外敵から身を守るだけ? 植物がトゲを持つ理由とは

秋の味覚の代表ともいえるクリ。クリは収穫時にトゲのあるイガを取り除かなければなりません。ところでなぜクリはトゲだらけのイガの中にあるのでしょうか? 美味しい中身(クリ)を外敵に食べられないようにするためだと考えてしまいそうですが、実はそうでもないようです。
この記事をまとめると
- トゲを持っているさまざまな植物たち
- 外敵から身を守る以外のトゲの役割とは?
- 植物のトゲには未知の部分も
「トゲがある植物」として思いつく植物は?
クリは実の部分がイガと呼ばれるトゲの密集したものにくるまれています。他に身近な植物でトゲを持つものといえばバラ・サボテンといったものを思いつくでしょう。植物に詳しい人ならアザミといった春先の植物も思い出すでしょう。
しかしわれわれ人間からすれば、おいしい・美しい・かわいいと思えるものに限って、なぜトゲがついているのだろう? とつくづく思ってしまいます。「美しい物にはトゲがある」という言葉も存在するぐらいです。
私たち人間以外にも鳥・動物、さらに昆虫といった外敵もいます。そのため、どうしてもこういった外敵から身を守るための手段としてトゲを持ったのだ……と考えてしまいそうですよね。しかしトゲの役割は外敵から身を守るためだけではありません。
植物がトゲを持っているその理由とは?
植物がトゲを持っている理由は、外敵から身を守る以外に植物内の水分の蒸発を防ぐという大切な働きがあります。
例えばサボテンの場合、茎が直射日光によってダメージを受けないようにトゲを持つようになったと考えられています。サボテンが外敵や水分の蒸発を防ぐために持ったトゲは痛々しい感じもしますが美しい文様を思わせるようなトゲもあって、見る人を楽しませてくれる一面もあります。
また花屋さんの中には、バラの茎にあるトゲを取ってくれている場合もあります。しかしバラの品質を第一に考えているところは、「トゲを取る=茎を傷つけてしまう」ということになると考えて、バラのトゲをそのままにしています。また水分の蒸発を防ぐ以外にも、トゲを持つことで他の植物などに絡みやすくなるといったメリットも持っています。
クリのイガにまつわる謎
サボテンやバラといった植物は、外敵・水分の蒸発を予防することが主な理由ですが、クリの場合はどうでしょうか。クリは実の部分に当たるので、主に外敵から中身を守るためだと考えられます。しかし実が熟すことでイガは割れて、中のクリは姿を現します。当然そこで動物や人間に見つかって食べられてしまうのですから、イガを持つ理由は動物・人間から守るためではない可能性があります。
クリのイガの役割についてはまだ解明されておらず謎が残っていますが、現在のところ一番有力なのは「虫」です。ただし、クリの下ごしらえをしていると、中に小さな虫が入っていることがあります。あのイガという壁を突破して、クリの実に卵を産み付けているのはゾウムシの一種です。またクリイガアブラムシ・クリミガといった虫もクリに卵を産み付けます。こういった虫が侵入してしまうのであれば、イガはあまり役立たないようにも見えますが、逆にイガがなかったらもっと多くの虫のターゲットになっているのかもしれません。
ちなみに、バラに関しては品種改良されたものが多く存在しており、中にはトゲのないバラもあります。同じようにクリも品種改良して、トゲのないイガのクリを作ったら、イガの本当の役割が判明するかもしれません。もしこの謎に本気でチャレンジしてみたいと思ったら、農学の分野に進んでみてはいかがでしょうか? イガの秘密を解明できるかもしれませんよ。
【出典】
NHK
http://www.nhk.or.jp/lifestyle/article/detail/00449.html
一般社団法人 日本植物生理学会
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2139
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=812&key=&target=
島根県
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/gijutsu/nougyo_tech/byougaityuu/byougaityuu-index/kuri/ma160.html
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/gijutsu/nougyo_tech/byougaityuu/byougaityuu-index/kuri/ma162.html
ローズガーデン徳島
http://www.rose-garden-tokushima.co.jp/question.html
この記事のテーマ
「農学・水産学・生物」を解説
私たちはほかの生物から栄養をもらって生活をしています。しかも、採集や狩猟だけではなく、食物を生産するという手段を得て、今日のように繁栄しました。人口増加や環境悪化などに対応し、将来的に安定した食料の確保を維持するためには、農業、林業、水産業などの生産技術の向上が必要です。さらに突き詰めて考えれば、動植物や微生物などの多様な生物に対する研究も重要です。自然との共生が大きなテーマになる学問です。
この記事で取り上げた
「農学」
はこんな学問です
品種の改良や病害虫対策をはじめとする栽培技術、事業として継続させるための農業経営、行政による支援のあり方を問う農業政策などを通じて、人と自然の共生のための方法を研究する学問である。研究分野は広く、食料としての生物を環境にマイナスの影響を与えることなく継続的に確保する方法を研究する「資源生物科学」、食品・農業・化学工業などの生物活用現場で起こる問題をバイオ技術によって解決する「応用生命科学」などがある。
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