THE ORAL CIGARETTESが大学受験に挑む高校生に贈るエール
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4月29日に5thアルバム『SUCK MY WORLD』をリリースした4人組ロックバンド、THE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo./Gt.)さんと、あきらかにあきら(Ba./Cho.)さん。今回は、お二人の高校時代を振り返っていただきました。進学校から難関大学に進んだお二人ですが、悩みながらも打ち込んだ受験勉強の経験は、ミュージシャンになった現在も役に立っているのだそうです。
この記事をまとめると
- 自分と真逆の人間とつきあうとおもしろい
- 受験を一緒に乗り越えた経験は、信頼できる仲間を作る時間でもあった
- 受験が人生のすべてではない。たとえ失敗しても未来は拓ける
数学は答えが1つ。絶対に裏切らない
―― 高校時代、お二人はどんな生徒でしたか?
山中:僕はめちゃめちゃ落ちこぼれでした(笑)。高校2年生の時の学内テストの成績が356人中354位だったんですよ。その時は音楽ばかりやっていたので、成績なんてどうでもいいと思っていましたね。「先生、でも、俺の後ろに2人おるやん」って言ったら、「その2人、不登校や。だから実質、最下位やで」と言われました(笑)。
あきら:僕は割と学校行事にも前向きにも参加している、結構いい生徒でした(笑)。拓也とはずっと友達で、一緒にバンドもやっていたんですけど、なんで拓也は僕とこんなに仲良くしてくれているんだろうとも思っていましたね。
山中:僕が持っていないものを、あきらは全部持っていたんですよ。最初は、まったく別の人種だと思っていたから、あまり受け付けていなかったんですけど(笑)、途中から、自分と真逆の人間とつきあうことっておもしろいし、一緒に音楽を作る上でプラスに働くと思うようになりました。それと単純に、いい奴だったんですよ。
―― あきらさんは、山中さんに対して、どんな印象がありましたか?
あきら:一匹狼感がありました。もちろん、同じコミュニティの奴らは大事にする熱い奴なんですけど、「慣れ合いは嫌」という感じがかっこ良かった。そんな拓也に認められているのもうれしかったです。僕も拓也のことは、自分にないものを持っていると思っていたし、そこに魅力を感じていました。
―― 高校時代の得意科目は何でしたか?
山中:得意科目は数学でした。小さい時からずっと数学教室に通っていたこともあって、数学は本当に好きだったんです。数学って嘘つかないじゃないですか。国語や英語は、「答えないやん」って思うこともありましたけど、数学は答えが1つ。絶対に裏切らないから好きでした。
あきら:僕は数学、物理、化学。やっぱり理系ですね。拓也が言う数字というよりも、公式とか、物事の仕組みとか。物理で言うと、物体が動いているとき、こっち目線では近づいているけど、あっち目線では離れていっているみたいなことがおもしろかったですね。
―― 定期試験や受験勉強の時に行っていた自分なりの勉強方法はありましたか?
あきら:よく問題を出し合っていたよな?
山中:あきらと僕、塾も一緒だったんですよ。その塾がちょっと変わっていて、24時間、自習室を開放していたんです。だから、高校3年の受験期には朝の6時に塾に行って、登校時間まで一緒に勉強して、学校の授業が終わったらまた、塾で夜11時、12時ぐらいまで一緒に勉強してっていうのを、あきらとずっとやっていましたね。
あきら:一緒にやっている感が楽しかったんですよ。それまでずっと音楽を2人でやっていたので、好きな音楽を聞きながら、同じ空間で勉強することでモチベーションを高めていたみたいなところもあります。
山中:めっちゃ懐かしいなぁ。なんだかエモくなってきた(笑)。
―― あきらさんは学内の成績の順位はどれくらいだったのですか?
