【シゴトを知ろう】歯科医師 ~番外編~
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患者さんの痛みを取り、笑顔にしてくれる歯科医師。日々、技術を高める努力を続けています。この「番外編」では、山梨県富士吉田市の「おざわ歯科」院長・小澤良一さんに伺ったお話の中から、歯科医師業界の意外な常識やキャリアパスなどについてご紹介します。
この記事をまとめると
- 学会など、さまざまなつながりから得た情報を治療に生かしている
- 国家資格取得後は、専門分野に特化したり、研究者になる人もいる
- 世界で一般化しつつある予防医療を、日本にも広めていきたい
横のつながりを生かして、多様な情報を取り入れる
―― 業界内にはどんな性格の方が多いですか?
いろいろな方がいますが、どちらかというと細かいことが好きだったり、マニアックな性格の先生が多いかもしれません。私がお世話になった先生は、パソコンを自作したり、ワインへの造詣が深かったり、さまざまなものごとに興味・関心を持っている方でした。
―― 業界内の横のつながりは多いですか?
学会や勉強会、歯科医師会など、外に出る場面がたくさんあるので、横のつながりは多いと思います。海外で最先端の歯科医療を目の当たりにしたりと、いろいろなつながりの中で、情報や知識を得ています。
一方で、新しいものだけが絶対ではありません。ベテラン歯科医の昔ながらのやり方からヒントをもらえることもあります。
専門分野に特化したり、研究者になる歯科医師も
―― 業界内ではどんなキャリアパスがありますか?
歯科大学を卒業して、国家試験に合格することで歯科医師になることができますが、さまざまな道があります。
一つは、臨床で患者さんの治療に取り組むことです。私の場合は、勤務医として多様な分野の治療に携わって研鑽を積み、開業しました。また、矯正歯科や小児歯科など、専門分野に特化した歯科医になる先生もいます。
もう一つは、大学病院などで研究者になる道です。再生医療などの先端医療を研究して教授になったり、新しい薬を研究開発している先生もいるんです。
―― 一般の方に言うと驚かれる業界の常識はありますか?
歯科医療の世界でも、デジタル技術の発展がめざましい点です。例えば被せ物。従来は患者さんの歯から石膏で型を取って歯科技工士が手作りしていますが、今では歯を撮影した画像をもとに、3Dプリンターのような機械で作る技術が出てきました。
この技術を使った「CAD/CAM冠」という被せ物があるのですが、一定の条件の下、健康保険も適用されるなど、徐々に普及してきています。
削ったり抜いたりしない、予防医療を広めたい
―― 業務をされてから、一番驚かれたことは何ですか?
外科の要素がとても大きいということです。虫歯の治療もそうですが、歯を削ったり抜いたりと、人体に手を加える外科的処置が多いのが歯科治療。毎日、手術をしているような感覚です。
でも本当は、削ったり抜いたりしたくはありません。痛くなる前に治療して、歯の汚れを適切に除去すれば維持ができます。そうした予防医療をもっと進めていきたいと思っています。
―― 海外では、予防医療が進んでいるそうですね。
特に北欧は進んでいますね。というのも、世界的には歯の治療に健康保険が適用されないほうが普通です。被せ物を入れるのに1本あたり10万円くらいかかる国もあります。歯を悪くしてしまうとすごくお金がかかる。だから定期的に歯をメンテナンスして、大事にしようという意識があるんです。
一方で、健康保険で入れ歯が作れることが、日本人の寿命を延ばしているという説もあります。歯を失っても、誰もが入れ歯で食事ができるからこそ、日本は長寿になったという面もあるんです。
とはいえ、やはり自分の歯でいつまでも食事をしたいですよね。そのためには、痛みが出る前に、予防や治療に取り組むことが必要です。
学会や勉強会など、さまざまな横のつながりを生かして、新しい情報や知識を取り入れている歯科医師。矯正歯科などの専門分野に特化したり、研究者として先端医療に携わる道もあるようです。今回取材した小澤さんが口にしていたのは、予防医療の必要性でした。削ったり抜いたりする前に治療やメンテナンスをすることで、お口の健康を守りたい。ひたむきな思いに、歯科医師としての信念を感じました。
【profile】おざわ歯科 院長 小澤良一
この記事のテーマ
「医療・歯科・看護・リハビリ」を解説
医師とともにチーム医療の一員として、高度な知識と技術をもって患者に医療技術を施すスペシャリストを育成します。医療の高度化に伴い、呼吸器、透析装置、放射線治療などの医療・検査機器の技師が現場で不可欠になってきました。専門的な技術や資格を要する職業のため、授業では基礎知識から医療現場での実践能力にいたるまで、段階的に学びます。
この記事で取り上げた
「歯科医師」
はこんな仕事です
歯科医師は、虫歯や歯周病の治療を行い、口内環境を健全な状態へ導く仕事。治療だけでなく、正しい歯の磨き方を指導したり、歯石を除去したり、健康な歯を維持するための病気予防も行っている。最近では「歯を美しく見せる」という観点から、歯並びの矯正治療やホワイトニングなどの需要も高い。歯科医師の大半は開業医だが、大学病院で歯科口腔(こうくう)外科や矯正歯科、小児歯科などの分野に分かれて働くケースもある。近年、歯科医師は過剰傾向にあるため、より高い技術力や信頼性が問われる職種でもある。