【シゴトを知ろう】アスレチックトレーナー 編
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健康管理やケガの予防、いざというときの応急処置、そして復帰へのリハビリテーションなど、スポーツ選手のコンディションをトータルにサポートするアスレチックトレーナー。今回は、水泳のクラブチーム「Style1」でコーチ兼アスレチックトレーナーとして指導にあたる草野伸行さんにお仕事について伺いました。
この記事をまとめると
- アスレチックトレーナーは、選手のケガを予防、回復のサポートをする
- トレーニングをする上で、選手やスタッフとのコミュニケーションは重要
- 問題を解決するためには、考える力と行動する力が必要
ケガを予防しながら目標を持ってトレーニングする選手をサポート
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
アスレチックトレーナーの仕事は、選手がケガをしたときにケガを治しながらも、ケガをする前と同等のパフォーマンスができるように、さらには以前よりも良い状態にもっていけるようなトレーニングの指導をします。また、ケガを予防するためのストレッチを指導したり、体作りをサポートしたりします。
私は普段は、大人から子どもまで幅広い年齢層の人が所属している水泳のクラブチーム「Style1」や学校の部活で、コーチ兼アスレチックトレーナーをしています。それぞれの目標を持った競泳選手の指導をしながら、アスレチックトレーナーの視点を生かしてケガをしないメニュー作りや、ストレッチ・トレーニングの指導を行っています。
プロの競技や、日本代表などの大きな組織になると、監督やコーチ、そしてトレーナー・ドクター・総務スタッフなどがそれぞれ存在し、より専門性の高い指導やサポートを選手に行います。
<一日のスケジュール>
11:00 出勤。クラブチーム「style1」で大人向けの水泳の指導
13:00 昼食
13:30 クラブチーム「style1」で大人向けの陸上トレーニングの指導
16:30 中学校で部活の指導
18:00 クラブチーム「style1」で高校生のウエイトトレーニングの指導
20:00 クラブチーム「style1」で水泳の指導
21:30 帰宅
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
選手がベストタイムを出したり、大きな大会への出場権を獲得したりすることは、指導者として、大きな喜びを感じる瞬間です。選手がケガをせずに大会に出られるように万全を期して挑みます。万が一、ケガをした場合も、そこからいかに復活して目標達成できるか、選手に寄り添いながらサポートに当たるので、選手が目標を達成できることが、私自身のやりがいにつながっています。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
一生懸命練習していたのにも関わらず、選手が能力を発揮しきれなかったときは、本当につらいです。ケガをさせてしまったときも、どうしたら予防できたのか、反省が残ります。
大変なことでいうと、「Style1」は、自分たちの練習施設を持っていないという点です。選手の練習場所の確保も、裏方であるコーチやトレーナーたちが担う仕事です。近年は2020年に向けて施設の利用に制限がかかることが多く、特にプール施設を確保することが課題になっています。
専門的な指導ができるように資格を取得
Q4. どのようなきっかけ・経緯でその仕事に就きましたか?
中学・高校時代は水泳部に所属していたため、卒業する頃に水泳のインストラクターになりたいと思い、スイミングスクールに就職しました。水泳の指導していく中で、自分のやりたいことが明確になり、独立しました。そして、さらなる専門的な指導ができるように、水泳上級教師や競泳コーチの資格、アスレチックトレーナーの資格を取得しようと決意しました。
日本スポーツ協会のアスレチックトレーナーの資格は、国内の統轄競技団体に推薦してもらうか、専門学校を卒業すると受験資格がもらえるので、私は専門学校で勉強して受験資格を取得することにしました。
Q5. 専門学校では何を学びましたか?
専門学校では、フィジカルを鍛える「ストレングストレーナー」と、回復のサポートをする「アスレチックトレーナー」の両方を学び、資格も両方取得しました。
「アスレチックトレーナー」は体の構造を細かく深く学びます。筋肉の名前と場所、スポーツで起こると予想されるケガとそのケガが発生する状況、ケガをした場合にはリハビリ方法や回復時間などを全て覚えました。
Q6. 高校生のときの経験が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校時代の水泳部は、残念ながら専門的な知識を持った指導者がいなかったため、自分たちで自主的にメニューを作って活動していました。このおかげで、考える力・行動する力が自然と身に付き、今の仕事にもつながっています。自分がやりたいことを実現するにはどのようにしたらいいのかを考えられるようになりました。自分の責任のもと、やりたいことをやるというのは簡単なようですが、意外と難しいものです。仲間との意見が対立したときの折衝能力や責任を感じながら物事を進めるということは、社会に出てから大いに役に立っています。
また、学校では情報処理の勉強をしていたので、選手の泳ぎやタイムをデータで分析する際には、とても役立っています。自分でプログラミングをすることはありませんが、第2種情報処理技術者の資格も、社会人になってから取得しました。
人との関わりを大切にして、好きなことを仕事にしてほしい
Q7. どういう人がその仕事に向いていると思いますか?
スポーツが好きな人だと思います。また、コミュニケーションがとれる人。コミュニケーションがスムーズにとれてこそ、一つのチームができあがります。協調性や責任感も必要ですが、その根底に「スポーツが好き」という気持ちが共通しているほうが、円滑にまわる気がします。「好きなことを仕事にしよう」と、この世界に踏み込んだことを私は1ミリも後悔していません。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
高校生の自分ではどうしようもできないと思うような難しい問題にぶつかっている人も、それを克服していく気持ちと行動力、集中力は、いつかきっと役に立つ日がきます。社会に出てから、とても大切な能力になります。
そして、友達をたくさん作ることも大事です。人と交わると、意見の対立など困難も増えますが、そういうことも高校生のうちに経験しておいた方がいいと思います。相手の気持ちを考え、相手の立場を考慮しながら、やりたい方向へ進めていけるパワーは、どんな分野でも生かせます。それは人と関わりを持っていないと経験できないことです。そして、時には相手を許容できる器の大きさも必要です。考え方が違うからといって文句を言うだけの人にはならないでください。問題解決の能力に長けている人のもとに、みんな集まってきますよ。
選手が体を壊さないように、そして万が一、ケガをしても、回復させながら最大限のパフォーマンスを引き出せるようにフォローしていくアスレチックトレーナー。監督、コーチ、トレーナー、そして選手が一つのチームとなることではじめて、選手が最高のパフォーマンスを発揮できるのだと感じました。
【profile】株式会社Style1 クラブチーム「Style1」コーチ 草野伸行
この記事のテーマ
「健康・スポーツ」を解説
スポーツ選手のトレーニングやコンディション管理に関わる仕事と、インストラクターなどの運動指導者として、心身の健康管理やスポーツの有用性を一般に広める仕事に分かれます。特に後者は、高齢化や生活習慣病が社会問題化する中、食生活や睡眠も含めて指導できるスペシャリストとして需要が高まっています。
この記事で取り上げた
「アスレチックトレーナー」
はこんな仕事です
アスレチックトレーナーは、スポーツ選手などがベストの状態で試合に臨めるように、身体づくりの面からトレーニング・ケアをする仕事。リハビリ指導や健康管理、けがの予防まで、スポーツドクターや指導者と連携し、選手をメディカルの視点から支える重要な役割を担う。プロの選手はもとより、学校などのスポーツ現場での事故やけがを防ぐためにも、知識と技術を持ったトレーナーが必要とされており、活躍のフィールドは多様。医者に代わって代替治療が行えるため、医療従事者の一員ともいえる。
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