生きる文化財ともいわれる「伝統野菜」を守るために大学ができること。

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生きる文化財ともいわれる「伝統野菜」を守るために大学ができること。

2020.03.01

提供:秋田県立大学

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生きる文化財ともいわれる「伝統野菜」を守るために大学ができること。

遺伝子を資源として活用すると、遺伝子は「遺伝資源」として価値のあるものになります。遺伝子を遺伝資源として有効活用することは、21世紀の人類が地球で生きつづけていくのにクリアしなければならない様々な課題を解決するだけでなく、私たちの生活に多様化や発展をもたらしてくれます。
植物の能力を科学的に理解し、バイオテクノロジーにより優れた機能を引出すことにより、植物生産に関する新しい産業の振興・発展に寄与できる人材を育成する秋田県立大学生物資源科学部生物生産科学科の取り組みを見てみましょう。

この記事をまとめると

  • 遺伝資源が持つ課題解決の糸口
  • 遺伝資源の消滅は文化の消滅につながる!?
  • 途絶えさせることなく次の世代へ

「遺伝資源」にはお宝が眠っている

リンゴの品種数は、世界で約15,000種以上と言われています。農業生物資源ジーンバンクという農業分野に関わる遺伝資源について探索収集から特性評価、保存、配布を行っているデータベースで「リンゴ」をキーワードに検索すると700種以上がヒットしてきます。これらの遺伝資源の素材(形質)を利活用して、リンゴの品種改良は行われています。素材の多様性があれば、そこから作りだされる品種のバリエーションも広がり、新しいリンゴ品種に繋がることになります。
リンゴには、自家不和合性というめしべが自分自身の花粉であることを認識し、自身の花粉による受精を拒絶する性質があります。受精しないと種子ができず、種子ができないとそこからの植物ホルモン作用がなくなり、果実が小指の先ぐらいの大きさにしか成長せず、6月頃にはすべて落果してしまいます。つまり、しっかりと受精しないと収穫期の秋には果実がないことになります。収穫するリンゴがないということはリンゴ生産者にとっては死活問題です。リンゴ農家は限られた春のリンゴの開花期には相性のいい花粉を用意して、人工受粉という作業を行っています。これはすべて手作業な上に、わずか10日間しかないリンゴの開花期にすべての木に行う必要があるのでとても大変な作業です。そこで秋田県立大学生物資源科学部の櫻井健二准教授は「自家結実性」に注目しました。「自家結実性」は自身の花粉が受粉しても受精して果実が実ったり、受粉をしなくても果実が成長したりするといった特長を持つので、これを育種に取り入れれば人工受粉をしなくても果実がしっかりと成長することができる「自家結実性」リンゴの開発に繋がります。現在、リンゴ遺伝資源を丁寧に探索する中で「自家結実性」の素材がいくつか見つけ出されてきています。遺伝資源の多様性と保存がきちんとなされていたからこそ、「自家結実性」という有用な素材の発見に繋がりました。

このままでは、すべてがなくなってしまうという

「伝統野菜」とは、各地で古くから人々に親しまれ、栽培・利用されてきた野菜の在来品種のことです。もしかすると、あまり耳慣れない単語かもしれませんが、「京野菜」と聞くとどうでしょうか。少しは聞いたことがあるかもしれません。
櫻井准教授は長らくリンゴの研究を行っていましたが、リンゴの遺伝資源に接する中でリンゴ以外の作物の遺伝資源の多様性や種の保存の重要性にも興味を持ち、秋田の伝統野菜にも触れる機会が増えました。当初はそれらを素材として野菜の品種改良などに利活用できるものはないかと考えていましたが、生産者と話すたびに素材だけではなく「限られた生産者」や「地域性」、「食文化との繋がり」などが見えてきました。
毎年タネを播く必要のないリンゴとは異なり、野菜の多くは毎年新しくタネや苗を植える必要があるので毎年タネを集めることが欠かせません。タネには寿命があり、温度や湿度などをしっかりと管理して保存してもその寿命の多くは4~5年、短いものは1年以下の野菜もあります。つまり、栽培する人がいなくなってしまうと約5年でその野菜は滅びてしまうのです。日本の農業における大きな問題点の一つとして農業従事者の高齢化という問題がありますが伝統野菜も例外ではなく、生産者の多くは高齢者で後継者もいない場合もあります。この限られた生産者が栽培をやめて、タネを集めることをやめてしまったらその野菜は途絶えてしまいます。一度途絶えてしまったものは二度と復活させることはできません。
秋田の伝統野菜の生産者に話を伺うと、売れるから栽培するわけではなく、それらを使った地域の食文化と深く関係していることがわかってきました。例えば、秋田県横手市の「新処(あらどころ)ナス」は夏に収穫した果実の中程だけを塩漬けし、晩秋にキクとともに「花ずし」として漬け直され、お盆やお正月の食卓に並ぶ家庭料理になります。「新処ナス」の肉質と張りがないと美味しい「花ずし」は作れません。この「新処ナス」を栽培する人がいなくなってしまうと、その「新処ナス」が途絶えてしまうだけではなく地域の食文化が無くなってしまうことになります。
このままではすべてがなくなってしまうという危機感と、これらの遺伝資源と食文化を未来にもつなげなくてはならないという使命感から、櫻井准教授は秋田の伝統野菜を対象とする研究を始めました。

