【シゴトを知ろう】自動車整備士 ~番外編~
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メルセデス・ベンツの正規ディーラー「ヤナセ」で自動車整備に携わり、アフターサービスの窓口対応をされている縄田大樹さん。世界的な自動車の修理を担う会社だけに、そこで働くプレッシャーは大きいものだと思います。番外編では、より深く切り込んだお仕事内容や、社員の技能を競う大会の概要などについて聞いてみました。
この記事をまとめると
- 修理する上で、輸入車も国産車も大きな差はない
- 世界を代表するメーカーでは、メカニック技術を競う大会が開催されている
- 自動車整備士は、才能よりも好きであり続けられる情熱が重要
世にあふれる情報にひと通り目を配ることもプロには必要
―― ヤナセでは有名輸入車を取り扱っていますが、整備する上で輸入車ならではの難しさはありますか?
技術的な面で特別な難しさはなく、修理する上では国産車と大きな差はないと思います。メルセデス・ベンツではマニュアル類は全て和訳されているので、英語が苦手な人でも安心です(笑)。
しかし輸入車なので、国内に在庫がない場合、本国ドイツまで部品の発注を行うケースもあるため、お客様への納車に時間がかかってしまうこともあります。
高級車ゆえ取り扱う上で気を付けなければならない点もあります。例えば、白のレザーシートが張られている車もあるので、汚れた作業着で乗ることのないよう、身だしなみにも気を付けています。
―― 高級車ゆえ要望が多いお客様もいらっしゃると思いますが、接客面で心がけている点を教えてください。
自動車への知識が深いお客様もいらっしゃるのですが、クルマ好きが集まるインターネットの情報サイトに書かれた内容をそのまま信じて、故障の原因を推測する方もいらっしゃいます。中には見当違いの間違ったカキコミもあるので、そういった一般ユーザーが集まるサイトにはどのようなことが書かれているのか、チェックするようにしています。
誤った情報に対して「それは違います」ときちんと説明することは、私たちへの信頼にもつながりますし、プロの整備士、そして正規ディーラーの役割だと考えています。
大人数が参加する大会で次々と好成績を収める
―― メルセデス・ベンツが主催する大会で好成績を残されているとお聞きしました。大会とはどのようなものなのでしょうか?
メルセデス・ベンツで働くサービススタッフが技術を競う「テックスマスターズ」という大会で、2年に一度開催されています。入社後に初めてエントリーした大会で、整備部門で第2位。その2年後には初優勝することができました。
参加人数は5つの部門に対し2,000名ほどで、筆記試験(予選)に通過した各部門の上位12名、計60名が本選に進むことができます。60名のうち、各部門の優勝者は本国ドイツで開催される世界大会への切符をつかむことになります。ライバルは多いのですが、参加を決めたからには絶対に優勝するぞという気持ちで臨みました。
優勝は2,000人の中から選ばれた5人。狭き門に見えるかもしれませんが、整備士のトップになることに、オリンピックのアスリートのような才能や血筋なんて必要ないと私は思います。どれだけクルマが好きでいられるか、そしてどこまで探究心を持って日々仕事に取り組めるか、これが優勝するために必要なことだと思います。
―― 職場の雰囲気や、上司、同僚など横のつながりはどのような感じですか?
千葉県内にはヤナセの拠点は7つあり、各店舗に私がお世話になった上司や同僚がいるのでチームワークは強いと思います。働くスタッフみんなでステップアップしている感じもします。
全国展開していることも当社の強みなのですが、以前当店のお客様から、遠方で車のトラブルに見舞われてお電話をいただいたことがあります。そこで、お客様の居場所から最も近いヤナセの店舗をご案内して、代わりに緊急対応してもらったこともありました。修理や点検の履歴は各店舗で確認することができるので、全国規模でお客様情報が共有できる環境にあります。
自分の力を発揮することができた、偶然のアクシデント
―― 休日の過ごし方について教えてください
ショールームは毎週月曜日が定休日で、月曜以外にプラス1日休みがあります。子どもが3人いるので、土日に休めるときは家族と過ごす時間を最優先にしています。
あと個人的にキャンプにハマっていて、空き缶を使ったアルコールストーブなどキャンプ用具を自作することもあります。仕事もそうですが、性格的に何かをいじることが好きなんでしょうね。
―― 最後に、お仕事を通じて最も心に残ったエピソードについて教えてください
2012年の大会で初優勝して、日本代表に選ばれたドイツでの世界大会でもヤナセの日本チームが3位になったことですね。
ただ普段、整備士の仕事を通じて最も心に残ったことは、仕事の帰り道で人助けをしたことです。交差点で何かのトラブルで停車している車を見かけたのですが、その車に「ヤナセ」のステッカーが貼ってありました。当社のお客様の車だとわかったので「なんとかしなければ」と、思い切って運転手に話しかけました。
話の内容から、「エンジン回りの熱のトラブルだ」と直感しました。そこで近くのコンビニでペットボトルの水を買ってきてエンジン回りを冷やすと、すぐにエンジンが復活しました。途中で止まってしまう心配もあったため、ご自宅まで追行し、お客様は無事に帰宅することができました。名前は名乗りませんでしたが、後日お礼の手紙をいただきました。腕試しという訳ではありませんが、自分がこれまで得たスキルで人助けができたことが素直にうれしかったですね。
仕事を通じて得た自信を強みに、技能を競う大会での優勝、そして世界の舞台へと活躍の幅を広げる縄田さん。インタビューの最後に「整備士が足りていない」という現状を教えてくれましたが、いまメーカーや修理工場などは若手の育成に力を入れ始めています。今回紹介したように、自身の力を試し、仕事へのモチベーションにつなげられる格好の機会が自動車整備士には用意されているのです。
【profile】株式会社ヤナセ
千葉営業本部 松戸支店(メルセデス・ベンツ松戸)
縄田 大樹
https://www.yanase.co.jp/
この記事のテーマ
「自動車・航空・船舶・鉄道・宇宙」を解説
陸・海・空の交通や物流に関わる仕事です。自動車や飛行機、船舶、鉄道車両などの整備・保守や設計・開発、製造ラインや安全の管理、乗客サービスなど、身につけるべき知識や技術は職業によってさまざま。宇宙分野に関しては、気象観測や通信を支える衛星に関わる仕事の技術などを学びます。
この記事で取り上げた
「自動車整備士」
はこんな仕事です
自動車の整備・点検、故障の修理・部品の交換・オーバーホール(分解掃除)など、車が安全に走行できるよう、専門的な知識と技術で整備をする仕事。多くの部品や電気系統など細かくチェックをしながら故障や異常を探し、部品を修理・交換する。整備不良は大きな事故につながりかねないため、事前に問題を発見して解消する重要な役割を担う、いわば車のお医者さんだ。活躍の場は自動車の整備工場や、メーカーの自動車販売会社などが多く、各専門分野を持った整備士たちが協力し合い、メンテナンスをする。
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