【高校総体・優勝】ボクシング 駿台学園高等学校
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ボクシング・インターハイのミドル級で4試合を手堅く勝ち続け、見事優勝を飾った須永大護君は、AIBA世界ユース選手権の日本代表として世界でも戦った選手。「勝たなければ」というプレッシャーに打ち勝ち勝利を手にした須永君と、6年間彼を見守り続けた関口孝先生に、毎日のトレーニング内容やインターハイの感想などを伺いました。
この記事をまとめると
- 優勝の感想は「嬉しい」よりも「ホッとした」
- テストのため休んで鈍った体を最後の1週間で追い込んだ
- 負荷をかけた毎日のつらい練習が勝利を支えた
長期間部活を休んで鈍った体を取り戻すための「追い込み練習」
【須永君インタビュー】
―― 大会で優勝された感想をお聞かせください。
試合が終わった時は、もっと気持ちが込み上げるかなと思っていましたが、「勝ったな」と意外と冷静に受け止めていました。「優勝できるかな」ではなく「優勝しなければいけない」という気持ちで臨んだ試合だったので、喜びよりもホッとした気持ちが強かったです。
―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?
インターハイ1カ月前に学校の定期テストがあったんですが、大学推薦のために内申点が必要で、3週間ほど勉強のために練習を休んでいたんです。こんなに長期間休んだのは初めての経験でした。試験は無事に終わったんですが、練習に戻ったら全然体が動かなくて……。普段は軽く踏めるステップも、ドスドス音がするような重い感じで本当に焦りました。そのせいでいつも以上に練習に打ち込んで、最後の1週間はかなり追い込んだのがよかったのかもしれません。
予想とは違う試合運びで「全試合が苦しかった」
―― 一番苦しかった試合・瞬間はありましたか?
全試合が苦しかったといえば苦しかったですね。全部KOするつもりで臨みましたが、2回戦くらいからイメージ通りに進まなくなり、先生をはじめいろいろな人に怒られました。「これじゃ優勝できないぞ」と言われて焦り、次の日から改めて集中して臨みました。
―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?
やっぱり日々の練習だと思います。僕はランニングや階段ダッシュをする時に必ず左右2キロずつのウェイトを持って走りました。毎日2時間の練習中、インターバルはもちろん取り入れていますが、先生がなかなか休憩させてくれないので(笑)、とにかく動き続けました。本当につらかったですが、その練習の効果があったんだと思います。
―― 大会全体を通した感想を教えてください。
何日かお休みがあれば、少しは余韻に浸れたのかもしれませんが……インターハイが終わって次の日に1日休んで、翌日には世界ユースの大会で海外に遠征したので、じっくり優勝を味わう時間がありませんでした。
また「優勝しなければ」という気持ちで臨んだ大会だったので、正直プレッシャーは強かったですし、優勝してしまった今、今度は負けられないという重圧も感じています。
グローブを置いた後の人生を、強く生きられるように
【関口先生インタビュー】
―― 優勝後、選手にどのような言葉をかけられましたか?
うちのボクシング部は中高合同ですが、須永は初めての中学生部員でしたので、6年間の集大成としての優勝という気持ちもありました。惜しいところで日本一を逃した経験もしていたので、「長かったな」と言ってハイタッチをした記憶があります。
―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?
ボクシングはそれぞれの個性や得手不得手、スタイルがありますから、その良し悪しを指摘するというより、ボクシングの「基礎」を重点的に見るようにしています。日々のルーティーンであるランニングや階段ダッシュ、サンドバッグを使ったパンチの練習などでも、最後まで諦めず力を使い切ることが大事だと伝えています。
厳しい指導をしても私のいないときにダラダラしてしまっては意味がないので、「やる時はやる。遊ぶ時は遊ぶ」というメリハリをつけた指導を心掛けています。
―― 須永選手を一言で表現するなら、どのような選手だと思われますか?
須永は部のキャプテンでもありますが、歴代のキャプテンの中でもかなり寡黙ですね。声を出してみんなを盛り上げるタイプではなく、背中を見せて引っ張るタイプです。下級生からも信頼されているので、部員のことは安心して任せています。
―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?
インターハイで優勝できましたが、ようやく一つ形ができたというだけ。この先も国体がありますし、大学へ進学してボクシングを続けることが決まっているので、しっかり頑張ってほしいですね。
また、グローブを置いた後の人生の方が長いですから、この結果におごることなく、人にやさしく、人の意見に耳を傾けられる強い人間になってほしいです。
格闘技好きのお父さんの勧めで小学校からキックボクシングを始めたという須永君。大学では階級を落とすことも考えているそうで、練習だけでなく減量との戦いもより過酷になるかもしれません。ストイックに努力する姿に今後も注目したいですね。
【profile】駿台学園高等学校 ボクシング部
ボクシング部監督 関口 孝先生
須永 大護君(3年)