【シゴトを知ろう】楽器インストラクター ~番外編~
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最近はテレビドラマの影響もあり、バイオリン教室への注目が高まっているようです。今回はヤマハ大人の音楽レッスンのバイオリン科インストラクター(講師)としてヤマノミュージックサロン大手町教室などでお仕事をされている秋久知美先生に、業界ならではの「あるある」や、今後の目標などを教えていただきました。
この記事をまとめると
- 楽器インストラクターは、教える楽しさがどんどん広がる仕事
- 飛行機に乗るときは、バイオリンにも座席が必要!
- 迷ったときは「自分がしたいのはどっち?」と自分に問いかけて判断する
常に全体を見渡すことで生まれた思わぬ効果
―― 楽器インストラクター(講師)のお仕事の魅力は何ですか?
この10年で教える楽しさがどんどん増えています。同じアプローチをしても人によって伝わり方が違うのもおもしろいですし、生徒さんの「できた!」「弾けるようになった!」という瞬間に立ち会えるのもとても幸せです。インストラクター(講師)の仕事は毎日、そういう小さい幸せな瞬間がたくさんあります。
「バイオリンを一生の趣味にしたい」「好きな曲が弾けて良かったな、と思う人生にしたい」と言って50代になってから習い始めた女性の生徒さんは、もう10年も通って来てくださっているんです。それだけで感謝しかありません。
―― 仕事中にこだわっていることがあったら教えてください。
インストラクター(講師)の研修中、レッスンの様子を動画に撮ってヤマハの本部に送ったことがありました。「秋久先生は左端の人とばかり話す癖があるね」と指摘され、自分ではまったく気付いていなかったので驚きました。それからは、視線が偏らないように全体を見渡すようにしています。
生徒さんは椅子に座っていますが、私は立っていたり、少し高い位置で教えていたりすることが多いので、生徒さんと目が合うと、生徒さんの目線が上がって姿勢が良くなるという思わぬ効果がありました。姿勢が良くなると、見た目もすてきですし、音も良くなります。
それから、レッスン中に必ず1回は生徒さん全員の名前を呼んで、目を見て会話をするようになりました。コミュニケーションもとれて、レッスンもより楽しくなると思っています。
楽器に関する金銭感覚はマヒしている⁉
―― 業界ならではの「あるある」なことはありますか?
楽器に関しては、普段のお買い物をする金銭感覚とずれることがあります。普段はスーパーマーケットに行って、百円・十円の単位で「いつも買っているこの商品、今日は高いわ」などと感じるのに、バイオリンの話になったとたん、桁が変わってしまいます。
友人から「子どもにいくらくらいのバイオリンを買えばいい?」と聞かれたとき、「子どもはサイズが変わるから最初は安くてもいいけど、将来的に趣味のバイオリンなら70〜80万円くらいでいいかなあ」と答えたら、「70万円!? 高くて理解できない」と笑われました。
講師が持っているバイオリンは、トータルで約1,000万円。高い人だと3,000〜5,000万円すると言われています。また、弦の交換や弓の毛替、定期的なメンテナンスにも結構お金がかかっていて、楽器に関する金銭感覚はマヒしているようです(笑)。
―― この業界にいるからこそ知ったことはありますか?
バイオリンは飛行機の機内持ち込みOKのサイズなので、座席の上の棚に収納します。しかし、バイオリンより大きなサイズのヴィオラやチェロを持っていく場合は、隣の席も購入します。楽器を預けることもできるのですが、何かあっても免責になってしまいますから。大切にしている楽器なので、ほとんどの人は隣の席を買っています。
国内線の場合、どの航空会社でも、一律1万円で隣の席を買える「AB 券」という航空券があります。座席に楽器を置いてベルトで固定した上で、緊急脱出の邪魔にならないように人間が通路側に座る必要があります。
本当にやりたいことを判断して、ずっと現役として続けていきたい
―― 休日はどのように過ごしていますか?
普段は、生徒さんのレッスンをしているか、自分の練習をしているかで、ほとんどお休みがありません。中学生くらいから毎日練習しているので、それが当たり前になっているのかもしれません。先日は急にスケジュールが空いて、2泊4日で友人のいるドイツに行ってきました。休みは3日だったのですが、朝、日本に着けば夜のレッスンには間に合うからと、4日前に思い立ってドイツ行きを決めました。
ミュンヘンの街を歩いたり、列車に乗ってザルツブルグに出かけたり、おいしい白ソーセージを食べたり、2泊でも十分に楽しめました。ミュンヘンの地理も分かったので、来年も2泊4日でドイツに行こうとプランを練っています。
―― 今後の目標について教えてください。
生徒さんのレッスンをしながら、演奏家としてもステージを楽しみ、ずっと現役でいたいと思っています。周りの人を見ていても、元気だった方が病気になったり、急に亡くなったり、自分もいつ何があるかはわからないなと思うようになりました。また、何か迷ったときには、これまでもそうしてきたように、「自分がしたいのはどっち?」と自分に問いかけながら、本当にやりたいことを続けていきたいと思います。
子どものころからバイオリンの練習を毎日するのが当たり前だった秋久先生。休むのは苦手だし、つらいと感じたことはないそうです。また、本当にやりたいと思ったことだからこそ、生徒さんを教えるインストラクター(講師)のお仕事も、演奏家としてのご自身の練習も、笑顔で楽しく続けられているように思いました。
【profile】
ヤマハ大人の音楽レッスン バイオリン科インストラクター(講師) 秋久知美
取材協力:ヤマノミュージックサロン大手町
この記事のテーマ
「音楽・イベント」を解説
音楽や舞台を通じて、人に楽しい時間や感動を与える仕事です。作詞・作曲・編曲などの楽曲制作、レコーディングやライブでの音響機器の操作、演劇やダンスなどの演出、舞台装置の操作など、職種は多岐にわたります。この分野の仕事をめざすには、作品制作や企画立案のスキル、表現力を磨くことが必要です。
この記事で取り上げた
「楽器インストラクター」
はこんな仕事です
楽器の演奏法を人に教える仕事。需要が多いのはキーボード楽器やギター、ドラムだが、管楽器、和楽器などジャンルは多彩だ。教える相手は幼児から大人、未経験者から音楽経験者まで幅広い。生徒が未経験者の場合は楽器の扱い方、音の出し方、音楽理論などから始め、自ら手本を見せつつ演奏を教える。楽器メーカーや楽器店が開催する教室、市民講座などで講師を務めたり、近隣の子どもに教えたり、働き方はいろいろ。生徒がミュージシャンとして活躍するようになれば、インストラクターとしての評価につながる。
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