまり、「手書き」でのメモを勧めているんですね。その理由は何なのか、いくつかの研究で導き出された答えを紹介しましょう。
まず、ある海外の研究では、子どもたちにペンとキーボードを使って、文章を書く能力の実験を行いました。その実験によると、ペンを使って手書きをする子のほうが、書いた量や速さ、言葉の選び方などが優れていたそうです。
このような結果が出た原因について、ある博士は、キーボードと手書きでの「作業の違い」を理由に挙げたようです。
例えばキーボードで入力する際、「あ」と打ち込むにも、「か」と打ち込むにも、行う作業はだいたい同じ。キーボードにある特定のキーを順番に押すだけです。それに対して、手書きはどうでしょうか。「あ」と書くときと、「か」と書くときでは、明らかに違う動作になりますよね。書き順やペンの動きがまったく異なるわけですから。
「あ」や「か」のように、小さい頃から慣れ親しんだ文字では分かりにくいかもしれません。しかし、今まで聞いたことのないような言葉、書いたことのない漢字だと、この違いは明確なはず。例えば、「フレミング左手の法則」とメモする際、キーボードで機械的に入れるのと、手書きでメモするのでは、書き残すのに必要な手間から、手書きのほうが強く記憶に残っているのです。
そもそも、何かを書くという行為は、手の動きや視覚の情報などにより、脳にたくさんの刺激を与えます。これは、アメリカの大学教授が述べています。そしてその刺激は、脳がそのタイミングで行っているいろいろな動きの中で、瞬間的に集中しているものに対して、より集中するように促すとのこと。そのため、書くことで脳に刺激が起きると、より目の前の物事に集中し、細かいところまで見逃さないよう、本人に脳が注意喚起するそうです。これが、しっかりと記憶できることにつながるのでしょうか。
なお、ペンとキーボードによる違いに注目した研究はまだまだあります。たとえば、「パソコンをメモのためだけに使っても、効率がよくない」という結果が出た研究もあるようなのです。
このような結果から、やはりメモをする際は、手書きのほうが脳に活発な活動を促し、きちんと記憶できるのではないか、という見方が生まれています。もちろん、これらは個人差があるでしょうし、もちろんキーボードにはキーボードのよさがあるかもしれません。しかし、ただ「簡単だから」という理由だけでキーボードのメモを好んでいる人は、再考の余地があるかもしれません。
日本の未来を担う教育、そのベストを突き詰める学問がある
「IT」と呼ばれるコンピューター技術の発達により、私たちの生活はいろいろと変わってきました。もちろん、私たちの教育の場である「学校」や「授業」も、さまざまな変化を遂げています。授業ではコンピューターが導入されたり、キーボードを使って文字を入力する機会が増えたり。教育の仕方は、昔と明らかに違うでしょう。
そんな変化の中で、ベストな教育のあり方を考えるのが教育学という分野です。どういうふうに授業を進めれば、子どもたちは興味を持って聞いてくれるのか。どういう教科書を使えば、子どもたちは理解しやすいのか。そういった方法論を考えていくのが、この学問ですね。メモをノートでとるべきか、キーボードでとるべきかというのも、これから先の教育学では重要なテーマになるでしょう。
教育の仕方によって、子どもたちの成長や能力の発達は変わります。教育学は日本の未来において、極めて重要な学問なのです。
この記事のテーマ
「教育・保育」を解説
保育所や幼稚園、小中高等学校や大学などで、子どもたちを健康に成長させ、学習能力を向上させるための教育方法を学び、研究します。教育の歴史や基本概念などの理論のほかに、教育や保育に携わる専門職(教員や保育士など)になるためには、指導技術や保育の実践的な手法などを、実習を通して学びます。このほか、生涯教育や教育に関わる地域活動など、教育と社会の結びつきや意義についても学びます。
この記事で取り上げた
「教育学」
はこんな学問です
教員養成のための学問ではなく、教育のあり方を追究する学問。具体的には、教育の歴史、目的、手法、制度などを対象としている。「教育学分野」は、教育行政や現場を調査・分析し、教育環境はどうあるべきかを研究。「教育心理学分野」は、発達心理学の視点から人間形成がどのようなものかを解明し、教育の本質を追究する。また、「メディア・コミュニケーション分野」では、教育現場での情報伝達はどのようにあるべきかを探るなど、多岐にわたる。