【2019高校総体・優勝】水泳・高飛込 常翔学園高等学校
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インターハイ最終日、朝から風が強く吹く難しいコンディションの中で行われた男子高飛込で、常翔学園高等学校・井戸畑和馬くん(3年)が見事優勝を果たしました。過去2年のインターハイでは上級生に負けてしまっていた井戸畑くん。念願の優勝を掴むためにどんな努力をしたのか。そして、先生が大切にしてきた教えとは何なのか。井戸畑くんと、水泳部顧問であり担任も務める梶山修一先生にお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 練習ではしっかりと課題に向き合い修正したことで、優勝を勝ち取った
- 慣れない悪コンディションの中でも、落ち着いて自分の競技に集中した
- 普段の生活でも「機嫌良く」を心掛けることで、前向きに競技に挑める
上級生に阻まれてきた優勝をやっと勝ち取ることができた
【井戸畑和馬選手インタビュー】
―― 優勝した感想をお聞かせください。
とてもホッとしたし、うれしかったです。決勝では10本ずつ飛ぶのですが、最後の1本で少しミスをしてしまいました。他の選手も調子が良くて、それまでの9本では競っていたので、正直「負けたかもしれないな」と思いましたが、ギリギリ優勝を決めることができました。1学年上に強い選手が多く、いつも負けてばかりだったので、最後のインターハイで優勝できてよかったです。
―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?
大きなミスをしなかったことだと思います。これまでの大会では、入水の角度がぶれてしまうなど、減点対象となる失敗をしてしまっていました。そのようなミスを繰り返さないように、試合で見つけた課題はすぐに練習で修正するように心掛けました。その結果、今回の入水は真っすぐに近い角度でまとめることができたので、優勝できたのだと思います。
前の1本の反省より、次の1本への集中を意識
―― 一番苦しかった場面はありますか?
今年のインターハイは屋外プールでの開催でした。インターハイを想定して、合宿でも屋外プールでの練習を積んできましたが、想像以上の風に苦しめられていつも通りのパフォーマンスをするのに苦戦しました。
けれど、それは他の選手も同じ。自分が競技をするときに強い風が吹いていたら、一度気持ちを落ち着かせて少し待ち、風が止む瞬間に飛び込むようにするなど、悪いコンディションの中でもいいパフォーマンスが出せるように集中しました。
―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?
与えられたメニューをこなすだけでなく、「どこを意識してトレーニングをしたら効果的か」や「このトレーニングが何につながるのか」を意識しました。
特に鍛えたのが、ジャンプ力と瞬発力です。高飛び込みは弾力性のないコンクリートの台から飛び込む競技なので、ジャンプ力が必須です。それに、体を回転させるためには速くジャンプをする瞬発力も必要なので、今シーズンはその2つを強化しました。
また、コーチには「周りを気にせず、自分のやることにだけ意識を向けなさい」と言われていました。競技中も、1本飛び終わって次に飛ぶまでの時間は、「次の1本をどう飛ぶか」を考えることだけに集中しました。去年のインターハイから、「来年は絶対優勝したい」と思っていたので、強い選手の動画も参考にしながら、勝つためのイメージづくりにも励んできました。
―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。
1、2年生のときのインターハイでは、年上の選手にずっと負け続けてきたので、今年こそは絶対に優勝しないといけないと思って練習を続けてきました。だから、最後に勝ててうれしかったです。大学に進学したら、また年上の選手たちと戦わなければなりません。次こそは1年のときから年上の選手にも勝てるように、そしてユニバーシアード競技大会に出場できるよう、さらに頑張ります。
本番で実力を出し切れるよう、メンタルトレーニングに注力
【梶山修一先生インタビュー】
―― 優勝後、選手にどのような言葉をかけられましたか?
昨年までは競泳と飛込の会場が同じだったので、皆で応援し合うことができていたのですが、今年は競泳が熊本、飛込が沖縄と会場が離れてしまい、帯同ができませんでした。だから、優勝はメールで報告を受けました。
優勝を知った瞬間は、「よくやった!」という気持ちでいっぱいになりました。インターハイ後は、優勝を祝う横断幕も校舎に設置してもらっているのですが、自分の教え子が日本で一番になることはとても誇らしいです。
―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?
私は技術面での指導は行っていないのですが、水泳部顧問かつ彼の担任という立場として、「本番で実力を出し切れるメンタル」を指導してきました。いつも伝えているのは、「機嫌良く、次の一本に向かいなさい」ということです。
飛込競技は複数本の総合結果で勝ち負けが決まるので、たとえ失敗しても、引きずらずに目の前の1本に集中しなければなりません。しかも、飛込から着水まではたった2秒間。その一瞬で力を出すためには、日常生活から自分の気分をコントロールすることが大事だと思うので、そのことは繰り返し彼に伝えてきました。
―― 一言で表現するなら、どのような選手だと思われますか?
競技になると勝負師の目になりますが、普段は優しくてとても真面目な生徒です。合宿があったりして、ときどき学校を欠席しなければならないのですが、普段からたくさん読書をしていて、かつ海外へ遠征に行く機会も多いからか、国語や英語の成績も優秀です。
―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?
勝つうれしさや負ける悔しさを次の試合に生かすことも大切ですが、一番の願いはいつも機嫌良く競技をし続けてほしいということです。そうすれば、自ずと結果が付いてくると思います。
そして、周りの人を笑顔にできる人になれるよう、今後の競技人生を通じてさらに人間として成長してほしいです。教え子の活躍はずっと気になるもので、卒業後もよく連絡を取っています。大学進学後もさらなる飛躍を期待しています。
落ち着いて、微笑みを見せながら自分の言葉で真っ直ぐインタビューに答えてくれた井戸畑選手を見ていると、「日常生活から機嫌良く過ごすように」という梶山先生の教えが染み付いているように感じました。高校3年間で、選手としてだけでなく人としても大きく成長した井戸畑選手が、全国や世界の大舞台で活躍する未来がとても楽しみです。
【profile】常翔学園高等学校 水泳部
梶山修一先生
井戸畑和馬選手(3年)