プロ野球選手でも、急にボールが投げられなくなるときがある?

たくさんの試合をこなしているスポーツ選手でも、いつも行っている動作が急にできなくなってしまうことがあります。その症状をご紹介します。
この記事をまとめると
- 大きなプレッシャーから運動障害になる、スポーツの「イップス」
- もともとは、パットが勝負どころで入らないなどゴルファー用語だった
- スポーツトレーナーを目指す人は、プレーする選手のメンタル面を考えてみるとよい
大事な大会や試合で力を発揮できなくなったときは、何かがおかしい?
運動部に入っているみなさんは、大事な大会や試合で、いつもは何も考えず自然にできているプレーが突然できなくなってしまうような経験をしたことはありませんか? もちろん、その1回だけならば「プレッシャーを感じて力を発揮できなかった」と思うのが普通だと思います。
ただ、そんな記憶が頭にこびりついて忘れられなくなり、同じようなプレーで2回、3回と続けてミスをしてしまったらどうでしょう? おそらく、そのプレーに大きな苦手意識を持ってしまいますよね。そうしたら、次に同じプレーをするときにはさらに大きなプレッシャーがかかってしまうのではないかと思います。
こういったメンタル面の不調や極度の緊張が原因で、いつもはできていたプレーがまったくできなくなってしまう、「イップス」という運動障害があります。イップスに陥った人は、集中しなければいけない場面であるにも関わらず、そのプレッシャーで体が震えて硬直を起こしてしまい、普段は簡単にできているようなプレーが突然できなくなってしまうのです。
勝負どころでパットが入らない、2塁にボールが投げられない……
イップスはもともと、この症状により現役引退することになってしまったプロゴルファー、トミー・アーマーの「うわっ」というような意味の言葉「yipe」に由来して名づけられたといわれています。このように本来は、ゴルファーが勝負どころでの簡単なパットがプレッシャーのあまりまったく入らなくなることなどを指すゴルフ用語でしたが、現在ではゴルフだけでなく、あらゆるスポーツにおいてイップスという言葉が用いられるようになってきました。
例えば野球では、キャッチャーが遠くへボールを投げることができなくなり、2塁への送球ができなくなったり、マウンドにいるピッチャーへの返球すらできなくなることもあります。サッカーではPKやフリーキックのときに、足の筋肉が硬直してしまい、うまくボールを蹴ることができなくなったり、試合中に足が前に出て行かなくなったりします。
また、小さい的に意識を集中しなくてはならないダーツでは、指先から腕にかけて筋肉が硬化してしまい、投げることができなくなってしまうなど、競技ごとや個人ごとにその症状はさまざまで、特に悪い場合は症状が数年にわたって続く場合もあります。
イップスを克服するためには、カウンセリングなど、メンタル面での治療が必要とされています。これは、送球やパット、フリーキックを失敗してしまった経験から、体が無意識にプレーへの拒否反応を起こしている状態をやわらげるため、少しずつ成功体験を積ませることで自信を持たせるのが狙いです。そこから徐々に回復へと向かうこともあるようです。
競技のことだけでなく、選手のメンタル面を知ることも大事
このようなスポーツ選手の肉体面、精神面でのケアを行う仕事が「スポーツトレーナー」です。スポーツトレーナーは、選手それぞれの性格や抱えている問題を見極め、専門的な知識からアドバイスをし、トレーニング方法を考える役割があります。怪我をした選手にはオフシーズンでの身体のメンテナンスに携わるなど、選手が力を最大限に発揮するためのとても重要な存在でもあります。
イップスのような精神的な症状の場合、特にスポーツトレーナーと選手の信頼関係も改善への大きな手掛かりになります。スポーツトレーナーを目指したい人は、競技についてだけでなく、選手がどのようなメンタルを持ってプレーに臨んでいるかを知るようにすると、きっと将来役に立つのではないでしょうか。
この記事のテーマ
「健康・スポーツ」を解説
スポーツ選手のトレーニングやコンディション管理に関わる仕事と、インストラクターなどの運動指導者として、心身の健康管理やスポーツの有用性を一般に広める仕事に分かれます。特に後者は、高齢化や生活習慣病が社会問題化する中、食生活や睡眠も含めて指導できるスペシャリストとして需要が高まっています。
この記事で取り上げた
「スポーツトレーナー」
はこんな仕事です
サッカーや野球などスポーツ選手のコンディションの調整を行う仕事。さらにトレーニングの指導だけではなく、傷害の予防や治療後のケア、栄養面・健康管理のサポート、応急処置など、選手が最高の状態で試合に臨めるようコンディションを整える、重大な役目を担っている。高校や実業団、スポーツクラブなど活躍の場は広く、アスレチックトレーナーや鍼灸(しんきゅう)をはじめとする医療系の資格を併せ持つことにより、選手のトータルサポートが可能となる。
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