中学生の頃の夢を叶えた! スポーツ雑誌・編集者の仕事とは

1973年に創刊以来、長年にわたりバスケットボールの魅力を伝え続けている『月刊バスケットボール』(通称:月バス)。本誌で編集者として活躍する中村麻衣子さんにお話を伺いました。スポーツ雑誌を手掛ける編集者は、どんな仕事をされているのでしょうか?
この記事をまとめると
- 中学生の時から憧れていた仕事に就くことができた
- 進路に悩んだ時、今の会社の先輩にアドバイスをもらった
- どこの大学へ行くかではなく、どうやって大学生活を送るかが大切
雑誌作りは、毎月締め切り前に終電間際まで働くハードな仕事
―― 仕事の概要を教えてください。
『月刊バスケットボール』という雑誌を作る仕事をしています。私たち編集者は編集の仕事だけでなく、企画・取材・記事の執筆・誌面レイアウトを考えるところまで担当します。場合によっては自分で写真を撮ることもあります。毎月雑誌を発行するためのスケジュールに合わせて仕事を進めていきますが、締め切りが近くなると忙しくなり、終電間際まで仕事をすることもあります。
月刊バスケットボールでは、全国の中高生への取材も行うので出張も多いです。また夏や冬には高校生の全国大会が開催されますが、大会期間中は朝から晩まで会場で取材しています。またプロリーグの試合が行われているシーズンには、土日の取材が増えます。
―― 編集部には何名いらっしゃいますか?
今は少し多くて7名在籍していますが、これまでは編集担当は5~6人のことが多かったですね。会社には他に販売部や広告部などがあり、協力して1冊の雑誌を作っています。また、最近はWebサイトにも力を入れています。
―― 仕事のやりがいと大変なところをそれぞれ教えてください。
私は中学生の時から月バスの記者になりたいと思っていたので、毎日楽しく仕事をさせてもらっています。取材でいろいろな人と出会えて、その出会いから自分自身も刺激を受けていますね。面白い話を聞いて、これをどう読者に伝えようかといろいろ工夫をしたとき、読者から「この記事が良かった」と言ってもらえるとうれしいです。
締め切り前は忙しくて大変ですが、「取材した中高生にとっては、雑誌に載るのは一生に一度のことかもしれない」と思うと手は抜けないし時間も惜しめません。時には体力勝負なところがあるので、風邪をひいたら大変ですね。
あとは友達と休みが合わないところも少し大変です。旅行に行く計画を立てていても、急遽取材が入ってキャンセルしなければならないこともあります。でも最近は友達もそういうものだと理解してくれるようになりました。
月バスの記者になりたいとという夢を叶えるため、自ら行動
―― どのような高校生活を送っていましたか?
バスケットボール部に所属して、バスケ一色の生活を送っていました。高校3年生の5月に引退してからは一気に受験モードになって、偏差値もかなり上がったと思います(笑)。
ただ進路に関してはかなり悩んでいて、月バスの記者になりたい夢を叶えるためにスポーツ関係のことを学べる学部を目指すか、もう少し広く学べる学部を目指すかで迷っていました。
先生に相談したところ、月刊バスケットボールの方に話を聞きに行くことを勧められ、記者の方に相談に乗っていただいたところ、「高校生のうちから選択肢を狭める必要はない」と言われました。「スポーツ以外のことも学んでバスケットボールに戻ってくれば、学んだことが生きると思うよ」とアドバイスをいただき、その話を聞いて社会学部を目指そうと決めました。
―― その後、どのようにして現在の仕事に就かれましたか?
大学3年生になって再度自分からインターンができないか連絡して、月バス編集部でアルバイトとして働かせていただきました。会社として毎年新卒の採用をしているわけではないのですが、たまたま私が卒業するときに募集があったので、そのまま入社することができました。タイミングが良かったと思います。
興味を持ったら、まずは行動することが大切
―― 夢をかなえて入社できたわけですが、「現実はこうだったんだ!」というところはありましたか?
こんなに少人数で雑誌を作っているのかとびっくりしました。少人数制でアットホームな職場なので、テレビドラマに出てくる出版社のイメージとはちょっと違いました。でも思っていた以上に面白い仕事だと感じました。読者の時は、バスケットボールチームの監督は怖い人が多いのかと思っていましたが、会ってみたら魅力的で面白い人たちばかり。取材をさせていただくうちに、大好きな人がたくさん増えました。
―― 高校時代の経験が今の仕事につながっていると感じることはありますか?
私は高校1年の終わりにアキレス腱を切って半年間リハビリをした経験があります。そのため、けがでつらい思いをしている選手の気持ちが少しは分かるので、ケガをした当時はつらかったですが、今になって思えば経験して良かったと思います。
また高校生の時から、積極的に行動していたことが今に生かされていると感じます。進路に悩んだ時に月バス編集部に連絡をしたこともそうですが、大学生1年生のときからライターとして、大学バスケの取材やプロチームの試合速報の仕事を手伝うことができて取材経験につながりました。何でも行動することが大切だと感じています。
―― 高校生に向けたメッセージをお願いします。
「この大学へ行かないと希望していることが勉強できない」と決めつけないほうがいいと思います。大学こそ全てと考えてしまいがちですが、いざ大学を卒業して思うことは、結局どこの大学に進学するかよりも大学生活をどう過ごすかが一番重要なのだということです。
今はインターネットがありますから、興味がある分野の勉強は自分でもできます。なんとなく生活しているよりも、本当にやりたいことの目標に向かって頑張るほうが楽しめると思うので、ぜひ自分の選択肢を狭めないでいろいろなことに挑戦してみてください。
中村さんは終始笑顔でご自身の仕事について語ってくださいました。仕事で大変なことをいくつか挙げながらも「ただそんなに大変だと感じたことはないですね」とにっこり。バスケットボールが大好きなことがひしひしと伝わってきました。スポーツ好きな人は、選手の頑張りや魅力を伝える編集などのお仕事があることも知っておくといいかもしれませんね。
【profile】
日本文化出版株式会社 月刊バスケットボール編集部
中村麻衣子
この記事のテーマ
「健康・スポーツ」を解説
スポーツ選手のトレーニングやコンディション管理に関わる仕事と、インストラクターなどの運動指導者として、心身の健康管理やスポーツの有用性を一般に広める仕事に分かれます。特に後者は、高齢化や生活習慣病が社会問題化する中、食生活や睡眠も含めて指導できるスペシャリストとして需要が高まっています。
この記事で取り上げた
「スポーツ雑誌編集者」
はこんな仕事です
スポーツ専門誌の編集をする仕事。誌面のコンテンツや構成を考え、取材・執筆を行う。試合の見どころや結果、選手のインタビューや対談、競技のルールや上達方法など、取り上げる題材は雑誌のコンセプトや企画によって異なる。業界の動きや読者のニーズにマッチした誌面を作るための企画力が問われる。また、主な取材対象者となるスポーツ選手やチーム関係者だけでなく、ライターやデザイナーなどと協力しながら誌面を形にしていくため、協調性やコミュニケーション能力も必要だ。