【シゴトを知ろう】気象予報士 ~番外編~

お天気キャスターとしてテレビ番組に出演することもある気象予報士。株式会社ウェザーマップの片山美紀さんに、一見華やかに見えるその舞台裏を伺いました。
この記事をまとめると
- お天気キャスターは臨機応変にコメントの長さを調整する
- 台風の接近時は24時間体制で実況監視する
- 天気以外の世間の動向に目を配ることも重要
他のニュースの影響でコメントの長さを調整する
――業界や職務内での、一般人が知らない業界用語はありますか?
予定されている時間よりも遅れたり早まったりすることを、「時間が押す・引く」と表現します。例えば、天気予報のコーナーが始まる前に大きなニュースが入るなど、予定よりもコーナー開始が遅くなり、このことを時間が「押している」と言います。こうしたときは、自分が言おうとしていたコメントを短くして伝えます。
逆に予定よりも開始が早い場合は、「時間が引いている」ことになるため、コメントを長くして伝えなければいけないこともあるんです。このため、自分の中で伝える内容の優先順位をはっきりとさせ、数秒単位でコメントを縮めたり伸ばしたりできる力が必要です。
――臨機応変に対応する力が必要なんですね。
そうですね。その他にも気象予報士と他業界の人で違う感覚で使っている言葉が、「夕方」や「夜遅く」など時間帯を表すものです。
気象予報士がよく「夕方に雨が降るでしょう」などと使う場合の「夕方」は、「午後3時~6時」の間を指しますが、一般的に、午後3時は まだ夕方というには早いという感覚ではないでしょうか? 時間帯の表現は、気象庁で決められた予報用語に沿って使っているんですよ。
台風のときは寝る間もないほど忙しい
――その他、一般の方に言うと驚かれる気象予報士ならではのお話はありますか?
気象予報士は、他業界の方に話すと驚かれる時間に仕事をすることが、しばしばあります。私も以前は朝の3時に出勤し、皆さんが通学する前の時間に天気予報をお伝えしていました。夜は遅くとも8時までには寝ないと睡眠時間を確保できないため、初めはなかなか慣れませんでした。
――3時の出勤は大変ですね!
しかし太陽が昇り、少しずつ明るくなっていく空を眺めながら仕事ができるのは、意外と気持ちのいいものですよ。また、台風が日本列島に接近しているときには、24時間体制で気象予報士が交代しながら実況監視するため、寝る間もないほど忙しくなることがあります。気象災害を防ぐ一助になればと、とにかく全力を尽くしています。
昔に比べて甚大な気象災害が増え、テレビでの詳しい解説を求められるようになったため、早朝や夜遅くに気象予報士が出演する機会が増えたのではないかと思います。
天気以外の知識も周辺情報として生かすことができる
――気象予報士にはどんな性格の方が多いですか?
テレビに出る気象予報士は天気予報だけでなく、天気に関係する周辺の出来事を伝えることもあるためか、好奇心旺盛な人が多いと思います。大雨が続き野菜が高騰しているなど、常に世の中の動きに関心を持ち、自分自身でトピックを見つける力も求められますね。
――天気以外にもいろんなことに目を向けておく必要があるのですね。
私自身は天気以外のことも学ぶのが好きで、読書や人との会話で自分の得た知識が天気の世界にも生かすことができると、とてもやりがいを感じます。また、自分で撮影したお花や空の写真を番組内で紹介し、季節の楽しみ方も提案していますね。
朝3時に出勤したり、時には寝る間もないほど忙しかったり……。華やかなお天気キャスターの舞台裏はかなりタフな現場ということが分かりました。その中で「気象災害を防ぐ一助になればと全力を尽くしています」と語る片山さんからは、気象予報士の仕事に対する強い使命感と誇りを感じました。そのようなお天気キャスターの舞台裏を知っていると、天気予報の見方も変わるかもしれませんね。
【profile】株式会社ウェザーマップ 気象予報士 片山美紀
https://www.weathermap.co.jp/
この記事のテーマ
「環境・自然・バイオ」を解説
エネルギーや環境問題の解決など、自然や環境の調査・研究を通じて、人の未来や暮らしをサポートする仕事です。また自然ガイドなど、海や山の素晴らしさを多くの人に伝える仕事もあります。高い専門性を必要とする仕事なので、職業に応じて専門知識や技術を学び、資格取得や検定合格をめざす必要があります。
この記事で取り上げた
「気象予報士」
はこんな仕事です
多岐にわたる気象観測のデータを基に、天気を予測する仕事。テレビやラジオなどの放送局に所属し、気象キャスターとして活躍したり、民間の気象会社に入社して天気予報を発信したりする。天気だけでなく台風などによる災害が予測される場合は、具体的な避難の目安を説明することも重要な仕事。農業や漁業は特に天気に左右されることが多いため、正確な予報が求められている。例えば、スーパーでは天気予報が生鮮食品の仕入れ量を決める指針になるなど、さまざまな分野で気象予報は必要とされている。