音で火を消す消火器が登場!? いったいどうやるの?

火事が起きた時に火を消す手段としては、消防車による水や消火器による粉末の噴射が一般的です。ですが、この度アメリカの大学生が全く新しい手法を用いた消火器を開発しました。いったいどのようなものなのでしょうか。
この記事をまとめると
- 音波を使う消火器がアメリカで開発された
- 音波による空気の振動で空気をかき乱し、酸素を火に触れさせないようにして消火する
- 物理学の性質を工学に応用して新しい技術やものを開発するのは「応用物理学」の分野
音で火を消す!? アメリカの学生が開発した画期的な「音波消火器」
家で火事が起きた時に、初期消火として利用されるのが「消火器」です。日本の消火器は、基本的に容器の中に詰められた粉末の消火薬剤をガスで噴射させる仕組みです。他にも水や泡など消火の方法はいくつかあります。
しかし、これらの方法は消火後に残留物が四方八方に飛び散り、片付けが大変だったり建物などへのダメージが大きかったりと課題も存在します。そんな中、これらの課題を解決する全く新しい消火器がアメリカで開発されました。それが「音波消火器」です。これは火元にスピーカーを向けてブーンという重低音を当てることによって火を消す仕組みです。
音波による空気の振動によって酸素と火を触れさせないようにして消火する技術
音波消火器で利用されているのは、最も基本的な「音が伝わる原理」です。音を発生させたものの振動が「空気の振動の波」となって音が離れた場所に伝わるという音の性質を応用したのです。
音波消火器には大型スピーカーがついた筒がついており、これを火元に向け、重低音の音を発することで空気に一定の振動を与えます。そうすることで炎の周囲の空気をかき乱し、燃焼が盛んに起きている境界層を薄くします。そして火が燃える要素の一つである空気中の酸素を火と触れさせないようにすることで消火につなげるという仕組みです。音波は重力の影響を受けないので、宇宙空間での消火への活用も期待されます。
まだまだ新技術の可能性が隠されている「音」の性質
音波消火器は音が空気の振動で伝わるという性質を応用して作られましたが、他にも音には新たな技術開発につながる面白い性質がまだまだあります。しかし、音を利用した発明や技術開発は意外と少なく、無限の可能性が秘められているのです。
音の振動は調節が可能で、火の勢いを強めることもできますし、音の振動は物体を動かしたり浮かせたりすることも可能です。現に超音波を使って物体を浮遊させ、3次元的に動かすことができる手法を開発している大学もあります。
このように物理学の性質を工学に応用して新しい技術やものを研究開発する学問を「応用物理学」といいます。音の性質の面白さや物理の性質を使って面白い技術を開発してみたいという人はぜひ学んでみてはいかがでしょうか?
【出典】
・CNN
https://www.cnn.co.jp/fringe/35062412-2.html
・HUFFPOST
https://www.huffingtonpost.jp/engadget-japan/fire-extinguisher_b_6982932.html
・BBC
https://www.bbc.com/news/technology-18870258
・WIRED
https://wired.jp/2014/01/07/whoa-watch-scientists-control-levitating-beads-with-sound-waves/
この記事のテーマ
「工学・建築」を解説
工業技術や建築技術の発達は、私たちの生活を快適で安全なものに変えてきました。先人たちが生み出した知恵に新しい技術をプラスすることで、技術はいまも進歩し続けています。インフラの整備や災害に強い街作り、エネルギー効率の高い動力機械やロボット開発など、暮らしを豊かにする先端技術を学びます。
この記事で取り上げた
「応用物理学」
はこんな学問です
物理現象を研究して解明された理論を工学に応用して技術進歩を図る学問。物理学だけではなく、電気工学、電子工学など理工学との複合的な研究が行われる。領域は、物質の性質を電子回路などの開発に応用する「エレクトロニクス分野」や、物理の観点から電気、磁気やミクロの量子エネルギーの解析を行う「磁性・超伝導分野」「量子工学・量子力学分野」など。バイオ分野でも応用されることが多く、その成果の社会的影響は大きいといえる。
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