【将棋選手権大会・個人戦優勝】攻玉社高等学校
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史上最年少棋士の誕生などで人気が高まり、競技人口が増えているという将棋。その高校生日本一を決める全国高等学校将棋選手権大会個人戦で見事優勝を飾ったのは、攻玉社高等学校1年の川島滉生君です。「2〜3日将棋を指さないと感覚が鈍る」と日々鍛錬を積む川島君に、大会の様子や日々の練習について伺いました。
この記事をまとめると
- 睡眠時間の確保とリラックスが勝利の秘訣
- 相手がミスするのを我慢して待てばチャンスが訪れる
- 大会で会う対戦相手を一生の仲間として大切にしたい
番数を重ね、経験値をあげて臨んだ全国大会
―― 大会で優勝された感想をお聞かせください。
嬉しかったです。昨年出場した中学生の全国大会では、仲の良い同い年の仲間が優勝して悔しい思いをしました。今度はやってやろうという思いで、ネット対局なども活用して番数を重ね、経験値をあげて今年に臨みました。
―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?
前日に睡眠時間をたっぷり確保できたことが大きかったと思います。普段から夜は9時頃に寝て、朝は6時半くらいに起きるのですが、大会期間中もいつもと同じ生活リズムで過ごせたのが良かったです。
それにまだ1年生なので、「もし負けても来年がある」とリラックスして大会に入れたのも理由の一つだと思います。
「諦めない気持ち」を持ち続けてつかみ取った勝利
―― 一番苦しかった試合・瞬間はありましたか?
3回戦での対戦相手は、去年の高校生全国大会で準優勝している人で強いことが分かっていたので、戦う前から苦しかったですね。対局中も、どうしていいか分からない場面が何度もありました。
でも相手も人間なので、待ち続けていれば、いつかどこかで必ずミスが出ます。自爆しないように慎重に指していれば、いつか向こうが自ら倒れてくれる可能性があるので、それをじっと待っていました。
―― 普段はどのように練習されていますか?
僕はネットでの対戦が一番多いですね。AIは瞬時に次の手を打ってきてリズムが狂うので、あまり練習には使いません。実際の対局は人が相手なので、人と指した方がいいと思っています。
また中学3年間は休んでいたんですが、強い人が集まる校外の将棋クラブに最近また通い始めました。ここは小学生から大人まで本当に強い人ばかりが集まっていて、僕も小学生に負けることがあるくらいで……。ここに行くと「どうやったら強くなれるか」を真剣に考えるので、モチベーション向上になります。
平日に練習するのは家に帰ってからの3〜4時間、学校の行き帰りには詰将棋もやっています。勉強は授業で集中するようにしているので、家ではほとんどしません。
小学生の頃から対戦してきたライバル達との対局
―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?
最後まで諦めない気持ちを持ち続けたことです。以前は圧倒的優勢な局面から逆転負けするということが多かったのですが、これは完全に僕の気持ちの緩みが原因でした。それなら相手にも気の緩みがあるはずだと考え、相手がミスする瞬間を突くようにしました。でも相手が間違えるまで耐えつつ、自分は絶対にミスをせずに諦めないで指し続けるのは、結構つらいです。
また僕は早指しで、あまり長考せずにパッとひらめいた手を指す方ですが、それが強みの一つでもあります。これはネット対局などで短い持ち時間で指す練習をして、鍛えた部分です。もちろん早く指すことで間違えることもあるんですが、僕の場合は長考してあらゆる手を考えても、ひらめいたときの手が最善手であることが多いので、作戦の一つとして早指しをしています。
―― 大会全体を通した感想を教えてください。
今回の大会の参加者は、小学生の頃からいつも全国大会などで顔を合わせてきたメンバーばかりでした。「頑張ってるな」とか「負けられないな」とか、お互い気にかけている相手なので、彼らと会って対局できたことが純粋に楽しかったです。
僕は小学校4年生のときに「プロにはならない」と自分で決めました。プロの世界は厳しいことも分かっていましたし、好きで始めた将棋が楽しくなくなってしまうような気がしたからです。周囲からは「トライしてみたら」と言われることも多かったですが、趣味で楽しもうと決めています。だからこそ大会で会えるような切磋琢磨し合える仲間を大切にして、生涯将棋を続けていきたいと思っています。
「将棋を楽しむこと」を最優先に考え、プロへは進まないことにしたという川島君。今回の大会では、勝ったことよりも仲間と再会・対局できたことが嬉しかったと言います。その度量の大きさにも、今回の優勝の理由があったのかもしれません。
【profile】攻玉社高等学校 将棋部
川島 滉生君(1年)