なぜ卵をレンジでチンすると爆発するの?

手軽に食べ物を加熱することができる電子レンジですが、なんでも加熱できるわけではありません。ゆで卵を電子レンジで作ろうとすると爆発してしまうのです。なぜなのでしょうか?
この記事をまとめると
- 電子レンジは食品を内側から加熱する性質をもち、熱膨張した黄身が水蒸気爆発を起こす
- 電子レンジが出すマイクロ波は食品内の水分子を振動させ、摩擦熱が発生する
- 物理現象を利用したものづくりを研究するのが「機械工学」
なぜ卵は電子レンジで加熱すると爆発するの?
卵は鍋やフライパンでの加熱では爆発しないのに、電子レンジでは爆発してしまいます。それは加熱方式の違いが大きく影響しています。
鍋やフライパンはお湯や火で外側から加熱していく方式ですが、電子レンジは「マイクロ波」という電波を照射して加熱します。マイクロ波は食品を内側から加熱する性質をもっているため、卵の場合黄身から加熱されていきます。黄身は殻と白身で密閉されているため黄身の内圧が高くなってしまい、加熱温度が100℃以上になってしまいます。
やがて、熱による膨張で体積が増えた黄身が白身と殻を押し破ってしまいます。外気に触れると圧力も沸点も元に戻るので、100℃以上でも液体だった黄身の水分が一気に水蒸気に変化してしまい、その結果水蒸気爆発を起こしてしまうのです。これが電子レンジで卵が爆発する理由です。
マイクロ波は食品内に含まれる「水分子」を振動させて摩擦熱を起こし加熱させている
電子レンジは加熱方式こそ違うものの、鍋やフライパンと同じように食品の外側から温めているのに、なぜマイクロ波だけ内側から加熱されるのでしょうか?
実はマイクロ波は食品そのものを温めているわけではありません。マイクロ波には食品に多く含まれる「水分子(H2O)」を振動させる性質をもっており、水分子の振動による摩擦熱を利用して加熱を行っているのです。
まず、水分子はO(酸素)原子1つとH(水素)原子2つから成り立っており、H原子側が+極、O原子側が-極に帯電しています。そして、非常に波長の短い電波であるマイクロ波は、進行方向に向かって+(プラス)方向や-(マイナス)方向に目まぐるしく方向を変えながら進む性質をもっています。
電気は+極と-極が引き合う性質があるので、マイクロ波が通った水分子はマイクロ波の向きに合わせて向きを変えるようになります。激しく向きを変える分子同士がこすれ合うことで「おしくらまんじゅう」のように摩擦熱が発生するのです。
物理現象を利用したものづくりを研究するのが「機械工学」
電子レンジで卵が爆発してしまうのは、マイクロ波の性質を利用した商品であるがゆえの現象でした。このように、特に電化製品などのものづくりはさまざまな物理現象を利用して作られているものが多いです。もしかしたら、別の物理現象を利用することで卵が爆発しない加熱方式の電子レンジが開発できるかもしれません。
生活をより豊かにするためのものづくりの知識は「機械工学」で学ぶことができます。ものづくりに興味がある人はぜひ学んでみてはいかがでしょうか。
【出典】
・藤野家商店
http://www.fujinoyaweb.co.jp/column/461
・ミクロ電子株式会社
http://www.microdenshi.co.jp/microwave/
・四国計測工業株式会社
http://microwave.jp/mw.html
・imidas
https://imidas.jp/science/?article_id=k-051-022-11-11-g385
この記事のテーマ
「工学・建築」を解説
工業技術や建築技術の発達は、私たちの生活を画期的に快適で安全なものに変えてきました。先人たちの生み出した知恵に新しい技術をプラスすることで、その進歩はいまも日々、進んでいます。インフラの整備や災害に強い街作り、エネルギー効率の高い動力機械や高い知能を持ったロボットの開発など、工学や建築に求められるものはますます増えるでしょう。自然との共生も大きなテーマです。理系の中でもより実地的な分野だと言えます。
この記事で取り上げた
「機械工学」
はこんな学問です
生活と産業に使われる機械類の仕組みを研究し、新しい機械を創造するための学問。目的に適した原理を力学的に研究する「設計工学」のほか、機械の安全・安定性を研究する「計測・制御工学」、空気や水の中で働く力について研究する「流体力学」、材料加工をテーマに研究する「加工工学」「材料工学」など研究分野はさまざま。このほかにも「精密工学」「熱力学」など、機械工学といっても、その研究範囲は多岐にわたっている。
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