【高校総体・優勝】なぎなた・個人 愛媛県立北条高等学校
メイン
テーマ

三重県津市で行われたインターハイなぎなた競技大会個人戦で2連覇を達成した、愛媛県立北条高校の神山愛姫さん。連覇を期待されつつも、苦しい戦いを強いられた4月からインターハイ優勝まで、どのように自らを改善し、試合に臨んできたのかを伺いました。
この記事をまとめると
- 自分の弱さと向き合い、達成した2連覇
- 周りの人の言葉を真摯に受け止め、目指した「理想の試合」
- 将来を見すえ、強さと人間性を育んだ指導
弱さを克服し、自分を見つめ直してつかんだ2連覇
【神山愛姫さんインタビュー】
―― 優勝した感想をお聞かせください。
うれしいです。優勝は難しいかもしれないと思った時期もあったので、ホッとしました。試合前や試合中は連覇のことを考えず、一つひとつ、目の前の試合を大切に自分の課題をクリアしていくことに集中しました。結果的に2連覇が達成できたので、優勝が決まったときは本当にうれしかったです。
―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?
3月の全国選抜(第13回全国高等学校なぎなた選抜大会)から思うように勝てなくなり、先生方にもアドバイスをもらって、気持ちや生活の面からも自分の悪いところを改善してきました。日ごろの学校生活や、なぎなた部の部長としての立場にも自覚を持って向き合ってきたことが、試合にいい影響を与えたと思います。
インターハイの前に、鈴木先生から「全国選抜と同じ悔しさを味わってほしくない」と言われたときは、もう一度がんばらなければいけないと強く思いました。
自分の甘さに妥協せず、謙虚な姿勢で臨んだ決勝戦
―― 一番苦しかった試合はありますか?
決勝戦は苦しかったです。1回戦に勝ってペースをつかみ、流れを自分のほうに引き寄せて試合を運べていたのですが、決勝戦では日本一が見えてきたこともあり、落ち着いた試合ができませんでした。相手も本当に強いので、ペースに飲み込まれてしまいました。
―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?
これまでは自分の理想とする試合ができないと、焦って試合運びが雑になってしまうことがありました。そこが自分の弱さだと先生にも指摘されていたので、日常生活を丁寧にこなす心がけや、周りの人たちへの配慮といった精神面を意識して改善しました。
なぎなたは個人の勝負ですが、練習にも試合にも相手がいること、一緒にがんばる仲間がいること、応援してくれる人たちがいることなど、意識を広く持ち、謙虚な気持ちで競技に取り組みました。
自分ひとりなら「これくらいでいい」と思うことでも、まだできることはないかと振り返り、部活動では先輩として、後輩のお手本になれているかと考える習慣をつけてきたことが、勝利につながったと思います。
―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。
今大会は2連覇が懸かり、直前まで自分の思うような試合ができずにいました。そんなとき、たくさんの人から「勝つことを意識するのではなく、一つひとつの試合に集中して戦うように」と声をかけてもらい、気持ちを切り替えることができました。
2連覇を達成することができたのは、「春の大会で一度負けているのだから、再チャレンジするつもりでいけばいい」という、まわりの人たちからの励ましがあったからです。応援してくださった方々には、心から感謝しています。
誰もが応援したいと思える選手に。人間性を備えた選手の育成
【顧問 鈴木里香先生インタビュー】
―― 優勝後、選手にどのような言葉をかけられましたか?
神山らしい、いい試合だったと伝えました。
今大会は、決勝戦以外は1試合目から危なげなく試合を進め、ずっと一本を取って勝てていたので、安心して見ていられました。審判員が思わず手を上げたくなるような場面もあり、見る人の心を動かせるような戦いができていたと感じています。決勝戦は危ない場面もありましたが、全体的にはとても理想的な試合でした。
―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?
神山は2歳からなぎなたをはじめ、母親もなぎなたの経験者です。幼いころから続けてきているので、本人には「なぎなたはこういうものだ」というイメージが出来上がっていました。けれど部活動でのなぎなたや、部長として部を率いる立場になるとこれまで通りにはいかない。そこに苦戦した時期はあったと思います。
3月の全国選抜で負けたことで、神山自身が「このままではいけない」と強く自覚するようになり、私たちも何が足りないのか、どうするべきなのかを伝えやすくなりました。負けたときは悔しい思いをしたと思いますが、結果的によかったのではないかと感じています。
―― 神山選手を一言で表現するなら、どのような選手だと思われますか?
ムードメーカー的な明るさのある選手です。たとえば練習中に注意されることがあっても、落ち込んだ気持ちを表に出すことはありません。こちらが拍子抜けするほど、あっけらかんとしています。
でも彼女はそれを、無視しているわけではないんです。直すべきところも分かっています。でも注意されたことで不安定になってしまうような脆さはありません。
だから私たち指導者も気兼ねなく注意ができましたし、それを受け入れることができたところも、彼女が強くなれた要因だと思っています。
―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?
昨年、2年生で優勝したときは「試合の勘の良さで、思いがけなく勝ってしまった」という雰囲気もあったのですが、今年は追われる身となり、彼女の内面にも大きな変化がありました。
そんな中、私たちが彼女に伝えてきたのは、強いだけでなく誰もが応援したいと思える人間になってほしいということ。全国で一番になれるのは、1人の人間としても尊敬に値する選手であるはずです。今回の優勝経験を通して、そういう人物を目指してほしいと思っています。
また、強さと人間性を兼ね備えた選手として活躍し、いずれは後に続く選手を育成する指導者としても活躍してくれることを期待しています。
強さだけではなく、豊かな人間性を備えた選手を目指して指導を続けてきた鈴木理香先生と、信頼する指導者の言葉を真摯に受け止め、自分の力にしてきた神山選手。連覇達成の快挙は、土台からの人間づくりによってなされたものでした。
これからもなぎなたを続けたいと話す神山さん。大学での活躍にも期待です!
【profile】愛媛県立北条高等学校 なぎなた部
顧問 鈴木理香先生
神山愛姫部長(3年)