【シゴトを知ろう】データサイエンティスト ~番外編~

ビッグデータのような膨大なデータを分析し、企業のサービスとして成り立つものを新しく生み出す手助けをするデータサイエンティスト。現在企業でデータサイエンティストとして活躍されている奥田裕樹さんに、データサイエンティストならではの考え方、今後の目標、そしてデータサイエンティストのためのコンペティション「Kaggle(カグル)」についてお話いただきました。
この記事をまとめると
- データサイエンティストの能力を競う世界的な大会がある
- 多くのデータサイエンティストは、シンギュラリティな世界は当分来ないと思っている
- データを扱う仕事は今後もなくならない
データサイエンティストの競技会「Kaggle」って何?
―― 立てた仮説が空振りに終わることもあるという話がありましたが、かなりの確率であるんですか?
往々にしてあります。立てた仮説が百発百中というのは、どんなデータサイエンティストでも不可能だと思います。ただ私はこけてもただでは立ち上がらないという意味で、空振りに終わった仮説でも次のステップに生かすという気持ちでいます。
―― 気持ちが折れたりすることはありませんか?
そもそも私は、分析すること自体が楽しいんです。ただ希望を持ってずっと続けていく折れない心は必要かなと思います。
また弊社のデータサイエンティストの多くは、いかに優れたデータサイエンティストかを争う、分析の競技会「Kaggle(カグル)」に取り組んでいます。Kaggleで上位になることでデータサイエンティストとしての能力を示すことができるので、モチベーションが上がります。
―― Kaggleでは具体的にどんなことをするのですか?
お題が与えられて、それに対して一番筋のいい分析結果を出した人が勝ちます。自分の分析結果に対して客観的に「あなたは何位ですよ」と言われるので、業務に近くて競技性がある、ゲームのようなものです。
自分の技術を磨いたりノウハウを共有したりしているので、実際に参加している人の分析結果を見て実際の業務に活かしたり、逆に業務でやっていることをKaggleで試すこともあります。
個人でも企業単位でも参加できるので、世界中のデータサイエンティストが参加しています。年齢制限はなく、実はトップ100に英国の16歳の少年が入っています。幼い頃からテクノロジーに触れて育った若い世代の子たちには、私たちも戦々恐々としています(笑)。
機械に仕事を奪われる時代は来ない!?
――データサイエンティストの中の、あるある話はありますか?
「シンギュラリティ」という言葉はご存知でしょうか? いつか機械が人間の知性を超えて、人間の生活に大きな変化が起きるのではという概念です。いわゆるSF映画で機械が反乱を起こすシーンがあったりしますが、機械が人間を支配するんじゃないかという誇大妄想を言ったり煽ったりする記事を見かけると、私たちデータサイエンティストは「そんなものはまだまだ来ないだろう。先の出来事だ」と思っています。こういう話は半ばフィクションだととらえて、わりと冷静な気持ちで記事を読んだりしています。
―― データサイエンティストであれば、皆さん同じような考えなのですか?
誰も将来を予測することなど当然できないので一概には言えませんが、実際に私たちのような業務をしていると、コンピュータやAIの能力を正しく判断できる人が多いと思います。
100年200年経ったら分かりませんが、今できることとできないことは限られています。最近だったら、将棋で機械が人間に勝つという出来事がありました。そういうニュースがあると機械が勝手に知能を持つのではないかと思う人がいますが、将棋を指せることと人間のような知性を機械が持つということは全く別物なのです。
もう一つ、機械が人間の仕事を奪うという話がありますが、過去をさかのぼって産業革命のときに蒸気機関が出てきたからといって、人間の仕事がなくなりのんびり暮らせるようになったかというとそうではありませんでした。機械が人間の仕事を代替するようになったとしても、人間がクリエイティビティを発揮したり新しいものを考えたりする行為はなくならないと思うので、全ての人の仕事が無くなって失業するという未来は訪れないのではないでしょうか。
データを分析する仕事にずっと関わっていきたい
―― 今後の目標を教えてください。
データサイエンスという言葉は最近出てきたという話をしましたが、今後データサイエンティストという職業がずっと続くかどうかは、私たちも分かりません。でもデータを扱うことで新しいものを作り上げていく職業はなくならないと思うので、そういう分野には携わっていきたいと思います。
将来人間の仕事が機械に奪われるかもしれないというのは最近よく聞く話ですが、データサイエンティストとして仕事をしている人にとっては、あまり現実的でない考え方だというのは、とても興味深いお話でした。
何をするにも分析をしてしまう、数字が好きという人はデータサイエンティストに向いているかもしれません。まだ誰も見つけたことがない新たな発見をするためにデータサイエンティストの仕事に就くことも将来の選択肢の一つかもしれませんね。
【profile】Sansan株式会社 Data Strategy & Operation Center
R&D Group 研究員 奥田 裕樹
この記事のテーマ
「コンピュータ・Web・ゲーム」を解説
デジタル情報をつなぐシステム構築をはじめ、Webやゲーム、アニメーション、映画など、メディアやコンテンツを創り出す仕事です。コンピュータの設計・開発などを学ぶ情報処理系、アニメ・ゲームなどの制作を学ぶコンテンツ系の学問があります。ビジネスの現場で使われるアプリケーションスキルを身につける授業も役立ちます。
この記事で取り上げた
「そのほかのコンピュータ・Web・ゲーム系の職業」
はこんな仕事です
パソコンやインターネット、ゲームなど、情報技術の進化によって生み出されたサービスや製品は、今や現代人の生活に欠かせないものとなっている。これらは人の暮らしを良くするだけでなく、生産、流通、医療、教育など、さまざまな分野の企業や機関の運営を支え、職種も多様に細分化されていることが多い。例えば情報システムを総合的に監査する「システム監査技術者」や、管理やセキュリティーの知識を持ち個人情報の管理をする「個人情報保護士」など、かつてない職種が続々と誕生し、重要視されつつある。
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PICK UP! 「そのほかのコンピュータ・Web・ゲーム系の職業」について学べる学校
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