”テッペン”に近いアザラシから海と地球環境を探る!

子どもたちにも人気が高い、キュートなアザラシ。水族館ではアイドルのような存在ですが、野生の世界では海の食物連鎖ピラミッドの中でも、シャチなど大型哺乳類に次いで”テッペン”に近い大物生物。このアザラシを調査・研究することで、海の生態系や地球環境にどんな変化が起きているかを知ることができます。ここでは、アザラシの生態研究の魅力や、広大なオホーツク海を舞台にアザラシの研究を行う海洋水産学科についてご紹介します。
この記事をまとめると
- 海の生態系のバランスは、食物連鎖のピラミッドで保たれている
- アザラシを研究することで、生態系のバランスや地球環境まで見えてくる
- オホーツク海を舞台に、海や空からダイナミックに研究を行う海洋水産学科!
アザラシは海の食物連鎖ピラミッドの”No.2”
陸上でも水中でも、生物はほかの生物を「食べたり、食べられたりする関係」で生態系が成り立っていますが、この関係が「食物連鎖」です。例えば、植物プランクトンや海藻などがあり、それらを食べる動物プランクトン、その動物プランクトンを食べる魚、その魚を食べる大型の魚や水生哺乳類というのが海中の食物連鎖です。
北海道の知床半島は、オホーツク海で生まれた流氷が流れ着く場所として有名です。この流氷は、知床周辺の海で食物連鎖のピラミッドが形成される上での重要な役割を担っています。
流氷の中には「アイスアルジー」と呼ばれる大量の植物プランクトンが閉じ込められていて、春になって流氷が溶け出すと、海中に流れ出し大増殖します。すると動物プランクトンがアイスアルジーを食べて大量に発生し、動物プランクトンをエサとする魚たちも知床周辺の海に集まります。さらに、その魚をエサとしているアザラシやトドなどの海棲哺乳類や海鳥たちも集まり、最後にはシャチなど大型の海棲哺乳類がアザラシやトドを捕食します。このように、植物プランクトンを底辺に、シャチなどを頂点とした食物連鎖のピラミッドが形成されます。
つまり、流氷の上で優雅に暮らしているように見える可愛らしいアザラシは、シャチに次いで食物連鎖の実質”No.2”ということになります。このアザラシを研究することで、海の中の生態系や海の状態なども知ることができるのです。
海の変化を知る為にアザラシを観測! 時にはドローンだって使います!
一般的には、生物が生存するには自分の体重の10倍の重さのエサが必要と言われています。つまり50kgのアザラシが生きていくためには500kgの魚が、500kgの魚が生きていくためには5,000kgの動物プランクトンが、5,000kgの動物プランクトンが生きていくためには5万kgの植物プランクトンが必要になります。
そのためアザラシが何を食べて、どんな栄養状態なのかを知ることができれば、その水域においての彼らのエサとなる海洋資源が豊富かどうかを知ることができます。またアザラシの状態から、そのエリアの環境の変化を分析することも可能です。例えば栄養過多であれば、エサとなる魚が多く、プランクトンも大量発生している可能性が高いと判断できます。すなわち、例年よりも流氷が解けていると推測できるので、温暖化の影響が加速している可能性が導きだされる、というわけです。
アザラシの調査にはどのような個体がどれくらいいるかを把握するため、陸上からだけでなくヘリコプターや船からも観測を行っていきます。最近ではドローンを使用し観測を行っています。また、固体からサンプルを採取し、年齢や食べているもの、どこから来たのかなどを調査することも。このほか、アザラシに発信装置をつけ、その行動を追跡する調査なども少しずつ始まっています。
広大なオホーツク海を舞台に、海洋水産学科でダイナミックにアザラシに迫ろう!
アザラシの生態はまだ明らかになっていない部分も多く、やりがいのある研究分野です。東京農業大学生物産業学部海洋水産学科ではアザラシの生態に迫るために、船上からの観測だけでなく、GPS発信装置をアザラシに取り付けたり、ドローンを飛ばして空から観測したりするなど、ダイナミックで質の高い研究を行っています。本学科は北海道オホーツクの広大なフィールドだからこそできる豊かな大自然に囲まれた学びを体験することができます。
あまり知られていませんが、アザラシの個体数は知床周辺では増加していて、人間の漁場を荒らしたりといった被害も出ています。そのためこうしたアザラシの研究を通して生態系への理解を深め、「海の生き物と人間が共存できる世界」を守ることも、海洋水産学科の大きなテーマの一つとなっています。
【広告企画】提供 : 東京農業大学
この記事のテーマ
「農学・水産学・生物」を解説
私たちは、他の生物から栄養をもらって生活しています。人口が増え、自然環境が悪化する中、食料を安定して確保し、自然から栄養をもらい続け、世界の飢餓問題に対応するには、農業、林業、水産業などの生産技術の向上が欠かせません。動植物や微生物などさまざまな生物の可能性を発見する研究も重要です。
この記事で取り上げた
「農学」
はこんな学問です
品種の改良や病害虫対策をはじめとする栽培技術、事業として継続させるための農業経営、行政による支援のあり方を問う農業政策などを通じて、人と自然の共生のための方法を研究する学問である。研究分野は広く、食料としての生物を環境にマイナスの影響を与えることなく継続的に確保する方法を研究する「資源生物科学」、食品・農業・化学工業などの生物活用現場で起こる問題をバイオ技術によって解決する「応用生命科学」などがある。