続けなければ見えない世界がある 陸上 短距離・桐生祥秀さんインタビュー
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高校2年生でユース世界記録を叩き出し、3年生で参加した織田記念陸上大会では日本国内の競技会で日本人最高となる10秒01を記録、そしてインターハイで優勝……。そんな華々しい経歴をもつ桐生選手(日本生命所属)ですが、当時の自分を振り返って「普通の高校生だった」と語ります。メダリストにまで登りつめた桐生選手の高校生活に迫りました。
この記事をまとめると
- 高校時代のインターハイは自分と深く向き合う時間だった
- 一人ひとりが淡々と頑張る姿が、チーム全体の士気を高める
- 気が乗らなくても、とにかくサボらず練習することが大切
仲間と肩を並べて練習し、インターハイでは念願の総合優勝を勝ちとる
―― 高校生の頃は、どのような生徒でしたか?
部活漬けの生活を送っていましたね。朝5時半の電車に乗って登校し、朝練をして、授業を受け、放課後はまた練習。帰宅するのは夜でした。特に1年生のときは、グラウンドの整備などをしなければならなかったので、さらに朝が早くて。寒い冬はつらかったですね。
みんなと一緒に練習して、本当に普通の高校生でしたよ。練習中には、練習後に何をするか、オフの日にどこへ遊びに行くかという話で友達と盛り上がったりもしていました。
―― 高校時代の部活で、思い出に残っていることはありますか?
インターハイで総合優勝したいという目標があって、入学する高校も決めたので、高校3年生のときのインターハイはどの試合より思い入れが強かったですね。個人・リレーともに走りきって総合優勝したときは、本当にうれしかったです。タイムよりもとにかく勝敗、仲間と優勝することにこだわっていました。
高校の大会はシードなどが無いので、どんなにタイムが速くても予選で勝ちを積み重ねていく必要があります。ケガやフライングに気をつけながら目の前の勝負を着実に戦わなければならなかったので、自分と深く向き合えたと思います。正直なところ、高校時代は同級生に負ける気はしなかったので、ライバルよりも自分との戦いを意識していましたね。
やりたくないときも、やる。前に進みたいならとにかく継続を
―― 高校時代、勝つために努力していたことはありますか?
遅刻をせず、サボらず、しっかり練習に参加すること。つまり“やりたくないときもやること”です。誰でもそうだと思うんですが、365日やる気に満ちているわけではありませんよね。自分も嫌々練習する日はたくさんありました。それでも、とにかくグラウンドに行くんです。
そのモチベーションは、やっぱり試合に勝ちたいという気持ちと仲間の存在だったと思います。気が乗らない日もあるけれど、全員で乗り切る。それがチームのいい雰囲気を保つために必要ですから。かといって、何か言葉をかけあったわけではなくて。一人ひとりが淡々と練習する、その姿がお互いの刺激になっていたと思います。
―― 食生活などで気をつけていることはありますか?
最近朝ごはんをしっかり食べるようになりました。以前はパンだけとか、コーヒーだけで済ませる日もあったんです。でも朝ごはんをしっかり食べるようになってから、午前練習の調子がいいんです。最近は朝ごはんの大切さを思い知らされていますね。
あと甘いものが好きなんですが、食べ過ぎると体質的にすぐ太ってしまうので、食べすぎないように気をつけています。
継続することで、たくさんのことが得られる
―― 来年に向けた、意気込みをお願いします。
最近日本選手権ではあまり活躍できていません。日本代表としてはリレーでしか入れていないので、いろいろな選手がいる中でしっかり代表に入って、ラウンドを重ねていきたいなと思いますね。
自分が生きているうちにこのような経験ができることもないと思うので、まずは出場できるように頑張りたいです。
―― 高校生に向けてメッセージをお願いします。
「サボるなよ!」の一言に尽きますね(笑)。先ほどもお話ししましたが、とにかく継続することが大切だと思います。「練習行くの、ダルいな」と思っていても、いざ練習が始まれば気が乗ってくるかもしれないし、やりたいこと、楽しいことが出てくるはず。練習をサボってしまうのは簡単ですが、なんとか自分を奮い立たせて、続けてみてください。そうすれば、きっとたくさんのことを得られると思いますよ。
“継続は力なり”という言葉がありますが、どんなときも続けることが、自分や周囲の人にとって何よりの力になると語る桐生選手。ご自身も、今は環境や戦い方こそ変わったものの、高校時代と同じくたゆまぬ努力を続けています。陸上界のトップランナーである桐生選手が大切にしている“継続”、私たちも見習いたいですね。
【profile】日本生命所属 桐生祥秀