近い将来、人間が地下で生活!? 世界初の地下公園をつくる計画がある?

ニューヨークでは、地下に公園をつくる計画が進められているようです。その計画の概要と、地下に太陽光を引き込む技術を紹介します。
この記事をまとめると
- 地下に公園をつくる計画がニューヨークで進行中
- 大量に太陽光を集めて、光学レンズで地下に光を運ぶ仕組みがある
- 自然とテクノロジーが融合した素晴らしい取り組み
地面の下に住んでみたい……そんな妄想が現実に!?
人間は地球上のあらゆるところで生活をしていますが、便利な都会になればなるほど人口密度が高く、土地も値上がりするばかりです。人間が過密した地上に住むよりは、いっそのこと地面の下に住んでしまったらどうだろうか……と言ってしまうと一昔前のSFみたいですが、そんな妄想が21世紀中には現実のものになるかもしれません。今、ニューヨークでは地下公園をつくる「ロウライン」計画が進められています。一体どのようなものなのでしょうか?
「ロウライン」計画は、NYで1948年に閉鎖されて、それ以降は廃墟になっている地下鉄ターミナルを有効活用したもので、そこに最先端技術を使って本物の太陽光が差し込む「地下公園」をつくろうという計画です。最初にこのロウライン計画が立てられたのは2011年のことです。その後、プロジェクトを行うための資金集めが世界最大のクラウドファンディングのサイトである「キックスターター」で行われました。
もともとNYでは街の景観や生活をより豊かにする取り組みを積極的に行っており、廃線になった列車の高架橋を公園にした空中公園「ハイライン」の成功例もあり、ハイラインならぬロウラインは、NY市が行うクラウドファンディングの資金で立ち上げられた最初のプロジェクトとなりました。
集められた太陽光が光学レンズで地下へと運ばれる
ロウラインの中に太陽光を取り入れる仕組みは、地下公園の上に位置する路上に設置したパラボラ式の集光器を使います。集光器で効率よく集められた大量の太陽光は、天蓋に埋め込まれた光学レンズでやわらげられ、シャンデリアのような反射板を通して地下の公園へと運ばれます。
集光機で集められる太陽光は光ファイバーによってあちこちへ送られ、自然光の30倍の明るさの光線で地下公園を照らします。これによって夜のような真っ暗な状態から地上よりも明るい状態まで、公園全体に多種多様な状況をつくり出すことができるのです。今後は100以上の集光機を活用して、さらにたくさんの太陽光を集めていく予定なんだとか。
この取り組みが成功すれば、太陽光を取り入れて緑を育てることができる世界初の地下公園になるそうです。現在、週末限定で一般公開されており、さまざまなジャンルの専門家たちからも注目を集め、メディアにも取り上げられています。
自然とテクノロジーが融合した、素晴らしい社会を生み出すために
こうした光を効率よく取り扱う方法を学ぶ「光学」は、「物理学」の中の一分野です。光の性質や、光と物質との関わりにより生まれる作用など、光について学ぶのは物理学の中で行われているのです。
ロウライン計画のような、これまでは全く考えられなかった都市計画が、技術の発達によって現実のものになりつつあります。新しい工夫が行われ、未来の姿が発見されることは、私たちにとっても明るいニュースになりますね。光だけでなく電気や熱など、自然のエネルギーについて研究する物理学を学ぶことで、地球環境と上手に向き合うための新しいヒントが見つかるかもしれません。
この記事のテーマ
「数学・物理・化学」を解説
私たちの生活基盤である自然界で生じるさまざまな事象や物質、それらが織りなす理論が研究対象です。宇宙や生物がどのようにして誕生し、どのような構造になっているのかという、究極的な知的探究心は人類ならでは。森羅万象の構造や性質、法則と変化を探求する物理や化学、その習得に必要な数学というように、これらの学問は互いに深く関連しています。未知の領域への研究を進めながら、さまざまな原理解明をしていく分野です。
この記事で取り上げた
「物理学」
はこんな学問です
自然界の物質や現象を理論で裏付ける学問。理論を習得するだけでなく、たくさんの実験や演習が必要になる。「理論物理学」は数学や量子力学を用いてこれを解明する分野で、ほかに素粒子の性質などを研究する「素粒子物理学」、宇宙の構造などを調べる「宇宙物理学」など、世の中のあらゆる物質、現象が研究の対象になる。専門性の高い分野で、情報通信業界や製造業界などに進むケースが多いが、大学や研究機関で、研究職を選ぶ人もいる。