【高校総体・優勝】ソフトボール 啓新高等学校
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福井県福井市にある啓新高等学校の男子ソフトボール部は、創部6年目にしてインターハイ優勝という快挙を成し遂げました。日々の練習やチームの普段の様子など優勝までの道のりについて、キャプテンの本塚勇太君(3年)と顧問であり監督の山崎均先生にお話を伺いました。
この記事をまとめると
- チームワークは仲間と力を合わせて作り上げる
- 結果を残せたのは、仲間、監督、保護者のおかげ
- 優勝はゴールではなく、大きな目標の通過点
3年生が一丸となり、チームを引っ張ったことが優勝の決め手に
【本塚勇太君インタビュー】
―― 優勝した感想をお聞かせください。
優勝が決まった時は、「本当かな?」という気持ちの方が強かったですね。宿舎に帰っても地元で報告会をしても、ずっと実感が湧きませんでした。いろいろなメディアの方が僕たちを取材してくださるようになって、やっと実感が湧きました(笑)。
―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?
チームワークが出場チームの中で一番勝っていたのだと思います。例えば、試合中に苦しい場面があると、すぐにタイムを取ってチームメートの顔つきを見ます。少し苦しそうだなという時は、笑顔でポジティブな発言をするように気をつけていました。うちのチームにはムードメーカーがいるのですが、その選手がいつも明るくチームメートに接する姿を見て、僕や他の選手も見習うようになりました。
―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?
うちのチームは、一人ひとりの能力が高く個性があるところが、長所であり短所でもありました。ソフトボールはチームワークがとても重要ですが、個性が邪魔をしてチームがうまくまとまらない時期があったんです。僕は3年生になってからポジションがキャッチャーに変更になり、チームをまとめる余裕がなくて……。
そんな時、3年生の仲間たちが何も言わずに助けてくれました。なので、僕自身が努力したというよりも、チームメートたちの努力のおかげでチームが1つになれたことが、結果につながったと思います。
試合中は先輩・後輩の垣根を越えて支え合い、実力を出し切った
―― 一番苦しかった試合はありますか?
決勝トーナメントに入ってからは全ての試合が苦しかったです。1点入れるのも1点を守るのも、とにかくきつかった。うちのチームには「試合中は敬語を使わない」というルールがあって、そのルールがあることで、後輩でも先輩に何でも言える雰囲気なんです。苦しい場面では後輩たちがわざと冗談を言って、場の空気を和ませてくれました。
インターハイ前に、周囲には「優勝して帰ってくるから!」と宣言していたので、とにかく結果を出すこと、結果が全てだと自分に言い聞かせて苦しい場面を乗り切りました。
―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。
このチームで優勝できたことを仲間たちに感謝しています。小学校でソフトボールを始め、中学校ではソフトボール部がなかったので野球部に入りましたが、啓新高校で再び昔からの仲間たちとソフトボールができて、さらに結果が残せたことがとてもうれしいです。
また、僕たちを日々見守ってくださる監督やいつも応援してくださる保護者の皆さまにも、心から「ありがとう」の気持ちを伝えたいです。
生徒たちの「気づく力=アンテナ」を伸ばし、人間力を育てる
【顧問・山崎均先生インタビュー】
―― 優勝後、選手たちにどのような言葉をかけられましたか?
「1つのことを成し遂げるためには、どれだけ本気で思えるか」という言葉を、部員たちにはずっと投げかけてきました。ですので、優勝した時は「お前たちの思いの強さが証明された」と伝えました。優勝できたことはうれしいですが、それよりもそこまでの過程やチーム全員の思いを大切にしてほしいと思います。
―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?
私は大学からソフトボールを始め、U23日本代表に選ばれたこともあります。6年前にご縁をいただき、啓新高校で教員をしながらソフトボール部の監督を務めています。
創部当初は手取り足取り指導していましたが、その方法では結果が出せませんでした。現在は、練習メニューは全て生徒たちが主体的に考え、私はアドバイスを行うだけにしています。生徒たちが自分たちで考え、調べることによって、以前よりも技術が格段と身に付くようになりました。ソフトボールにおいてだけではなく、実生活でも自分自身で「気づく力=アンテナを張る」ことを教えています。
―― 一言で表現するなら、どのようなチームだと思われますか?
うちのチームは、個人の能力で考えると全国的にもずば抜けていると自負しています。ただ、能力があるが故に、チームとしての輪を作ることに苦労しました。正直インターハイまでに仕上がるのか、毎日不安な気持ちで見守っていました。
そんな時、うちのエースがU19日本代表のカナダ遠征から帰国し、部員の前で「このチームはこのままじゃだめだ。表面だけのチームワークではなく、真に信頼しあえるチームにしたい。みんなで力を合わせよう。俺はこのチームで全国一になりたいんだ!」と熱弁してくれて……。遠征先で先輩方から良い刺激を受け、優勝するためには真のチームワークが必要だと考えたようです。
これを機に、チームが一丸となって優勝へ突き進みました。部員たち自らが自分たちの問題に気づき、それを乗り越えた素晴らしいチームだと思っています。
―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?
生徒それぞれに、将来に向けてのビジョンがあると思います。その通過点にあるのがソフトボールであり、今回の優勝という結果です。
私は、ソフトボールの指導をするというよりも、人間を育てることに重きを置いています。部員には少しやんちゃな子もいますが、本質的に悪い子は1人もいません。自分がどうしたらいいのか分からなくなった生徒に対して、改善の方法を一緒に考えたり導いたりするのが役目だと思っています。
彼らにはこの経験を生かし、自分がどんな大人になりたいのかを考え、目標に向かってこれからもまい進してほしいと思います。
キャプテンの本塚君は、仲間、監督、保護者への感謝の気持ちを何度も口にしていました。3年生は10月に行われる大会を最後に引退し、高校卒業後は大学生、社会人など別々の道を歩むことになりますが、山崎先生の「より良い人を育てる」という思いは部員たちにしっかりと伝わっているはずです。それぞれが啓新高校での経験を糧に、目標に向かって歩んでいってほしいと思いました。
【profile】啓新高等学校 男子ソフトボール部
顧問・監督 山崎均先生
キャプテン 本塚勇太君(3年)