【シゴトを知ろう】カーデザイナー 編
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まだ運転免許を持っていない高校生の皆さんでも、「あの車、かっこいい!」「この車、乗り心地がいいな」と感じた経験を持つ人は多いのではないでしょうか。車を見たり、車に乗ったりする楽しさは、カーデザイナーの存在があるからこそ味わえるものです。
カーデザイナーの仕事のやりがいやどのような人が向いているかなどについて、トヨタ自動車株式会社に勤める木村大地さんにお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 自分が携わった車が会場で発表される時の喜びは何ものにも代え難い
- 車雑誌に掲載されていたデザインスケッチに衝撃を受けた
- カーデザイナーは人々の心を豊かにする仕事
車のデザインは多くのセクションが力を合わせてできている
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
現在は、レクサスインターナショナルのレクサスデザイン部でカーデザインの仕事をしています。カーデザインといっても、エクステリア(車の外形)やインテリア(車の内装)、カラー、トリム(車内の内張り)、車内外の部品、ホイールといったコンポーネントデザインの他、最近重要になってきているユーザーインターフェース(*1)などいろいろなセクションに分かれていて、私はエクステリア(車の外形)を創り出す仕事をしています。それぞれのセクションにいるデザインのプロフェッショナルが連携して、車全体のデザインを決めていきます。
*1 ユーザーインターフェース:人間の指示・コンピューターからの出力結果を相互に伝えるためのソフトウエアやハードウエアの総称。
<ある一日のスケジュール>
08:30 出社、デザインのスケッチ、車のコンセプト考案
09:00 デザインチームでミーティング
11:00 エンジニアや生産部などとディスカッション
12:00 昼食
13:00 エクステリア担当とインテリア担当のメンバーでミーティング
15:00 モデラー(立体的な模型を作る人)やCAD(*2)オペレーターと一緒に車の外形をクレイ(工業用粘土)で作成
17:30 退社
※退社は19~22時過ぎになることもある。
*2 CAD:Computer-Aided Designの略。製図やデザイン画、設計図など作るために用いるコンピューターシステムやソフトウェアのこと。
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
自分が手がけた作品が世に出た時の喜びや感動は何ものにも代え難いです。自動車の開発には数年かかるものもあり、デザイナーはもちろん、さまざまな部署の多くの人が知恵とアイデアを絞って関わりながら進めていきます。自動車が完成して世に出た時には関わった全員で喜びを分かち合い、格別な感動があります。
例えば、2017年1月に開催されたCES 2017(*3)では私がエクステリアデザインを担当した「TOYOTA CONCEPT-愛i」という車が発表されました。これはアメリカに赴任していた時に携わった車です。会場で発表の瞬間にベールが取られて車が披露され、私もステージ上に出てカメラのフラッシュを一斉に浴びた時は、「頑張って来て良かったなぁ」と思いました。
デザインに携わった日本とアメリカのメンバー、自動運転やAIといった技術開発をしている人たちともコラボレーションしたので、携わった人たちが皆その場で喜びを分かち合う瞬間は非常にやりがいを感じます。
*3 CES (コンシューマー・エレクトロニクス・ショー):毎年1月にアメリカのラスベガスで開催される世界最大級の家電やエレクトロニクス技術の見本市。近年は自動車メーカーの参加も増え、AI搭載のコンセプトカーや次世代の電気自動車などを発表するのが恒例。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
つらいことはありませんが、大変なことはあります。自動車のデザインは、デザイナーの考えをそのまま形にすれば完成するわけではありません。さまざまな安全基準や自動車に関する法規を守る必要がありますし、空気力学などの性能に関わる部分や生産するに当たっての要件が複雑に絡み合う中で、製品として完成に近づけていく作業になるからです。
覚えなければならないこともたくさんあり、日々勉強です。法規的なものや要求される性能などは日進月歩で進んでいくので、それらを常に頭に入れながら絵を描いたり、クリエーションをしたりするのが大変なところです。
夢を実現するため、進学先は自分の目で見て慎重に選んだ
Q4. どのようなきっかけ・経緯でこの仕事に就きましたか?
