【シゴトを知ろう】 ショコラティエ 編
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限られた素材から、至高の味が生まれるチョコレート。その繊細な味わいを紡ぎ出しているのがショコラティエです。今回は、山梨県のパティスリー「ベル・エ・サンジュ」のオーナーパティシエで、ショコラティエでもある渡辺元嗣さんにお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 納得いくお菓子をつくるため、自分磨きを怠らない
- 高校卒業後、フランスで修行。レベルの高い現場での経験が財産に
- 「つくることが好き」という気持ちを持つ人が、業界に向いている
「きれいな仕事」目指し、自分を磨く
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
お店では主にケーキなどを提供しているので、それらの製造を行っています。その日販売するものを作ることはもちろん、翌日以降に販売する商品の仕込みも行います。普段はケーキの飾りとしてチョコレートを使うことが多いですが、バレンタインデーが近づくと、チョコを扱う機会が増えてきますね。
5:00 仕上げ(当日販売する商品のデコレーションなどを行い、開店の準備)
11:00 開店(お客さんの対応をしながら、スポンジづくりなど翌日以降の仕込みを行う)
14:00 休憩(夕方から仕込みを再開)
19:00 閉店(片付けを行い、帰宅)
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
思っていたとおりの“きれいな仕事”ができたときですね。思い通りのチョコレートに仕上がったとき、マカロンを焼いてきれいな形になったときなど、日々それを感じる瞬間があります。また、頻度は少ないんですが、新しい商品がつくれたときはうれしいですね。やりたいことが形になると、やっぱり楽しいです。
やりがいというか、モチベーションですが、以前は「もっと技術を覚えたい」「周囲の人より早くてきれいなものをつくりたい」という思いが自分を支えていました。今は、「こんな新しい商品をつくりたい」「お店をもっとこうしたい」という考えで、仕事をしていますね。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
今はお店を経営しているので、そこが難しいなと思います。誰にも強制されませんが、何事も自分でやらないと進みません。そのままでいれば後退していくだけなので、常に自分を磨いていく必要があります。
今ある商品をもうひと手間かけたり、数も増やしたいのですが、ほとんど一人で切り盛りしているので、現状だと難しい。そこがなかなか悩ましいところです。でも、こうして自分のお店を構えていることはとてもありがたいこと。大変と思えば大変ですが、結局は自分の気持ち次第かなと思っています。
憧れを胸に、本場・フランスへ
Q4. どのようなきっかけ・経緯でこの仕事に就きましたか?
テレビで見たパティシエに憧れて、高校生のとき「フランスに行ってパティシエになろう」と決意しました。高校卒業後すぐパリに渡って製菓学校に通い、紹介してもらったお店で修行を積みました。
20歳になったとき日本に戻り、東京・中目黒のパティスリーで働いた後、有楽町にある別のお店に移り、ショコラティエになりました。27歳のときに地元に戻り、29歳で独立して自分のお店を開きました。
Q5. 製菓学校では何を学びましたか?
パリで通った製菓学校では、パンの製法を含めたお菓子づくりの基礎を学びました。ほとんど座学はなく、実習で手を動かしながら覚えていきました。日本人講師もいて、通訳してくれたりしたので、言葉にはあまり困ることはありませんでしたね。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校生のとき抱いていたのは、純粋なこの仕事への憧れでした。今振り返れば、フランスではなく、まず日本で下積みを経験する道もあったのかなとは思います。
でも、あのとき何も知らずに渡仏したからこそ得られたものもあります。今でも記憶に残っているのは、フランスの伝統菓子「トロペジェンヌ」を初めて食べたときのこと。発酵させたパン生地にクリームをはさんだお菓子なのですが、これがすごくおいしくて驚きました。現地でとてもレベルが高いものを見られたのは、とても貴重な経験です。
「好き」「覚えたい」という気持ちが道をひらく
Q7. どういう人がこの仕事に向いていると思いますか?
「何かをつくるのが好き」という人です。正直、修行中は怒られることもたくさんあるので、「このお菓子を覚えたい」「こんな味を出せるようになりたい」という意欲も大事です。もしこの業界に興味があるなら、食べ歩きをしてみて「入りたい」と思える店の門を叩くのがいいと思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
高校生の段階で「やりたいことは絶対これ」って決めなくてもいいのかな、と思います。気になった職業があって、そのために専門学校に行ったり、近い職種をアルバイトで経験したりして、「向いていない」と思ったら進路を変えてもいい。最終的に自分が望んだことをできる日々が送れたら幸せなことじゃないかと思います。
高校時代、テレビを通してお菓子づくりへの憧れを抱いた渡辺さん。卒業後、迷うことなくフランスに渡り、業界に飛び込みました。帰国してさらに研鑽を積み、ショコラティエも経験。現在は自分のお店を持っています。
最後に渡辺さんがくれた言葉は、「自分が望んだことをできる日々を送る」。これは、自分の思いに忠実な進路を選んできたからこそたどり着いた、彼の信念なのかもしれません。
【profile】ベル・エ・サンジュ オーナーパティシエ 渡辺元嗣
この記事のテーマ
「食・栄養・調理・製菓」を解説
料理や菓子などの調理技術や、栄養や衛生などに関する基礎知識を身につけます。職種に応じた実技を段階的に学ぶほか、栄養士などの職種を希望する場合は、資格取得のための学習も必須です。飲食サービスに関わる仕事を目指す場合は、メニュー開発や盛りつけ、店のコーディネートに関するアイデアやセンス、酒や食材に関する幅広い知識も求められます。
この記事で取り上げた
「ショコラティエ」
はこんな仕事です
ショコラティエとは、チョコレート菓子を専門とする洋菓子職人のこと。日本ではパティシエがチョコレート菓子も担当していることが多いが、本場のフランスやベルギーでは専門職として確立されており、日本にも徐々にその流れが及びつつある。専門職が必要となる大きな理由として、チョコレートは温度や湿度の繊細な管理が必要であることが挙げられる。ショコラティエがつくる高級品は、複雑に組み合わされた味と香りが美しい造形にまとめられ、一粒一粒が芸術品のようでもある。
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