あきら:拓也が言っていた高校2年生の段階では、良すぎず、悪すぎずって感じでした。でも、高3からはふたりとも本腰を入れて、勉強し始めましたね。進学校だから、学年全体のモチベーションも高くて、「みんな頑張っているから、自分たちも頑張らなきゃ」と勉強していました。
―― 山中さんも3年生の時は順位も上がっていたんですか?
山中:90位ぐらいまで上がりました。でも、それはあきらの影響も大きかったです。僕、勉強の要領がめっちゃ悪かったんです。たとえば世界史だったら、教科書の文章を全部、丸暗記しちゃうんです。そういう勉強のやり方をしていたので時間がかかっていたんですけど、あきらに物理を教えてもらったとき、「違うねん。公式を丸暗記するんじゃないねん」と言われました。最初は「こいつ、何を言っているの?」って思ったんですけど、「なぜ、この公式が出来上がったのかを理解することが大事」と言われたんです。そして、あきらが実際に板とボールを持ってきて、「この板を左に動かしたら、ボールはどっちに動いた?」みたいに仕組みを目に見えるように教えてくれて。「あ、なるほど。そういうふうに理解すれば、めっちゃ分かるかも」と勉強し始めてから成績がぐんと伸びました。
受験を一緒に乗り越えた経験は大きかった
―― 勉強が嫌になったことはありましたか?
あきら:めちゃめちゃありました。波に乗っている時はいいんですけど、成績が伸び悩むとか、単語がいつになっても覚えられないとか、そういうことって勉強するほど出てくるんですよね。そういう時、焦れば焦るほど嫌になりました。
山中:僕はずっと嫌でした(笑)。教科書を使ってする勉強が苦手だったんだと思います。授業で先生が世界史の解説をしてくれている時は、おもしろいなと思っていたんですけど、新しく得た知識を記憶にとどめておく作業と言うか、そのために何回も反復する作業がかなり嫌でした。
―― どんなふうに克服したのでしょうか?
あきら:得意なものを伸ばしたり、拓也を含め、友達と愚痴を言い合いながら、つらいのは自分だけじゃないんだって思ったり、「今日は何もせんと、寝よう」という日を作ったりしながら乗り越えていた気がします。
山中:僕は勉強する環境と言うか、場所を変えました。塾でずっと勉強していて集中力が切れちゃうと、その塾から自習室の机と椅子を家まで持って、家の倉庫にその机と椅子を置いて、そこで勉強したこともありましたし(笑)、ファストフード店でもやりました。
―― 塾の机と椅子が大事だったわけですか?(笑)
山中:自分の家の勉強机って余計なものがあるから気が散るんですよ。みかんが乗っていたら、食べたくなるじゃないですか(笑)。だから、「先生、借りるで」とちゃんと断って、勉強するのに必要最小限の机を借りたんです。
―― 勉強したことが、大人になってから役に立っていると感じるのはどんな時ですか?
山中:忍耐力がついたことかな。学んだことは、正直、結構忘れているんですけど、忍耐力と、理論的に自分の中で組み立てる能力は、たとえばバンドでプロモーションの計画を組む上で、「こうなったらこういうふうにできるんちゃうかな」とか、「もしかしたら、これとこれ、つなげられるかもしれへんな」とか、イメージをふくらませる作業にすごく役立っていると思います。
あきら:学んだことは直接には影響していないと僕も思います。でも、間接的には勉強する時間を共有した仲間と、こうやっていまだに仕事しているし、その経験が信頼感につながっている気もしますし。受験を一緒に乗り越えた経験は大きかった。信頼できる仲間を作る時間でもあったと思います。こんなふうにその頃のことを振り返ると、いろいろ思い出して、「一緒に頑張ったな。これからも頑張ろう」と前向きな気持ちにもなれるし。あの時、逃げ出していたら、自信をなくしていたと思います。そういう意味でも、1年間頑張って良かったですね。
自分の進む将来は、大学に入って決めてもいい
―― 大学と学部はどのような理由で決めましたか?
