お気に入りの本を手に熱く語る高校生が集結!
「マイナビ 第5回全国高等学校ビブリオバトル」決勝大会レポート
メイン
テーマ

面白いと思った本を持ち寄り、5分間で本の内容を紹介する知的書評合戦ビブリオバトル。本を通してできるコミュニケーションゲームとして注目されています。
2019年1月20日(日)、東京・よみうり大手町ホールにて、「マイナビ 第5回全国高等学校ビブリオバトル」決勝大会が行われました。ブロック大会、都道府県大会を勝ち抜いてきた45人の高校生が集まり、決勝大会に挑みました。今回はこの模様をレポートします。
この記事をまとめると
- 大学受験の勉強を通じて、気になる本に出合うこともある
- 3分間の質疑応答では、バトラーへの積極的な質問が行われた
- グランドチャンプ本に輝いたのは、奇想天外なミステリー小説
著名人がトークセッションで語る、高校時代に読んで忘れられない本とは?
決勝大会では、ゲストによるトークセッションが行われました。作家の原田マハさん・朝井リョウさん・弁護士の三輪記子さんが登場。出場した45人の高校生のアンケートをもとに質問に答え、高校時代に読んだ本の思い出などについて語って下さいました。
「本に関する忘れられない思い出は?」というアンケートに対して、出場した45名の高校生から、「30歳以上離れた先生と同じ本の話題で盛り上がった」「好きな人に借りた本をなくしてしまい、同じ本を買って返した。1年後にその本を見つけて今でも手元にある」「幼い頃、祖父が漢字にふりがなをふってくれた。その本を見るたびに祖父のことを思い出す」という心温まるエピソードが寄せられました。
これを受けて原田さんは「子どもの頃から読書やアートが好きでしたが、小学1年生の時に読んだ『ドリトル先生』シリーズにあった挿絵に夢中になった」と語り、朝井さんは「小・中学校の時に、自分の書いた小説を担任の先生に読んでもらい、感想を聞く時には先生が本好きの同志のように身近に感じた」と語ってくれました。三輪さんは「子どもの頃通っていた病院の待合室にあった『ファーブル昆虫記』『シートン動物記』『二十四の瞳』などを読んだことがきっかけで本を読むようになった」のだそう。
また、三輪さんは高校時代に通っていた国語塾で授業の題材になった太宰治の『魚服記』で小説の奥深さを知り、受験期は模擬試験に出てきた文章を面白いと感じながら読んでいたと語ってくださいました。
試験問題が読書につながるの!?と驚く人もいるかもしれませんが、朝井さんも同様の経験があるそう。大学入学共通テストの過去問で堀江敏幸さんの『スタンス・ドット』に出合ったことが志望校を決めたきっかけだと語り、「堀江先生のゼミを受けるために大学を選んだ。受験勉強は大変だけれどこういう出合いもある」と高校生にエールを送りました。
トークセッションの最後に「小説家を目指しているけれど何が一番大切か」という質問に対して、朝井さんが「語るすべがなければ何も伝わらない」と自身の考えを述べた上で「ぜひこの質問をしてくれた人には藤田祥平さんの『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』を読んでほしい」と朝井さん自らがビブリオバトルを始めたので、原田さんが「思わずうちわを上げてしまいそうになりました」と笑顔になり、大いに会場が盛り上がりました。
7人のバトラーたちが、身振り手振りで本を熱く語る!
トークセッション後、予選を勝ち抜いた下記7名のバトラーによる決勝が始まりました。
(発表順)
1.滋賀県立高島高等学校 足立 菫さん 『折れた竜骨』米澤穂信
2.富山県立高岡工芸高等学校 井上 敦史くん 『神様のコドモ』山田悠介
3.昭和鉄道高等学校 林 仁くん 『失われたドーナツの穴を求めて』芝恒亮介・奥田太郎
4.静岡県立富士宮西高等学校 遠藤 俊介くん 『最後のトリック』深水黎一郎
5.山梨県立甲府西高等学校 古屋 慎人くん 『鈍感力』渡辺淳一
6.関西創価高等学校 佐久間 諒くん 『探偵が早すぎる』井上真偽
7.千葉県立国分高等学校 廣部 太一くん 『どちらかが彼女を殺した』東野圭吾
ビブリオバトル決勝大会のルールは、5分で本を紹介し、その後3分間質疑応答が行われます。観戦している人たちはそれぞれうちわを手にして、全員の発表が終わったあと一番読みたいと思った本にうちわを上げます。この時にうちわの数が一番多い本がチャンプ本となります。
本の紹介に5分は長いのでは?と思ってしまいそうですが、身振り手振りで本の魅力を語るバトラーたちにとっては、熱い思いを語り切るのにむしろ5分では足りないほど。
質疑応答では高校生を中心に活発な議論が進められました。「正直何を言っているのか全然分からなかったのですが……」という素直な意見から「その本の中で一番納得ができたのはどの部分ですか?」と本の内容について言及したものなど、3分ではまとめられないほどさまざまな質問が飛び交いました。
グランドチャンプ本に輝いたのは……?
栄えあるグランドチャンプ本は、静岡県立富士宮西高等学校の遠藤俊介くんが紹介した『最後のトリック』、準グランドチャンプ本は、昭和鉄道高等学校の林仁くんが紹介した『失われたドーナツの穴を求めて』が選ばれました。
『最後のトリック』を紹介した遠藤くんは、普段あまり読書をするほうではないとのことですが、この本は面白くて一気に読んでしまったのだそうです。読者が犯人になってしまうミステリー小説という奇想天外な内容も観客の皆さんの興味をひいたのかもしれません。
『失われたドーナツの穴を求めて』を紹介した林くんは、よどみなく語る大人顔負けのプレゼンテーション力で会場を圧倒しました。一見哲学的で難しそうな本ですが、林くんの紹介でぐいぐい引き込まれた人が多かったようです。
決勝に進んだ7人のバトラーたちが紹介する本はそれぞれ魅力的で、どの本も読んでみたいと思えるものばかりでした。「この本をぜひ読んで欲しい」という強い気持ちがひしひしと伝わってきたからかもしれません。今回紹介された7冊の本、ぜひ皆さんも手にとってみてはいかがでしょうか。