ライブ撮影に必要なスキルは情熱 ~バンドPAN・ライブカメラマン~
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好きなバンドのライブに行けなかった時、写真を通してライブの様子を感じた経験がある人もいるのではないでしょうか。ライブ会場の臨場感あふれる雰囲気を写真で伝えてくれるのがライブカメラマンのお仕事です。
今回は大阪を拠点に活躍するバンド『PAN』のライブ撮影をされている冨田味我(とみた・みわ)さんに、ライブカメラマンから見たPANのステージの魅力、そしてライブ撮影はどのように行われているかなどについて伺いました。
この記事をまとめると
- ライブ会場の熱気を写真でどう伝えるかにこだわっている
- 写真を現像する際はビビッドな色合いを意識
- ライブカメラマンに必要なのは、さらに良いものを撮りたいと思う情熱
面白い動きをする時がシャッターチャンス!
――ライブ当日現場に到着してからの仕事の流れを教えてください。
ライブにもよりますが、昼から現場入りするところもあればライブの直前30分ぐらい前に入るところもあります。会場に入ったら、どこで撮影できるかなどの下見をして、脚立を置ける場所を確認します。
ライブの時間によっても違うので、決まった仕事の流れはありませんが、行ったことがあるライブハウスであればだいたい様子が分かるのでそんなに準備には時間はかかりません。
――撮影する際にこだわっている点を教えてください。
ライブの臨場感をどう伝えるか、という部分です。すごく熱いライブでも、静止画になると勢いがなかなか伝わりきらないこともあるので、難しいなと感じているところでもあります。あとは表情で、いい顔を撮りたいと日々頑張っています。
――PANの場合、こういうふうに撮りたいというイメージはありますか?
まずはメンバー4人がそろったかっこいい写真を確実に押さえておきます。一人ずつのアップもかっこいいのですが、やはり全員そろった写真がメインで使われることが多いので。
PANは何度も撮影しているので、曲によってどんなパフォーマンスをするのかが大体分かります。例えば川さん(Vo.)がする身体の柔らかさを生かした面白い動きや、ジャンプをする時など、「今日はどこから狙おうかな」と考えて撮影しています。
――撮影するにあたってPANのメンバーと打ち合わせはしていますか?
長年撮っていてある程度分かっているので、PANとの打ち合わせはあまりしていません。ただ私から「どんな写真がいい?」「どれが良かった?」とたまに聞いています。あとはメンバーの皆さんがTwitterなどに私が撮影した写真を取り上げてくれるのを見ると、「こういう写真が好きなのかな」と分かりますね。
写真は撮影方法だけでなく、現像方法でも印象が変ります。フィルム時代はフィルムそのものや液に浸す時間で好みの色合いを出していましたが、今はパソコンで現像処理をします。ここも個性を出す重要なポイントかと思います。私はどちらかと言えばビビッドな色合いが好きなので、色を強めに出す事が多いです。
雨の野外ライブはいい写真が撮れることもある
――撮影内容はどうやって決めていますか?
リハーサルで照明を確認できたときは、撮る場所を事前に考えた上で動きますが、できなかったときは本番中の照明の当たり方を見て、その都度移動します。動けない現場以外は、お客さん、演者、スタッフに迷惑にならない様に気をつけながらひたすら動いて撮影しています。
照明は演出効果がありますが、昼の野外などは照明がほとんど効かないので画で勝負しなければならない難しさがあります。
ただ昼の野外ライブもいいところがあります。天気が良ければ青空が入りますし、雨の日は幻想的でいい画が撮れることがあるんです。
1年前、PANとSABOTENというバンドが主宰するマスコロ(マスターコロシアム)というライブで結構雨が降っていました。機材のことを考えるとちょっと憂鬱になりましたが、雨の滴がいい感じに演出された良い写真を撮ることができました。
――どういう場面でどのカメラを使っているか具体的に教えてもらえますか?
私は3台のカメラと、魚眼、広角・標準・ズームの4本のレンズを使います。狭いライブハウスだと演者が近過ぎて望遠レンズは使いづらいため、広角(もしくは魚眼)と標準の2本だけを使うこともあります。逆に大きなステージでは望遠をよく使います。
皆さんもドラムの後ろから客席側を撮った写真を見たことがあると思いますが、ライブハウスによってはステージに入ることができるので、MC中に目立たないようにササっとステージに上がって撮影します。こうした写真も広角と魚眼で撮ります。
ライブカメラマンに必要なのは自分の写真を見直す情熱
――ライブ撮影を行う上で大変なこと、苦労されていることを教えてください。
PANのライブの場合人が飛んでくるので(笑)、機材を守りながら撮影することや、ライブハウスによっては狭いところもありますから、機材を持ちながら移動するのは大変です。またしゃがんでいるので、足がパンパンにむくみます。この仕事は体力勝負だなと思います。
――ライブカメラマンとして必要なスキルは何ですか?
ざっくり言うと情熱です。情熱を持って、いい画を撮るためにたくさん撮影することだと思います。より良くなるために自分が撮影した写真の良かったところ、悪かったところを復習して見直すことが大切だと思います。
私は若い頃、人に何かを聞くのが嫌だというところがありました。でも今はたくさんの人にどうやって撮影しているのかを聞いて、それを基にいろいろ試して自分のベストを見つけています。これも作品に対する情熱からできることなのかなと思います。
冨田さんは友達のバンドを撮影したことをきっかけに、ライブカメラマンとして仕事を始めたそうです。お気に入りのバンドに「撮影させてください!」と直談判をして場数を踏んでいったのだとか。こうした行動力も冨田さんがおっしゃる「情熱」の一つなのでしょう。これからもPANのライブカメラマンとして、素敵な写真を撮ってくれることでしょう。
【Profile】ライブカメラマン 冨田 味我(とみた・みわ)
この記事のテーマ
「デザイン・芸術・写真」を解説
デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。
この記事で取り上げた
「フォトグラファー」
はこんな仕事です
フォトグラファーは動画なども撮影するムービーカメラクルーと異なり、静止画像のみを撮る職種。撮影する対象はさまざまで、報道、ファッション、スポーツ、食品、建築物、風景と、それぞれ専門分野を持っている人も。写真が使われる媒体は新聞、雑誌、インターネット、広告など。フリーランスのアシスタントとして仕事を始める場合もあるが、スタジオやマネジメント事務所、写真館、ブライダルサロンに入社することも。そこでしばらく経験を積み、後にフリーランスとなって活躍する人も多い。
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