小さい頃から電車や車が好きで、将来は乗り物に関わる仕事ができたらいいなと考えていました。ある日、本屋で自動車雑誌を見た時にカーデザインのスケッチが載っていて、「すごくカッコいい!」と深い衝撃を受けたんです。それで、自分もいつかこのようなデザインが描けるようになりたいと思いました。
その思いが次第に強くなり、職業としてカーデザイナーを目指すことを決め、学校説明会や体験授業などに何度も参加して、高校卒業後にデザインの専門学校に進学しました。そこで3年間学び、卒業してからデザイナーとしてトヨタ自動車に就職しました。
Q5. 専門学校では何を学びましたか?
私が通っていたのはカーデザインのための専門学校で、講師の多くは実際に国内外の自動車メーカーでデザイナーとして活躍していた方々でした。1年生の時にカーデザインの基礎をみっちりと学び、3年生になってからは実際に自分がデザインをして5分の1サイズの車を作りました。車のデザインの方法やプレゼンテーションの方法、英語によるコミュニケーションについても、かなり実践的なレベルで学ぶことができました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
カーデザイナーを目指すという明確な目標を持ったのは高校生のときです。どうすればカーデザイナーになれるのかについていろいろと調べて、カーデザインの専門学校に見学に行ったり体験授業を受けたりしました。
ある専門学校の体験授業では、実際にクレイモデル(工業用粘土で作る車の模型)を削ったりカーデザインのスケッチをしたりと、夢であるカーデザイナーの仕事を体験することができたので何度も通いました(笑)。
その後、専門学校卒業後はカーデザイナーとして働いているので、高校生のときの思いが今につながっています。
車好きで、仲間をリードできる人が向いている
Q7. どういう人がカーデザイナーに向いていると思いますか?
一言で言うなら、車が好きな人が向いています。情熱を注げる対象が自分の好きなものであることは理想的ですし、それを一生の仕事にできることはとても幸せだと思います。
あとは、いろいろな考えを持った人がデザインや開発に関わってくるので、自分の考えややりたいことなどをシンプルに伝えて、一緒に働く仲間をリードできる人ですね。仲間を導ける力や情熱がある人がふさわしいと思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
車は、機能だけを見れば人の生活を豊かにするものです。そこにカーデザイナーがいいデザインをすることで、その人のライフスタイルが彩られ心を豊かにできます。興味がある人は、ぜひカーデザインについて調べてみてください。その過程で「カーデザイナーって楽しそうだな」と興味を持つことができれば、カーデザイナーになる第一歩を踏み出したことになると思います。
車をデザインする仕事には、外見だけではなく、内装やパーツなどさまざまな領域があります。決して一人の力ではなく、多くのデザイナーたちの力によって1台の車が生まれるため、協力し合い仲間を導く力も必要な世界のようです。
自分が絞り出したアイデアが形になり、人々の生活を豊かにできるとてもやりがいのある仕事です。車に興味がありクリエイティブな仕事をしたい人は、カーデザイナーを目指してみてはいかがでしょうか。
【profile】トヨタ自動車株式会社 レクサスデザイン部 木村大地
トヨタ自動車株式会社 http://www.toyota.co.jp/
写真提供:(3枚目)トヨタ自動車
この記事のテーマ
「自動車・航空・船舶・鉄道・宇宙」を解説
陸・海・空の交通や物流に関わる仕事です。自動車や飛行機、船舶、鉄道車両などの整備・保守や設計・開発、製造ラインや安全の管理、乗客サービスなど、身につけるべき知識や技術は職業によってさまざま。宇宙分野に関しては、気象観測や通信を支える衛星に関わる仕事の技術などを学びます。
この記事で取り上げた
「カーデザイナー」
はこんな仕事です
自動車の外装、内装、色、素材などのアイデアを出し、デザインする仕事。企画職や技術職のスタッフと一緒に、マーケティング理論や市場動向に基づき、コンセプトを立案。見た目の美しさだけでなく利便性や安全性など、機能面についても考えなくてはならない。自動車のイメージが決まったら、CADなどを使ってデザイン制作を進めていく。発想力や柔軟な思考力が問われ、工業デザインの知識が必要とされる。工業デザイン事務所や自動車メーカーに就職するケースが一般的だ。
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