【シゴトを知ろう】アスレチックトレーナー ~番外編~
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「【シゴトを知ろう】アスレチックトレーナー 編」では、水泳のクラブチーム「Style1」でコーチ兼アスレチックトレーナーとして指導にあたる草野伸行さんに、お仕事内容や魅力などを伺いました。番外編では、お仕事をされる上でのこだわりや、この仕事ならではの「あるある」などをお伺いしていきます。
この記事をまとめると
- 選手の些細な変化を見逃さないために、コミュニケーションが大切
- 新しい指導法や泳ぎ方のトレンドを動画などで研究
- 選手・コーチ・トレーナーが常に一体となって、課題を解決する
些細な変化を見逃さないために、丁寧なコミュニケーションが大切
―― 仕事中、こだわってやっていることはありますか?
練習に来た選手とは、必ず全員と会話するようにしています。30人くらいの大人数だと、一人一人とはたくさん話せないことや、時にはうっとうしそうな顔をされることもありますが、一人一人とコミュニケーションをとることは、指導やサポートをする上で大事なことです。こちらから積極的に話しかけます。そこで築かれた選手との信頼関係は、結果にもつながると思っています。
選手と会話をすると、趣味などの話だけでなく、悩みや不安を伝えてきてくれることがあります。特に思春期の選手は悩んでいても、親にも誰にも話せないことがあります。実は「学校の体育で転んで、足に痛みがある」「テスト前で寝不足なのに練習に来た」など、コンディションに影響しそうなことを一人で抱え込まれてしまうと、その日の練習に影響するだけでなく、無理な動きによってケガを引き起こしかねません。ケガを予防したり、今後の練習方針を考えたりする上でも、選手との会話は大切です。
―― この仕事に就いてから、何か勉強をしていることはありますか?
新しい指導法や泳ぎ方のトレンドにはアンテナを高くはって勉強しています。今は、YouTubeなどの動画にいろいろな映像がありますから、海外の大会の様子やトレーニング方法などを見て研究しています。また、ルールや道具なども少しずつ変わっているので、しっかりと確認するようにしています。
また、大きな舞台に立たせてもらうことや、実際に海外で経験してみるということも、刺激になりました。2018年に初めてジュニアパンパシフィックの日本代表コーチに選ばれ、フィジー共和国に行きました。日本語は通じませんし、文化も違います。選手とともに予定していた時間にプールに行ったら、アメリカの選手たちが使っていたというトラブルなどもありました。トラブルも含めて、国内ではなく、海外だからこそ経験できたということがたくさんありました。
ルールが変わると、トレーニング方法も変わる
―― この仕事ならではの「あるある」なことはありますか?
家族がなんとなく「足が痛い」などと話しているときも、「足」とはどの部分なのか、どんな痛みなのか、細かく特定したくなります。痛みのある個所を特定するには、指1本で指してもらうと、分かりやすいです。
―― 水泳の業界にいるからこそ知ったことはありますか?
水泳は男女一緒のチームで、さまざまな年代の選手が同時に練習できるというのは、他のスポーツとは異なる点かもしれません。「style1」では、小学校2年生から大学2年生まで一緒に練習することがあります。
それから、基本的に水泳の大会は、ボランティアの人たちで運営されているということです。日本代表選手が出るような大会も、競技役員をしてくださっているのはボランティアです。長年、水泳に深く関わっている方々ですが、普段は他の仕事に就いているという方も多いです。運営に携わってくださる方々には本当に感謝しています。
―― ⼀般の方に言うと驚かれる水泳業界の常識はありますか?
競技に関わるルールが、実は少しずつ変わっています。以前は、水着が注目されたこともありましたが、近年では、飛び込み台の角度が変わったり、陸上のクラウチングスタートのように足を置く羽が付いたりしています。水着の素材や、体を覆っていい部分、スタート台の角度など、全て競技を行うためのルールとして決まっています。競泳は、水温や水深まで細かく決められています。ルールが変わると、選手のトレーニング方法も変わってくるので、情報を速やかに正確に把握することが大切です。
また、水泳は個人競技ではありますが、実は、チームで乗り越えることも多くあります。選手同士でチームの意識もありますし、選手とコーチやトレーナーが常に一体となって、課題を解決していくというスポーツです。
選手とともに目標を達成していきたい
―― ⼀緒に働いている⼈は、どんな⼈が多いですか?
スポーツ好きな人が多くて、熱中して指導に当たってくれる人に恵まれています。若いコーチも、YouTubeでいろんな映像を探してきてくれます。コミュニケーションを大切にするという点では、話上手・聞き上手な人も多いですね。
―― 働くにあたって、気を付けていることはありますか?
体調管理の一環として、選手と一緒にトレーニングすることもあります。また、自転車に乗るようにしています。今日も、自宅のある埼玉から、練習会場の東京・飛田給にある武蔵野の森総合スポーツプラザまで自転車で移動しました。家でも、ローラー台を設置して、自転車をこいでいます。最近は、ネット環境に接続できるローラー台があり、自宅にいながらバーチャルでレースにも参加できるんですよ。200人くらいがエントリーしているレースに週1程度で私も参加しています。
―― 今後の目標を教えてください。
選手の目標が私の目標となります。コミュニケーションを密にして、選手とともに目標を達成していきたいと思っています。それから、「style1」が今後もしっかりとした組織として活動していくために、若い指導者も育てていきたいと考えています。
「選手の目標が私の目標になる」と語るコーチ兼アスレチックトレーナーの草野さん。頻繁に選手とコミュニケーションをとっているからこそ、選手も安心してトレーニングができ、一緒に目標を達成したいと思うのでしょう。これからの活躍にも注目したいところです。
【profile】株式会社Style1 クラブチーム「Style1」コーチ 草野伸行
この記事のテーマ
「健康・スポーツ」を解説
スポーツ選手のトレーニングやコンディション管理に関わる仕事と、インストラクターなどの運動指導者として心身の健康管理やスポーツの有用性を広く一般に伝える仕事に大別できます。特に一般向けは、高齢化の進展や生活習慣病の蔓延が社会問題化する中、食生活や睡眠も含めて指導できる者への需要が高まっています。授業は目指す職業により異なります。
この記事で取り上げた
「アスレチックトレーナー」
はこんな仕事です
アスレチックトレーナーは、スポーツ選手などがベストの状態で試合に臨めるように、身体づくりの面からトレーニング・ケアをする仕事。リハビリ指導や健康管理、けがの予防まで、スポーツドクターや指導者と連携し、選手をメディカルの視点から支える重要な役割を担う。プロの選手はもとより、学校などのスポーツ現場での事故やけがを防ぐためにも、知識と技術を持ったトレーナーが必要とされており、活躍のフィールドは多様。医者に代わって代替治療が行えるため、医療従事者の一員ともいえる。
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