高校時代に努力したサッカーと語学が現在につながった ラルフ鈴木さん・インタビュー
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世界的なスポーツの大会がある度に、現場の熱い空気を伝えてくれたアナウンサーのラルフ鈴木さん。スタジアムでは現場を走り回って熱心に取材されています。
ところがラルフさんはテレビ局の就職試験を受けるまでアナウンサーになろうとは思っていなかったそうです。ラルフさんはどんな高校時代を過ごし、その経験がどうつながったのか、お話を伺いました。
この記事をまとめると
- アナウンサーは原稿を読むだけの仕事でなくその他の役割もある
- 高校時代に打ち込んだサッカーと語学がスポーツ取材への近道に
- 高校の3年間は二度と戻らないから毎日を特別な日だと思ってほしい
中田英寿さんのインタビューで学んだ大切なこと
―― お仕事の内容について教えてください。
アナウンサーはテレビを通じて視聴者の皆さんに情報を伝える仕事です。スポーツ実況でも情報番組でも伝えるということがメインになります。他にはナレーションを担当することもありますし、イベントの司会もやります。
さらに企画で歌ったり踊ったりすることもあるなど、アナウンサーという仕事の定義は時代とともに変わってきました。私自身、アナウンサーになってからの21年間で、ニュース番組・高校生向けのクイズ番組の総合司会・サッカーの実況・番組のナレーションなどを担当、バラエティ番組では格闘技大会に出場したこともありました。
このように近年、アナウンサーの仕事は多岐にわたり、その他の役割でも自分の能力を発揮しなければなりません。自分で取材して記事を書き、伝えるだけでなく、通訳や出演交渉などもします。視聴者の方に有益な情報を届けるために、アナウンサーはあらゆる形でサポートします。
―― 仕事の上で大切にしていることは何ですか?
私が大切にしているのは、伝えている内容が視聴者の皆さんのニーズに合致しているかどうかと考えることです。自分たちではいいと思っても、見てもらえなかったら意味は薄れます。伝える側の独りよがりにならないよう、どんな情報が求められているのかを最優先に考え、間違った方向に進まないようにしています。
―― 記憶に残っているインタビューはありますか?
ハッとさせられたのは元サッカー日本代表・中田英寿さんですね。非常にストイックな方で、現役時代はあまり自分のことを語る人物ではありませんでした。世界レベルのトップで戦っている人でしたから、メディアにもそのレベルの取材姿勢を求めていらっしゃって、質問する側にも自分の考えが求められました。
中田さんとのインタビューをきっかけに、話を聞く相手がどういう人なのか時間の許す限り調べ、質問に対して自分なりの答えを用意することを心がけるようになりました。
―― 仕事で大変だと思ったりつらいと感じたりすることはありますか?
アナウンサーの仕事は時間が非常に不規則です。月曜から金曜まで毎晩23時から0時までの番組に出ていたときは、帰宅するのが午前3~4時。子どもにとって私は「夜、家にいない人」でした。
さらに国内外問わずいろいろな出張がありますから体力的にも大変です。0時までのニュース番組が終わった後、朝6時の飛行機で沖縄に飛び、炎天下でクイズ番組の司会を務め、20時に東京に戻ってまた23時からのニュース番組に出る。そして翌朝は福岡に出張する、という時期もありました。
このように、アナウンサーにとって体調管理は人一倍、重要です。「番組に穴を空けない(欠席しない)」ことは、評価の対象になります。
―― 仕事の楽しさややりがいは何ですか?
スポーツが好きだった私にとって、世界的なスポーツイベントの最前線で取材できたことは幸せでした。現地から興奮を伝えられるというのはやりがいの1つです。また、いろいろな場所に行ける、経験ができるというのもこの仕事の楽しさです。
自分を飾らずに面接を受けたらテレビ局に採用された
―― どのような経緯で今の職業に就くことになりましたか?
自分の中では商社や外資系の企業に勤めるものだと思っていました。私はハーフで、小学校から高校までを海外で過ごして語学ができましたから。
マスコミ業界の採用試験は他業界よりも早く始まったので、どういうものか知りたくて受験しました。面接のときから正直に「マスコミに詳しくないのでどういう業界か知るために試験を受けに来ました」「合格したら誰かを真似るのではなく、自分のやり方でやってみたいです」などと答えていましたね。
自分の言葉で思っていることを言って、それで受からなければ仕方がないと、自分を飾らなかったのがよかったのではないかと思います。ただ、今でも日本テレビはよく私を採用したなぁと思っています。そのため、アナウンサーになろうと本気で思ったのはテレビ局に受かってからです。
―― 高校生のときに努力して現在につながっていることは何でしょうか。
高校生のときは、サッカーに打ち込んでいました。また学校の成績が悪いと試合に出してもらえないという決まりでしたので、勉強も頑張りました。また、海外に住んでいましたから、自分の将来を考えて英語、ドイツ語を学校以外の場でも学ぶ努力をしました。そのスポーツをやっていたこと、語学もできたことがその後のスポーツ取材への近道になりました。
いろいろなことに興味を持って引き出しを多く持つのが大切
―― どういう人がこの仕事に向いていると思いますか?
「引き出し」が多い人は、魅力的な人だと思います。「広く深く」でなくてもいい、「広く浅く」で構わないので、たくさんの分野に興味を持っておくことが大切です。普段からいろいろなことにアンテナを張っておくことは大事ですね。その中で自分の武器を身につけ、しかもその武器が多ければ、なおいいと思います。資格や語学、あるいは海外での経験など、人と違うことをやっている、人と違う能力を持っている人がいいでしょう。
―― 高校生に向けてアドバイスをお願いします。
今、「高校のときにもっとあれをやっておけばよかった」と思うことがたくさんあります。何となくダラダラ過ごして、気付いたら3年間が過ぎていた、という高校時代を過ごした人は多いと思います。高校時代は限られていて、もう二度と帰ってこないのに。
だから高校生には「今日という日はこの一日しかない」と、毎日が特別な日だと思って後悔しないように日々を過ごしてほしいと思います。
ラルフさんがテレビ局に入ったときは、ハーフで海外生活のほうが長いアナウンサーというのは異色だったそうです。人と違っていることを大切にして、高校時代に打ち込んだサッカーと語学習得を生かしたことが、ラルフさんがいろいろな世界大会へ取材に行ける要因になったのだとか。それでも高校時代には悔いがあるとおっしゃいます。ラルフさんのアドバイスは、そんな切実な思いから生まれたものでした。
【取材協力】日本テレビ ラルフ鈴木
【取材】森雅史/日本蹴球合同会社
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「アナウンサー」
はこんな仕事です
放送メディアのさまざまな番組に出演し、報道活動やニュースの発信に携わり、アナウンスをする職業。働き方としては東京のキー局をはじめ、地方、海外も含めたテレビ・ラジオ局の社員という雇用形態が多い。最近は、バラエティー番組の進行を務めるケースも増えて、放送局の顔となる傾向のため、採用は個性も重視される。アナウンサーには、タレント的な輝きや感性が求められているところもあり、採用試験は難関。華やかに見える職種ではあるが、番組の放送時間によっては、早朝・深夜、休日・祝日勤務となる。
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