日本人が「すみません」って言いがちなのは、どうして?

「あ~、どうもすみません!」
「すみませんね、うちの子が……。」
幅広いシーンに活用することが可能で、とても便利な日本語、「どうも」や「すみません」。多くの日本人が、何気なく、そして癖のように使っているため、海外の人が比較的早く覚える日本語の一つでもあるようです。今回は、これらの言葉について勉強してみましょう。
この記事をまとめると
- 「どうも」や「すみません」という言葉の成り立ちや正確な意味を知ろう
- 「すみません」の一言で、さまざまな考察が可能
- 情報化、グローバル化時代の今だからこそ注目される「比較文化学」とは
何気なく使っている、「どうも」、「すみません」の語源とは?
ある程度親しい間柄において、また、気兼ねなく使用する挨拶の言葉としても用いられることが多い一言、「どうも」。「こんにちは」「こんばんは」「さようなら」「はじめまして」「よろしくお願いします」他、あらゆるシーンで活用できる挨拶の言葉として非常に便利ですよね。
この「どうも」は“何とも言いようがない”という意味の“どうも言えぬ”から生まれた、と言われています。それが“すごく”、“たいへん”などの、いわゆる程度をあらわす言葉となり、さまざまな挨拶の前につけて使われるようになりました。そしてだんだんと、それらの挨拶の言葉の部分が省略されるようになり、最終的に現在の「どうも」となったのです。
一方、「すみません」は“すむ”という動詞から生まれた言葉。“すむ”は漢字で書くと“済む”となりますが、実はそれだけではなく“澄む”という意味も兼ねていて、自分の気持ちが収まることをあらわす言葉でもあります。つまり「すみません」とは、“それでは自分の気持ちが収まりません”という気持ちをあらわしている言葉。よって、御礼にも謝罪にも使用できるのです。
海外の人たちは皆、「日本人=すみません」と思っている!?
「すみません」は、御礼・謝罪だけではなく、他者への呼びかけにも使われますよね。これには、“邪魔をしてしまい、申し訳ありません”という自責の念からくる謝罪の意味も込められていると考えられます。
さて、そんな 「すみません」ですが、海外の方は、どう思っているのでしょうか? イタリア人の「すみません」に対するイメージを例に見てみましょう。
協調することを重んじ、その場をとりあえず丸くおさめるために「すみません」と発したり、ただ単に無用と思われるいさかいを一早く終息させたい場合などにも、私たち日本人はこの言葉を使いがちですよね。しかし、イタリア人にとって、謝らなくてもいいことに対して謝罪することは、かえって問題を大きくすること、謝罪する側の損害を大きくするだけの愚行である、と考えているようです。企業の不正疑惑や有名人の不祥事が発覚した際、「誠に申し訳ございませんでした」と深々と頭を下げるシーンが連日報じられている日本。これも“とにかく、まずは「すみません」”という日本独自の文化が色濃く出ている行動ですが、イタリア人からすれば、理解不能な行動でしかないとのこと。
また、人に何かをしてもらったときも、日本人はお礼の意味で「すみません」という言葉を使うことがありますよね。反射的にこの言葉が出てしまう人も少なくないかと思いますが、イタリア人から見ると、“人に感謝の意をあらわすシチュエーションにおいて、どうして「すみません」なのか?”と思われてしまっているようです。
グローバル化時代に必要とされる、“比較文化学”とは?
幅広い場面で活用でき、人を不快にさせず、ときには悪い空気を断ち切ることにも使える日本人にとっては便利な言葉「すみません」。主に、“謝罪”、“感謝”、“依頼や呼びかけ”と3つの用途で活用でき、私たちの日常生活に深く根付いた言葉です。しかし、育った環境・文化が違うイタリア人にとっては、直訳しても意味が通らず“曖昧で分かりづらい”言葉のようです。
ちなみに、英語の“Excuse me.”は、“呼びかけ”、“謝罪”両方に活用できる言葉です。“Excuse me.”は、日本語の「すみません」と同様にさまざまな形で使用できる便利な言葉なのです。イタリアと同じヨーロッパ圏発祥の言語ですが、英語にはこういった言葉があることもおもしろいですね。
世界基準では、私たちが常識と思っていたことが実はそうでなかったということがたくさんあります。そんななか、国や民族ごとの異なる文化を比較しながら相互理解を深める基盤を作り上げていくことに直結している学問が「比較文化学」。皆さんも外国人とコミュニケーションをとるときは、「自分の常識が相手の常識ではない」ことを意識してみるとよいかもしれませんね。
【出典】
ITメディアビジネス・オンライン|なぜ、日本人はすぐに「すみません」と言うのか
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1303/28/news006.html
東洋経済オンライン|「すみません」という日本語が示す3つの意味
https://toyokeizai.net/articles/-/140791
LATTE / TRAVEL|イタリア人から見た「日本人のここがヘン!」現地民が教える海外の反応シリーズ
https://latte.la/column/94531576
この記事のテーマ
「文学・歴史・地理」を解説
文学は人々の暮らしや感情の変化などについて、文章表現をもとに考える学問です。文献を読み解きながら比較して、人のあり方や社会について研究します。地理学や歴史学は、地形や気候、歴史的事実や遺物・遺跡などの手がかりをもとに、私たちの生活や文化・経済活動などについて、その成り立ちから考えていきます。
この記事で取り上げた
「比較文化学」
はこんな学問です
グローバル化する世界に対応するため、国や民族ごとに異なる文化を比較しながら、相互に理解し合えるような基盤づくりをめざす学問。比較研究する文化の内容としては、歴史、言葉、芸術、ライフスタイルなどがある。また、他国や多民族の文化を比較研究するには自国の文化を深く知らなければならない。したがって、日本文化についても理解を掘り下げていく。それと同時に、相互理解を図るのに欠かせない外国語の習得など、言語運用能力も磨いていく。
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