オジギソウはなぜおじぎするの?

子どもの頃に、葉に触って面白がっていたオジギソウ。でもよく考えるとなんでちょっと触っただけでおじぎするのか不思議ですよね? 今回はオジギソウの謎について解明していきます!
この記事をまとめると
- オジギソウにも人間と同じように神経伝達システムが存在する
- 刺激を受けたオジギソウは茎の付け根の上部に水分を移動させておじぎを引き起こす
- おじぎは外敵や悪条件の天候から身を守るための防衛手段として生み出された
ダーウィンも興味を持っていたオジギソウの謎
オジギソウはその名の通り、葉の部分を触るとおじぎをするように素早く葉を閉じる性質をもちます。
子どもの頃は面白がっていただけでしたが、実はこの謎にはいろいろな人が興味を抱いており、古くはあのダーウィンが自身の出版した本でオジギソウについて触れているそうです。
オジギソウは私たち人間と同じ動物の神経伝達システムと似たようなものが存在しており、おじぎにはそのシステムが関係しているそうです。私たちは外から得た刺激を電気信号として神経を伝って各器官に伝えるのですが、これと同様にオジギソウの葉に何かが触れた時の刺激が、葉と茎の付け根に位置する折れ曲がっている部分に信号が伝わり、おじぎをするのです。
ちなみに、人間に麻酔を打つと感覚が無くなるのと同様に、オジギソウの横に麻酔効果のあるエーテルを置いて外気を遮断するとおじぎをしなくなるようです。このことからも動物のような神経伝達システムが存在することが伺えます。
おじぎのメカニズムは外部の刺激によって引き起こされる水分の移動によるもの
葉と茎の付け根に位置する折れ曲がっている部分を主葉枕(しゅようちん)といいますが、ここに電気信号が送られた後、オジギソウの中ではどのようなことが起こっているのでしょうか?
主葉枕の細胞には細胞の骨格を作る「アクチン」という網目状のタンパク質の束があり、これによって細胞内の水分がガチっとホールドされています。
しかし、葉に手が触れるなどの刺激を受け、その電気信号が主葉枕に伝わると細胞内のタンパク質の構造に変化が起こり、水分をホールドしているアクチンがバラバラになってしまいます。そして、流れ出た水分は主葉枕の上部に集まります。
当然、水が集まった主葉枕の上部は体積が膨れ、重くなります。主葉枕は普通の植物と異なり表面が柔らかく、人間の関節のように運動性の高い特徴的な構造をしています。これにより主葉枕は下を向き、主葉枕のある茎の付け根から先の葉っぱも一緒に下を向いてしまうわけです。これがオジギソウのおじぎのおおまかなメカニズムとなります。
古くから多くの人に関心を寄せられているオジギソウですが、実はその仕組みはまだ完全には解明されておらず、今も研究が進められているようです。こんな身近な植物の不思議が未だに謎に包まれているのはロマンがありますね。
おじぎは生き延びるために生み出した自己防衛手段だった!
なぜオジギソウはおじぎをするようになったのでしょうか。それは、おじぎという行動が自分の身を守る行動となるからと考えられています。
おじぎをすることで鳥などの外敵から身を守り、また激しい風雨も当たりにくくなることでダメージを避けられます。光合成の際も光が強すぎるとうまく光合成ができないので、お辞儀によってうまく光の量を調整することができるのです。
子どもの頃にただ面白いと思っていたお辞儀は、実はオジギソウが生き延びるために編み出した自己防衛手段だったのです。
このようになんとなく日常で触れていた植物の性質にも、調べてみるときちんとした理由が隠されています。まだまだ研究の途中のものも多く、このような植物の生態や性質、行動をもっと知りたいと思うのであれば「農学」の門を叩いてみましょう。
【出典】
・朝日新聞
http://www.asahi.com/shimbun/nie/tamate/kiji/20121023.html
・日本植物生理学会
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=821
・at homeこだわりアカデミー
https://www.athome-academy.jp/archive/biology/0000000114_all.html
この記事のテーマ
「農学・水産学・生物」を解説
私たちはほかの生物から栄養をもらって生活をしています。しかも、採集や狩猟だけではなく、食物を生産するという手段を得て、今日のように繁栄しました。人口増加や環境悪化などに対応し、将来的に安定した食料の確保を維持するためには、農業、林業、水産業などの生産技術の向上が必要です。さらに突き詰めて考えれば、動植物や微生物などの多様な生物に対する研究も重要です。自然との共生が大きなテーマになる学問です。
この記事で取り上げた
「農学」
はこんな学問です
品種の改良や病害虫対策をはじめとする栽培技術、事業として継続させるための農業経営、行政による支援のあり方を問う農業政策などを通じて、人と自然の共生のための方法を研究する学問である。研究分野は広く、食料としての生物を環境にマイナスの影響を与えることなく継続的に確保する方法を研究する「資源生物科学」、食品・農業・化学工業などの生物活用現場で起こる問題をバイオ技術によって解決する「応用生命科学」などがある。