ナスに刻まれた千年以上の歴史

日本に自生していた野菜はワサビ、セリ、ウドなど限られた作物で、大部分の野菜は国外から導入されました。導入された時期も様々で、ダイコン、ネギ、サトイモなどは平安時代以前、キャベツ、タマネギ、トマトなどは明治時代以降に日本で栽培が始まりました。その中でもナスの歴史は古く、奈良時代の正倉院の文書に「茄子」の記録が残っています。
秋田の伝統野菜には「関口ナス」、「仙北丸ナス」、「新処ナス」の在来ナス品種があり、いずれも丸ナス系統ですが日本の他の地域の在来ナス品種との遺伝的な関係性やそのルーツはわかっていません。そこで秋田県立大学大学院修士課程の中川睦司さんは櫻井准教授の指導のもと、秋田県在来ナス品種と全国各地の在来ナスとの遺伝的な関係性の解明とルーツについて研究を進めています。
中川さんは研究材料として国内の在来品種、海外の商業品種、野生種を含む60種類以上のナスを用いて、DNAに刻まれた痕跡(塩基配列の違い)を辿りながら類縁関係を解析しています。その結果、国内のナス品種と海外のナス品種は大きく異なること、国内のナス品種は大きく3種類に分類されること、国内の在来ナス品種は、福井県、新潟県、九州地方に由来することがわかってきました。さらに、秋田県の「関口ナス」と「新処ナス」は新潟県の品種に由来し、京都の「賀茂ナス」とも遺伝子が類似したところがあったことから、新潟県の品種が京都付近の品種と交雑して秋田県に伝播したのではないかと推測しています。また、秋田県の「仙北丸ナス」は福井県、新潟県、九州地方の品種に由来していることから、新潟県あるいは福井県の品種が互いの地域の品種と交雑したのち、関東地方で九州地方由来の遺伝子を持つ品種と交わり、秋田県に伝播したと推測しています。中川さんの研究は日本国内にとどまらず、秋田県立大学と協定を結んでいる台湾の大学との共同研究で台湾の在来ナス品種についての研究も始めました。

「生きた文化財」を継承する

伝統野菜を守るためには何よりも消費することが重要であり、それぞれの伝統野菜の特徴を明確にして認知度を向上できれば、消費増大に繋がるのではないかと櫻井准教授は言います。消費拡大は生産者のやる気にも繋がり、さらには新たな生産者が増えるかもしれません。同時に食文化の継承や発展に繋げていける可能性も広がります。
伝統野菜は「生きた文化財」として価値の高いものであると言われています。建造物や絵画などの有形文化財は、風化を防ぎ、修復をしながら継承され、演劇や工芸技術などの無形文化財は人から人への伝承によって継承されていきます。伝統野菜は採種、栽培、収穫を繰り返しによって形を変えることなく更新して、それに関わる技術や食文化なども人から人へ伝承されていく必要があります。伝統野菜を途絶えさせることなく、未来に継承していくという大きな使命感を持ち、櫻井准教授の所属する生物生産科学科の植物遺伝・育種研究室では、ナスだけでなく在来ニンニク品種や在来ネギ品種の研究が進められています。

【広告企画】提供 : 秋田県立大学

この記事のテーマ
農学・水産学・生物」を解説

私たちはほかの生物から栄養をもらって生活をしています。しかも、採集や狩猟だけではなく、食物を生産するという手段を得て、今日のように繁栄しました。人口増加や環境悪化などに対応し、将来的に安定した食料の確保を維持するためには、農業、林業、水産業などの生産技術の向上が必要です。さらに突き詰めて考えれば、動植物や微生物などの多様な生物に対する研究も重要です。自然との共生が大きなテーマになる学問です。

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