自分が攻撃の一つの起点になりたい・大迫敬介選手インタビュー
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サンフレッチェ広島ユースから2017年にトップチームへ昇格後、現在は正ゴールキーパーとして、Jリーグの熾烈な上位争いに貢献しています。U-22代表でも活躍している大迫選手に、高校時代や日本と世界の違いなど、さまざまなお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 育成に力を入れていることに魅力を感じ、広島ユースへ
- レベルの高さを痛感したプロ入り
- 世界と日本の違いは「決定力」
サッカーに打ち込める環境を求め、ユースへ
―― サッカーを始めた経緯を教えてください。
兄が友達に誘われてサッカーを始めて、それについていった感じです。サッカーを始めて半年くらい、小1の後半でGKになりました。チームでGKのポジションが空いていたのもそうでしたが、遊びでやっている時に、ボールを止めるのが楽しい感覚になったこともあって、GKになりました。シュートを止めることに喜びを感じていて、すごく楽しかったですね。
―― 高校になって広島ユースに入られましたが、どういう経緯でしたか?
いろいろなクラブに参加して、一番サッカーに集中できる環境だと思ったからです。グラウンド・寮・学校の関係もそうですし。すごく整っていた。いろいろな人に相談しても広島ユースの評判がすごく良かったし、キーパーのレベルも高くて、育成に力を入れていることに魅力を感じました。
もちろん高校サッカーにも憧れました。ああやって冬になって県を代表してテレビで応援してもらえる選手権の舞台は夢でしたね。でもフィールドプレーヤーだと優れた監督やコーチはいるかもしれないけど、高校ではGKコーチってなかなかいなくて。それを考えると、元プロが教えてくれたり、しっかりとした資格を持ったGKコーチがいるJクラブのほうが魅力でした。
―― どのような高校生活を送られていましたか?
バタバタでした。朝起きてご飯食べて、学校行って朝練して、帰りのホームルームが終わった瞬間にダッシュで寮に帰る。そこからすぐに着替えて、練習場に向かってトレーニングといった流れです。それで、そのまま20時くらいまで練習します。20時半にはご飯を食べないといけないというルールがあるから、時間を見ながら、走って帰る時間も計算してあと何分は自主練ができるなとか考えていました。寮に帰ってご飯を食べた後はトレーニングジムで筋トレしていました。そうするとすぐに22時過ぎになってしまって、それから風呂に入って22時半に寝る。そんな毎日でした。テレビとかは全然見なかったですし、遊んでいる暇も全然無かったですね。
でも高校生活はサッカーに打ち込もうと思っていたので、そんな環境に身を置くことも一つユースに決めた要因でした。
試合中のGKの立ち振る舞いを学んだ高校時代
―― 高校時代、勝つために力を入れていたことはありますか?
シュートストップのところは武器だったので、そこは磨きをかけました。どんな試合でもピンチはあるものなので、そこでチームを助けられるようにということは、常に考えていました。
短所ももちろんあって、PKや駆け引きがすごく苦手でした。それとビルドアップも課題だと思っていて、今でもまだまだのところは多いですが、少しずつ仲間と合わせられるようになってきた感覚はあります。ウィークポイントが少しでもストロングポイントに変えられるように、というのは考えていました。
―― 高校時代に他の選手と違うなと感じていた部分はありますか?
他の選手より、シュートストップのところもそうですけど、一瞬の決断力や一つひとつの力強さは自分の武器。他の選手に負けたくないと思っていました。でもその決断力はサッカーだけ。普段はすごく優柔不断です(笑)。
―― 高校の経験で、今一番生きていると感じることはありますか?
代表から外れたり、自分のミスで失点したり……いろいろな悔しい思いをしてきた中で、一つひとつのプレーへのこだわりは強くなったと思いますね。試合の中でGKとしてどういう立ち居振る舞いをしたほうがいいのかとか、どういう身振り手振りで味方を鼓舞するのかとか、そういうのはすごく自分としては学んできたつもりです。
ユース年代だと、普通のボリュームの声でもグラウンドで通りますが、プロの舞台だと、普段の声量では観客の声にかき消されてしまう。そういう時に声ではなくて身振り手振りで伝えないといけないというのは実感している。そこの工夫をすごくしています。
―― プロに入って、ここが違うなと思った部分はありますか?
スピード感もそうですが、シュートを打たれた時の相手との駆け引きはものすごく次元が違うなと感じました。
特に駆け引きの部分に関しては、もう絶望的でしたね。全然ついていけない。ユースでなら簡単に止められるようなボールが全然取れなかったりしました。あとGK練習の中で、みんなはキャッチングができるのに、僕だけ掴めずに弾いてしまったりとか……。そういったレベルの高さはすごく痛感しました。
攻撃の一つの起点になり、日本中の人と喜び合いたい
―― 2019年6月にはA代表に選出されました。気持ちの変化はありましたか?
自分がずっと目標にしてきたところだったので、そこに入れたことはうれしかったです。でも、やっぱりキリンチャレンジカップに出られなかったのは、すごく悔しかったですし、実際にコパ・アメリカでも決勝トーナメントに進めず、現実を突きつけられました。悔しい思いはすごくあります。
――コパ・アメリカを経験して、試合の雰囲気などはどう感じましたか?
南米ではサッカー文化が根付いているため、世間のサッカーに対する思いは日本よりも強い。国と国が本気で戦う大会で、バチバチな試合を経験できた。そこはすごく大きな財産でしたね。しかも本気の南米と戦う機会なんてそうはないですから。
GKとしても南米の選手はどんな体勢からでも枠に飛ばしてくる体幹があるので、日本では飛んでこないようなところからシュートが飛んできたりという経験もしました。
――これまでいろんな国際大会に出てきて、世界との差はどういったところに感じますか?
決定力だと思います。ここぞというところでの勝負強さやしたたかさは、やっぱり日本にはなかなかないものがあるなと。また海外のGKはボールを止める技術が高かったり、球際のところが強かったり。技術よりもキワの戦いで絶対に負けないという精神的な強さがあるのかなと思います。
――大迫選手が来年の世界大会に向けて、課題としているところはありますか?
森保監督のサッカーはGKを含めたビルドアップの部分を重要視されています。サンフレッチェでもそこはトライしている部分なので、そこでもっと自分がボールに関わりたいと思っています。もちろん後ろからつなぐこともそうですが、自分が攻撃の一つの起点になれたらと思っています。
――最後に来年の世界大会に対する意気込みをお願いします。
ずっと目標にしてやっているので、必ず出たい大会ですし、そこからが自分のサッカー分岐点だと思うので、必ず僕がゴールマウスに立って、日本中の人と喜び合いたいです!
【profile】サンフレッチェ広島 大迫敬介