【2019高校総体・優勝】相撲 飛龍高等学校
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インターハイで個人優勝、そして令和最初の高校生横綱となった、飛龍高校3年生の大桑元揮君。
けがを乗り越え、初めての全国優勝を果たした大桑君に、インターハイでの様子や相撲をとるうえで大切にしていることは何かを伺いました。
また、飛龍高校相撲部の監督として大桑君を指導し、支えてこられた栗原先生にも、大桑君の魅力を語っていただけました。
この記事をまとめると
- 強い選手に勝ったことが自信につながった
- 過去に負けたという悔しい思い出があるから、今がある
- 自分の相撲道を見つけてほしい
とにかく前に。自分らしい相撲をとれたことが優勝につながった
【大桑選手インタビュー】
―― 優勝した感想をお聞かせください。
高校相撲の中で一番大きな試合での優勝、そして令和最初の高校生横綱となれて、率直にうれしかったです。
今年の5月に膝をけがしてしまったため、最初は優勝を意識していませんでした。けがを悪化させず、それでも自分の相撲をとれるようにしていました。しかし、予選を突破したことで自信がついてきて、準々決勝からは優勝を意識するようになりました。
ただ、今考えると、優勝することや試合に勝つことを強く意識したというよりも、「とにかく前にでる」ということを大切にしていたように思います。
―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?
勝てた理由は二つです。一つは、体作り。相撲は体作りがとても大切ですが、とても難しいことでもあります。僕は毎日、母が作ってくれる食事を一日に4食食べます。そして、トレーニングをします。けがもあったので、申し合いなどの激しい稽古はせず、自分にできる基礎トレーニングを中心に行いました。
二つ目の理由は、中学生のときに味わった悔しさです。僕が中学三年生だったとき、中学最後の全国大会の個人戦で予選敗退をしてしまいました。その時、本当に悔しい気持ちでいっぱいでした。そんな悔しい思いを今回もしたくないと強く思ったことが、優勝できた理由だと思います。
膝のけがを乗り越えて、二つの土俵でひたすら練習
―― 一番苦しかったのはどの試合ですか?
個人の準々決勝の試合です。対戦相手はとても強い有名な選手で、僕が苦手とするスピード感ある相撲を取るタイプでした。
苦手な相手ではあったのですが、その時はとにかく前に出ようと思い、相撲をとりました。
前にでることだけを考えて戦った結果、勝つことができました。あの時、強い相手に勝てたことが自信になり、優勝につながったのだと思います。
―― 勝つために一番努力したことは何ですか?
けがの治療と練習の両立です。けがが治らなければ自分らしい相撲はとれないので、治療は最優先にしました。週一回のリハビリと、それ以外の時間は、体のハリとパフォーマンスを保つために学校の土俵にいました。また、それだけでは練習量が足りないと思い、地元で小さな時からお世話になっている道場にも通いました。
―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。
改めて振り返ると、やはりうれしさでいっぱいになります。高校生横綱としても、これから頑張っていきたいと思います。
そして、毎朝早くから起きて支えてくれた両親、指導してくださった先生に心から感謝しています。これは次の目標なのですが、10月に国体があります。その国体では団体で優勝して、先生を胴上げしたいです。
そして高校を卒業したら、プロの力士として活躍できるよう、これからも前に進んでいきたいと思っています。
やっていてよかったと思える相撲をこれからもとり続けてほしい
【監督・栗原大介先生インタビュー】
―― 優勝後、選手にどのような言葉をかけられましたか?
素直に「おめでとう!」と声を掛けました。大桑のことは彼が小さなころから知っています。
彼が中学3年生のとき、全国中体連の個人戦で予選落ちをしてしまったことがありました。彼は、その悔しさを胸に、この飛龍高校の門を叩きました。悔しさを払うには、同じ土俵の上しかありません。私は、彼に中学時代の悔しさを乗り越え、さらに上を目指してほしいと思っていました。
―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていますか?
とにかく落ちるかせること、心のサポートに力を入れました。練習の勝ち負けで一喜一憂させないことです。
彼は、うまくいかないことがあると、すぐ態度にでてしまいます。そんな時は、喝を入れてはいけません。迷っている心を解きほぐし、リラックスさせることが重要です。
相撲を続けていると、うまくいくこと、いかないことは必ずあります。でも、その中で自分の相撲道を見つけてほしいと思っています。
勝っておごらず、負けて腐らず。自分のやるべきことを、不動の心で考え進んで行く。
選手に自らの相撲道を歩んでもらうことを、指導するうえで一番大切にしています。
―― 一言で表現するなら、大桑君はどんな力士だと思いますか?
努力の力士です。
彼は高校での稽古の他に、地元の道場でも稽古をしています。長距離通学にもかかわらず、二つの道場で練習を続けるのは、とても大変なことです。それでも自分から志願して、二つの道場での練習に取り組んでいます。それほど彼は本当に相撲が大好きで、ひたすらに努力をする生徒です。
―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?
優勝したこと、高校生横綱になったことを、自らの自信にしてほしいと思っています。
もちろんプレッシャーもあるとは思いますが、この結果は、彼の努力によるもの。胸を張っていってほしいです。そして、彼が目指すプロの世界でも自信をもって挑み続けてもらいたいですし、「相撲をやっていてよかった」と思える相撲人生を歩んでほしいと思っています。
「前に進む」。インタビュー中、大桑君が一番口にした言葉でした。大桑君の心からの相撲愛、そしてまっすぐな心が、相撲にも表れているのだと思います。大桑君は小さなころは決して強い選手ではなかったと栗原先生はおっしゃっていました。しかし、相撲が好き、だから努力を続けるという姿勢が、優勝、そして高校生横綱という結果を生んだのではないでしょうか。大桑君の今後の活躍にも期待したいですね。
【profile】
飛龍高等学校 相撲部
顧問・監督 栗原 大介先生
大桑 元揮君(3年)