努力した記憶は将来に生きる! 競泳・小坂悠真さんインタビュー
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高校生の頃から日本代表に選出され、2年生のインターハイでは総合優勝も経験している小坂さん。高校生の頃は、単純になりがちな練習を「いかに楽しくするか」についてよく考えていたといいます。そんな小坂さんに、インターハイの思い出から勝つための努力まで、高校時代の思い出を語っていただきました。
この記事をまとめると
- 「つまらない練習を楽しくする工夫」は大人になっても役立つ
- 3年のインターハイは、記憶が抜け落ちるくらいつらい思い出
- 高校生には今の経験を全て記録し、記憶しておいてほしい
つらすぎて記憶が落ち、思い出すことができない3年時のインターハイ
― 高校生の頃は、どのような生徒でしたか?
高校の部活と外のクラブチーム(コナミ)の両方に所属して、練習は基本的にクラブチームの方に参加していました。朝練はせず、学校が終わったら一度帰宅して、軽食を食べてからクラブチームのプールに直行。1時間くらい腹筋やスクワットなどの陸トレをしてから、7時から2時間水中トレーニングをするという流れでしたね。他の選手に比べると練習時間は短かったですが、質の高い練習をしていたと思います。
食べ物に非常に気を遣うタイプとそうでないタイプがいましたが、僕は完全に後者で、特に気にしていませんでした(笑)。ただ練習後は1〜1.5kgくらい体重が落ちてしまうので、痩せないようには気をつけていました。勉強はあまり苦労した記憶がなくて、オール5を取ったこともありました。もともと勉強はそんなに嫌いじゃないのと、体育コースだったので授業のスピードがさほど早くなかったこともあり、授業の内容より先の教科書を読んだりしていましたね。
― インターハイでの思い出はありますか?
僕は高校1年から3年間出られたんですが、2年生のときに200m個人メドレーと400mフリーリレーと800mフリーリレーで優勝して、さらに学校対抗でも総合優勝したんです。学校単位で仲間と一緒に優勝できたのは本当に嬉しさのピークで、最高に盛り上がりました。
でも高校最後の3年の時は、同じタイミングで開催された世界競泳の代表に同級生だった立石諒くんと葛原俊輔くんが入ってしまって、インターハイには一緒に出場できなくなりました。僕としては代表に自分は選ばれず、しかもキャプテン代理も急遽務めることになって……前年とは打って変わってかなり複雑な気持ちでしたね。全く記憶にありませんが、ポジティブな自分がリレーの前に「泳ぎたくない」って仲間に愚痴っていたらしいです(笑)。結局200m個人メドレーは2連覇し、400mメドレーリレーでは優勝しましたが、学校対抗では優勝できずに終わりました。その経験がつらすぎたせいか、実は3年のインターハイの記憶がごっそり僕の中から抜け落ちているんですよ。だから僕にとってのインターハイは、2年の総合優勝の嬉しさと3年生のときのぽっかり空いた穴とのコントラストが非常に強い、自分史に残る大きな出来事です。
自分の工夫次第で楽しく変えられる「箱の中の練習」
― 高校時代、勝つために努力していたことはありますか?
水泳の練習は、あの四角い箱(プ―ル)に入って何時間も泳ぎ続けるという非常に忍耐力を求められるもので、なおかつ僕自身が大の練習嫌いということもあり……。だからこそ「練習をいかに楽しくやるか」は、かなり熱心に考えていました。例えば100mを普通に泳ぐだけじゃなく、ストローク数を数えたり変えたりしながら、タイムとの兼ね合いを見たり、イアン・ソープ選手の手先のフォームを真似てみたりしていました。
陸トレでも効果があると聞いたことは取り入れて、代表合宿で交流する他のクラブの選手の練習を「何やってるの?」と聞いて教えてもらったり……闇雲に頑張るだけじゃなく、どうしたら楽しく効果的に練習できるかにかなり頭を使っていたと思います。
― 高校時代の経験が、その後の競技人生にどんな影響を与えたと思いますか?
日々頑張らなければいけないこと、例えばつまらない練習やコツコツやる仕事に意味を持たせて、前向きになることを学んだと思います。仕事をするようになっても、電話で営業したりデータを打ち込んだり、楽しくない仕事ってたくさんあるんですが、何か自分で目標を設定して、それをクリアしていく楽しみに変えられるようになりました。
また3年生のインターハイでの記憶がごっそり抜け落ちていると言いましたが、その後に経験した大変なこともつらいことも、「あの時に比べたら全然マシ」と思えるので、精神的にタフになったと思います。
― 高校生に向けて、メッセージをお願いします。
いま頑張っていること、それをできる限り記録や記憶に残しておくと良いです。今ならスマホで撮影も録画も簡単ですしね。僕は「つらかった」という気持ちが強すぎたせいか、3年の総体のことを覚えていなくて、本当に勿体無いことをしたと思っています。あの経験から学べることは山ほどあったと思うし、飲み会のネタにもできたし(笑)、絶対に人生が豊かになったはずなのに。後悔してもし切れないです。
もし、動画などが残っていたら、消したくなるような恥ずかしい部分も出てくるでしょうけど、周囲の人が自分にこんなことを言ってくれたとか、見えていなかったけどこんなことがあったとか、今の自分にプラスになることが山ほどあったはず。
思い出したいことがたくさんあるのに、全く思い出せない。そんな空白の時代を自分の人生に作ってしまうのは、本当に勿体無い。どんな経験であっても思い出せるように記録に残し、自分の「次」に生かしてください。
「どんなにつらい思い出でも、記録し記憶することが本当に大切」と話してくれた小坂選手。頑張っている高校生たちに後悔してほしくないと、自分を丸裸にして経験を語ってくれました。どんなに地道なことでも「目標設定してクリアする」ことを楽しめるようになったら、人生にこんな心強いことはありません。小坂さんの話に何気なく隠れていたさまざまなヒントとアドバイスを、将来の仕事にも生かしたいですね!
【Profile】競泳元日本代表 小坂悠真