あきら:元々、憧れていた大学だったんです。工学部は当時、化学の研究者になれたらいいなと思って選びました。工業的に何かを生産するにあたって、二酸化炭素の排出量をいかに減らせるかということに興味があったんですけど、大学に入ったら全然、興味がなくなってしまって(笑)。今だから分かりますね。学部を決める時って結構悩むし、決められないと思うんですけど、そんなに重要視しなくてもいいんだって。
山中:そうですね。将来、どこに進むにしても、大学に入ってから考えてもいいんじゃないかな。僕自身、将来、何をしたいかその当時は決まっていなかったので、考える時間を延ばすという意味でも大学に行こうと考えていました。
―― 山中さんは経済学部でしたね?
山中:父が経済学部の出身だったんです。僕は父のことをめちゃめちゃリスペクトしているので、父と同じ道を辿れたらいいなと考えていましたね。
―― 高校時代の友人は、その後どんな道に進みましたか?
山中:高校時代の友人よりも中学時代の友人のほうが、アドバイスとしていいかもしれない。僕が通っていた中学校は、いわゆる不良と呼ばれる子たちが多かったんですが、そこで培った友情はいまだに続いているんです。しかも、美容室を4店舗抱えていますとか、飲食店3店舗抱えていますとか、稼いでいる子たちも少なくない。
もちろん、勉強もすごく大事ですけど、そこに人生のすべてが詰まっていて、そこで失敗したら終わりってことはまったくなくて。学生時代、自分がどう過ごしていたとか、どういうモチベーションで物事を判断してきたとか、そういうところで人間力をレベルアップさせておけば、たとえ受験勉強に失敗したとしても、未来は拓ける。むしろ僕は、人間力のほうが社会に出たら大事だと思っています。それを頭の片隅に置いて勉強するだけでも、少し気は楽になるんちゃうかな。
自分が高校生の頃、「この受験に失敗したら人生が終わる」と思いながらやっていて、本当に苦しかったんです。でも今、大人になって思うのは、そこで決まるわけじゃないということと、なぜ自分は勉強するのか、その理由を見つけて頑張ったほうがいいということですね。
あきら:高校の友達で言うと、外国語学科に進んで海外留学をした子は、大手の食品会社に入って海外で活躍しています。外国語学科で経験したことや、そこで得た価値観……たとえば、海外の人と話すのが楽しい、みたいなことが仕事になっているんでしょうね。
将来、何になりたいか決まっている人は、そこに向かってがむしゃらに勉強をしていけばいいと思うんですけど、さっき拓也も言っていたように、まだ自分の将来が分からない人は、とりあえず大学に入ることを目標にしてもいい。大学に入っていろいろなことをやる時間を作って、そこで将来が見えてくることもあるだろうし。見えなくて、いまだに悩んでいる子も同い年でいますけど、しっかり自分の将来を見つめる時間がそこにはあると思うので、めげそうになっても頑張ってもらいたいと思います。
「落ちこぼれだった」という山中さん、「いい生徒だった」というあきらさん。正反対のお二人が高校時代、どんなふうに友情と信頼関係を作り上げたのか、興味深いお話を聞くことができました。そんなお二人の関係、うらやましいですね。
【リリース情報】
5th album『SUCK MY WORLD』
2020年4月29日 発売
(初回盤A/初回盤B/通常盤)
https://theoralcigarettes.com/
【profile】THE ORAL CIGARETTES
2010年、奈良にて結成。メンバーは、山中拓也(Vo./Gt.)、鈴木重伸(Gt.)、あきらかにあきら(Ba./Cho.)、中西雅哉(Dr)の4人。人間が持つ闇の部分に目を背けずに音と言葉を巧みに操る唯一無二のロックバンド。2014年7月、シングル『起死回生STORY』でメジャーデビュー。メンバーのキャラクターが映えるパフォーマンスを武器にライブバンドとしても人気を集めている。