【シゴトを知ろう】テキスタイルデザイナー 編
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服飾やインテリアなど、さまざまな布地や織物のデザインをするテキスタイルデザイナー。糸の色や質感などを生かした緻密なデザインは、どのようにして創り出しているのでしょうか。今回は、山梨県西桂町にある「槙田商店」で、傘生地などのデザインを担当している瀧口里香さんにお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 糸一本一本の組み合わせを決め、繊細なデザインをつくりだしている
- 卒業制作したイラストがきっかけで、テキスタイルデザイナーになった
- 自分の「地元」にある仕事を知れば、進路の選択肢が広がる
細かな作業の積み重ねが、繊細な絵柄をつくる
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
主な業務は、傘生地や服地のデザインです。織物は、糸一本一本の色の違いや、組織(たて糸よこ糸の組み合わせ)によって柄を表現していきます。原案となるイラストやイメージをもとに、パソコン上でグラフィックをつくり、織物として表現できるようにすることが私たちの仕事です。商品のタグづくりや展示会用のPOPづくり、ホームページの更新作業なども並行して行っています。
<一日のスケジュール>
9:00 出勤 原案をもとにした配色作業
12:00 休憩・昼食
13:00 紋紙(柄を織りだすためのデータ)の作成
ホームページ用の写真撮影、更新作業など
17:00 退勤 ※子育て中のため、時短勤務
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
自分の仕事が形になることがやりがいだと思います。特に、デザインしたものが織り上がってきたとき、想像以上に美しいものが仕上がるとうれしいですよね。毎回違うデザインを表現していく難しさはありますが、そこが楽しいところだと思います。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
新しいものをつくりだしていくことの大変さは常にありますね。そして、とても細かい作業なので、うまく進まずに大きな声を上げたくなるときもあります(笑)。また、どれだけ緻密なデザインをつくっても、織ってみたら思っていたとおりの仕上がりにならないこともしばしば。何度も修正して、よりよい仕上がりを目指すのは大変ですね。
卒業制作が呼び寄せた、テキスタイルデザイナーへの道
Q4. どのようなきっかけ・経緯でその仕事に就きましたか?
美術系の短大を卒業後、都内で販売の仕事をしていたとき、デザイナーを募集していた当社からオファーをもらったんです。というのも、たまたま別の織物業者さんが私の実家のコーヒー豆店に立ち寄り、お店に飾ってあった私の絵を見たのがきっかけで、当社に情報を寄せてくれたそうなんです。
学生時代は専門的にテキスタイルデザインを学んでいたわけではありませんでしたが、絵を描いたり、ものをつくったりする仕事をしたいと考えていたので、帰郷して当社で働くことにしました。
Q5. 短期大学では何を学びましたか?
短大では、グラフィックデザインを専攻していました。「Illustrator(イラストレーター)」などのソフトを使ったデザインはもちろん、水彩画やアクリル画、シルクスクリーンなど、さまざまな画材を使った絵画を制作しました。ちなみに、先ほどの「実家の店に飾っていた絵」というのは、卒業制作で描いたイラストです。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校のときも絵を描くのが好きで、美術部に所属していました。なんとなく漠然と「美術に関わる仕事につければ」という思いはあったので、その延長線上に今があるのかもしれないですね。
ただ、当時は地場産業として織物が盛んなのは知っていましたが、布には興味がなかったんです。まさか自分がテキスタイルデザイナーになるとは思っていませんでした。
地元に目を向けることで、選択肢が広がることも
Q7. どういう人がその仕事に向いていると思いますか?
やはり「ものづくりが好き」という気持ちがある人だと思います。ちょっとした色の調整など、細かい作業がたくさんあるので、そういうことが苦にならない人も向いていますね。また、手間ひまや作り手の思い、自分のつくったものの魅力を発信して、うまく伝える力を持っている人なら、なお良いと思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
将来やりたいことが明確になっていなくても、不安に思わないでほしいです。でも、その中でいろいろな経験をして、何かしら行動を起こすことは大事。その中で、「これだ」と思える仕事が見つかることもあります。
あとは、皆さんの「地元」に目を向けてみてほしいです。私は高校生の時、「地元には何もない」と思っていましたが、実際には世界規模で勝負できる織物産業があり、今こうして仕事をしています。まずは自分の地域をよく知ることで、将来の選択肢が見えてくることもあるかもしれません。
一本一本の糸の色、そして織り方を考え、美しい絵柄を生み出すテキスタイルデザイナーの仕事は、緻密で骨の折れる作業です。「でも、嫌じゃないんですよね」と微笑む瀧口さん。別の仕事から、ひょんなことがきっかけで飛び込んだテキスタイルの世界ですが、大きなやりがいを持って働いているようです。瀧口さんのように、いつかそんな天職に出合いたいですね。
【profile】株式会社槙田商店 企画デザインチーム 瀧口里香
この記事のテーマ
「ファッション」を解説
ファッションの専門知識や業界のビジネスノウハウを学び、感性やセンス、基礎技術を磨きます。作品の発表会や学外での職業実習などを通して職業人としての実践力を身につけるほか、資格取得を目指すカリキュラムもあります。仕事としては、素材づくりや縫製など「つくる仕事」と、PRや販売促進などファッションビジネスに関わる仕事に分かれます。
この記事で取り上げた
「テキスタイルデザイナー」
はこんな仕事です
生地の柄や色などをデザインする仕事。衣服の生地はもちろん、ハンカチやネクタイ、カーテン、カーペットなど扱う対象はさまざま。仕事の内容は、生地開発のコンセプトを把握しながら、材質などを選び、織り方や染め方・色・柄などを決定。その後、製造工場に発注する。質感や発色の微妙な差異で仕上がりが変わるため、細かいチェックは欠かせない。何度も調整を重ねて完成したら生産にあたる。主な活躍の場は、生地・繊維メーカーや問屋、服飾メーカー、デザイン事務所などが挙げられる。
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