人は不安に陥った時、本当に正しい情報を見極められるのか?

災害や予期せぬ社会問題から、思わぬところで混乱が起こることがあります。このようなパニック現象はどうしておこるのでしょうか?心理学の視点からそのメカニズムを解析し、パニックを起こさない解決方法を考えます。
この記事をまとめると
- 社会的な不安が起こすパニック現象
- デマや誤情報が早く広がるメカニズム
- お互いを思い合って冷静に対応することが、大事
災害や社会的問題によって発生するデマとパニック現象
日本はエネルギーの大量消費国でありながら、その自給率はわずか8%と低く、エネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。そのため、災害や予期せぬ社会的問題の発生により、本来関係がないと思われるようなところで混乱が生じます。例えば、1973年に発生した、原油価格の急騰によるオイルショック。トイレットペーパーは、製造過程で原油を使用するため、原油が値上がりすればめぐりめぐってトイレットペーパーの供給に影響が出るのではないか、という不安が消費者の間に広がり、パニック的にトイレットペーパーの買い占めに発展しました。しかし、実際は消費者によるただの憶測で、紙の生産量自体は減っていない、いわゆるデマ、誤情報でした。これは、新型コロナウイルス騒動によって、人々のネガティブな憶測から、マスクやトイレットペーパー、ティッシュペーパーなどが店頭から姿を消したのと同じ現象です。
なぜ、デマや誤情報は正確な情報より広く早く拡散するのか?
では、なぜデマは広がっていくのでしょうか?こうした人間の心理について、新潟青陵大学大学院で社会心理学を研究している碓井真史教授は次のように説明しています。
「不安な時は、人は不安がって当然だと感じる情報に飛びつきます。不安だからこそちょっとの危険情報にも敏感になり、その情報を収集しようとする欲求が高まります。そして、情報を知った人は誰かに伝えたくなります。伝えることが親切だと思うからです」。
デマは、完全に信じた人だけに広がっていくわけではありません。「〜らしい」「よくわからないけど〜」という不確かな情報でも十分に広がっていきます。デマが広がっていく一方で、それは誤情報だという正しい情報も出てきます。しかし、不安に感じる情報の方が価値のある情報だと人々は感じてしまうため、正しい情報が出た後でもデマの方が、広く早く広がってしまう、というのが人間の心理に基づくデマ拡散のメカニズムです。
悪にも善にもなる人と人のつながり
こうしたデマや誤情報によるパニックを止めるためには、「自分だけが助かろう」という思いを捨てることです。例えば、先にあげたトイレットペーパーの買い占めなどは、自分さえよければ良いという典型的行為で、これが社会的パニックを引き起こします。そして、社会的パニックが起きれば、結局各家庭が困ることになるのです。「このままでは助からない→製品は早い者勝ちで手に入れる→自分だけが助かりたい」ではなく、「このままでは助からないなんてことはない→製品は十分にある→みんなで助け合いたい」と意識を変えること。その思いが、自分と自分の家族を守ります。一時的なデマに惑わされて情報迷子になってしまうと、他に用心しなければならないことに気が回らなくなってしまいます。不安な時ほどお互いを思い合って冷静に対応することがパニックを引き起こさない解決方法。このように、心理学は人間の心理を紐解くことで次が見えてくる学問なのです。
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この記事のテーマ
「人間・心理」を解説
人を研究対象として、人間の心理や身体、人間が作る社会集団、生活の特徴やあり方を研究します。人間科学は、人間という存在や関係性そのものを研究し、学習範囲は栄養学から文化人類学、スポーツ科学まで広範囲にわたります。心理学は人間の心や行動の特徴を分析・解明します。ストレス社会と呼ばれ、心の病に苦しむ人が増加している現代では、なかでも臨床心理学の重要性が注目されています。人間の存在意義の基礎となる学問です。
この記事で取り上げた
「心理学」
はこんな学問です
人間の心理や行動がどのような原理で動いているのかを研究する学問である。それにはさまざまなアプローチがある。たとえば、認知心理学では対象を知覚してから言語化するまでの作用を情報処理のプロセスとして理解する。発達心理学は人間が誕生してから死ぬまでの心の変化が何によるのかを探究する。臨床心理学は心のバランスを崩してしまった人の状態の改善をめざす。志望校に自分の本当に学びたい心理学があるかどうかを必ず確認することが大切だ。