【シゴトを知ろう】ソムリエ ~番外編~
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「【シゴトを知ろう】ソムリエ 編」では、J.S.A.ソムリエ・鬼切祐一さんにお話を伺いました。イタリア料理店でのアルバイト経験をきっかけに、見事ソムリエ資格を得た鬼切さん。産地の山梨県にある酒販会社で、ホテル・レストランのワイン選びをサポートしています。この番外編では、ソムリエの仕事とワインに関する内容を深掘りしていきます。
この記事をまとめると
- 民間の資格試験に合格することでなれるソムリエ。20代も活躍している
- ワインづくりに重要なぶどうについて学ぶことは、ソムリエの務め
- ぶどう農家や醸造家の話を聞き、ワインづくりの背景を学び続けている
20代も活躍 民間の資格試験を経てソムリエに
―― 業界内にはどんな性格の方が多いですか?
凝り性というか、何事も「極める」タイプの人ですね。ワイン以外にも詳しい分野を持っていることが多いです。ウイスキーが好きなあるソムリエは、世界各地の蒸留所について調べて、それらの歴史的背景まで全て把握していたりするんですよ。
―― 業界内ではどんなキャリアパスがありますか?
ソムリエの資格は2種類あり、私が持っている日本ソムリエ協会認定の「J.S.A.ソムリエ」の他、全日本ソムリエ連盟が認める「ANSAソムリエ」があります。
J.S.A.ソムリエを目指すためには3年以上の実務経験が必要です。仕事をしながらスクールに通って、資格合格を目指す人が多いですね。レストランの他、お酒の卸売や輸入をしている会社に勤務している人、キャビンアテンダントがソムリエを目指すケースもあります。
若いソムリエも活躍しており、中には20代でソムリエコンクールに出場する人もいます。
ワインづくりに大切なのは、ぶどうのチカラ
―― 業務をされてから、一番驚かれたことは何ですか?
原料である「ぶどう」をよく知らなければいけないということです。醸造家と話をしていても、ぶどうづくりの話に行き着きます。育った風土やその年の気候など、ぶどうが生産された背景を理解することは、ソムリエの務め。お客さまにそこまで話をすることは少ないですが、最適なワインをおすすめするためにはとても大切なことです。
―― その他、一般の方に言うと驚かれる業界の常識はありますか?
極端なことを言えば、ぶどうを置いておけば、勝手に発酵してワインになります。実際には、押しつぶしたり、酵母を培養するなどの工程がありますが、醸造に必要なものはぶどうに全て入っています。だからこそ、ぶどうの出来がダイレクトに反映されるんです。ここに、ビールや日本酒など他のお酒との大きな違いがあります。
作り手の声を聞き、深い知識を養う
―― 業界内の情報はどのように得ていますか?
ここ山梨は、国産ぶどうだけで醸造したワインの生産量が日本一。ぶどう農家や醸造家の若手の人たちと集まって、月1回程度「ワイン会」を行っています。1人1本ワインを持ち寄って、ラベルを隠してテイスティングをしたりしています。銘柄を当てることはなかなか難しいですが、とても勉強になりますね。生産者ならではの視点も学べて楽しいです。
また、試飲会などにも積極的に参加し、さまざまな種類のワインをテイスティングしています。種類で言えば、年間でおよそ500種類くらいは飲んでいますよ。
―― ワインのどんなところに、おもしろさを感じていますか?
ソムリエを目指した動機は、「違いが語れたら格好いいな」という単純なものでした。でも、勉強し始めてからワインづくりの背景を知って、さらにワインが面白くなりました。ワインのわずかな味わいの違いには、作り手の努力が詰まっているんです。
山梨でいえば、2019年は雨が多い年でした。ぶどうの糖度が上がらず、病気にもなりやすく、ワインづくりが難しい年。ただ、醸造家はその中で工夫して、努力を重ねてその年ならではのワインをつくっています。それをそばで見られるのは、産地の近くに住んでいるからこそ。アドバンテージを生かして、さらに勉強を続けていきます。
ワインの表面的な味わいだけでなく、その背景にあるぶどうについての知識を深める鬼切さん。産地の近くに住んでいる利点を生かして、ぶどう農家や醸造家たちの声を実際に聞き、成長につなげています。「資格を取得して終わり」ではなく、常に自分を磨き続けるところに、ソムリエという仕事の本当の楽しさがあるのかもしれません。
【profile】株式会社二葉屋 J.S.A.ソムリエ 鬼切祐一
この記事のテーマ
「食・栄養・調理・製菓」を解説
料理や菓子などの調理技術や、栄養や衛生などに関する基礎知識を身につけます。職種に応じた実技を段階的に学ぶほか、栄養士などの職種を希望する場合は、資格取得のための学習も必須です。飲食サービスに関わる仕事を目指す場合は、メニュー開発や盛りつけ、店のコーディネートに関するアイデアやセンス、酒や食材に関する幅広い知識も求められます。
この記事で取り上げた
「ソムリエ」
はこんな仕事です
料理に合うワインを提案するのがソムリエの仕事。来店者にワインを提供するまでの一連の流れを担当し、ワインの買い付けから保管・管理などを行う。ワインは非常にデリケートなので、その日の温度や湿度に合わせた徹底的な管理が求められる。各ワインの品種や産地、生産年などを頭に入れ、最も飲み頃の状態で提供するのはソムリエにしかできないサービス。また、ワインを注ぐ際の立ち居振る舞いの美しさも重要なポイントとなる。