【シゴトを知ろう】水産系研究・技術者 ~番外編~

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【シゴトを知ろう】水産系研究・技術者 ~番外編~

2018.07.04

提供:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】水産系研究・技術者 ~番外編~

あらゆる分野において研究職は存在しています。その中でも、皆さんの食卓においしい水産食品を届けるために研究にいそしむ水産系研究・技術者という職業があります。
神奈川県水産技術センターで研究主任を務める臼井一茂さんに、水産系研究・技術者はどのようにして研究成果を出しているのかについてお話いただきました。

この記事をまとめると

  • これまでに生み出した商品は2,000種類!
  • キャベツを餌として与えておいしいウニの養殖に成功
  • さまざまな海産物を試食したことにより、味覚センサーが敏感になった?

イカの塩辛が持つ「臭み」の原因究明から大ヒット商品が誕生!

国内はもちろん海外で販売される水産加工品の研究も行っている

国内はもちろん海外で販売される水産加工品の研究も行っている

――研究・開発の結果、商品化された製品について教えてください。

これまで国内外合計して2,000種類くらいの水産加工品を世に送り出してきましたが、研究してきた数はその何十倍もあります。研究をして開発しても商品化されるのはわずかです。ましてやヒットするのはほんの一握りですね。

地元の神奈川県で商品化された加工品の一つに、「北条一本ぬきカマス」(通称かます棒)があります。この商品の開発は、5年前の2013年に小田原市の水産関係の団体から当センターに研究の依頼があったことに始まりました。

小田原に来られた方が市内を観光しながら気軽に食べられる、水産物のストリートフードを開発してもらえないかと相談されました。小田原漁港ではマアジやブリなどさまざまな魚が水揚げされ、流通する魚種も300種類にもなります。その中で特に水揚げが多いカマスに着目しました。

大きなカマスは焼き魚やお刺身などに料理される他、特産の干物にも加工されています。特に頭を残した背開きは「小田原開き」といわれ、古くから小田原の名産となっています。しかし、サイズが小さいと途端に利用方法が少なくなります。つまり、小さなカマスはいわゆる未利用・低利用の魚なのです。この小さなカマスを使った加工品が作れないかと考えました。

「小田原の名物となるような食べ物で、観光しながら食べ歩きができる地元の名産品を作りたい」「小田原どん(*)のように食堂で食べられる名産品はあるけれど、魚らしくて食べやすい、手ごろなストリートフードとしての思いから研究をスタートしました。

* 小田原どん:小田原産の食材を使って、伝統工芸品である小田原漆器の器に盛り付けをした各種の丼メニューのこと。


――カマスには骨が多いイメージがあるので歩きながら食べるのは難しそうですが、どのような工夫をされたのでしょうか?

魚で問題になるのは骨なんです。サンドイッチやおにぎりのように気軽に食べられるようにするにはどうしたらいいのかと考えることに一番時間がかかりました。ヒントになったのはタピオカミルクティーを太いストローを刺して飲むのを見たことで、包丁を使わず中骨をスルッと抜く「中骨抜き具」を開発しました。道具といってもとてもシンプルなものでコストもかからないんですよ。2017年にはその道具も商品化されました。

カマスの中骨を抜いて衣をつけ、油で揚げたものが「北条一本ぬきカマス」(通称かます棒)で、現在、高速道路のサービスエリアなどで販売され大変好評をいただいているようです。


――これまでに商品化された水産物の中で、最も印象深いものについて教えてください。

当センターに就職した年に頼まれたイカ塩辛です。イカ塩辛は伝統食で少し癖のある味と独特の香りがあるので、若い女性にも気軽に食べてもらえるよう、味わいがまろやかで生臭くないものを作ってほしいという依頼を受けました。

研究を進めていくと、臭みの原因がイカの肝から出てくる脂であることが分かりました。肝は脂とタンパク質、水でできているので、肝を脱水している時に脂が分離してにおいが出てきます。でも、最初から臭いわけではないので、脂の分離を防ぐようにできないか、脱水時に出てくるにおいを取る方法としてにおいを何かに吸い込ませることはできないかなど試行錯誤を重ねた上でたどり着いたのが、豆腐を作る過程で出てくるおからを利用することでした。

おからを利用するアイデアは、韓国の調理方法から思いついたものです。韓国では牛や豚など内蔵の独特なにおいを処理する方法としておからを使用しています。塩とおからにイカの肝を漬け込んで脱水と熟成を進めると、脂が分離せずイカの風味が柔らかになり臭みだけが取れたんです。これによって、臭みのないイカの塩辛が完成しました。

依頼されたのは小さな加工場でしたが、1年間で数十万個も販売されたそうです。その後、多くの塩辛製造会社からの相談も受け、皆さんが知っている製品にも関わりました。

ウニはキャベツがお好き!? 意外な組み合わせに世間が注目

野菜でウニを育てる?! キャベツウニの研究は現在も進行中

野菜でウニを育てる?! キャベツウニの研究は現在も進行中

――世間の注目を集めた「キャベツウニ」の研究をされているそうですが、どのような研究なのでしょうか?

2017年に発表した通称「キャベツウニ」は、キャベツを食べさせて育てた養殖のムラサキウニのことです。マスコミで紹介されたため取材が殺到しました(笑)。この研究を始めたのは、職場での何気ない会話がきっかけだったんですよ。

私のデスクの隣りに磯焼け対策を行っているグループがあります。磯焼けは神奈川県の三浦半島で大きな問題となっている現象で、アイゴやムラサキウニなどが海藻類を食べ尽くして、サザエやアワビなどの高級な貝類に悪影響を与えているものです。磯焼けになってしまうとムラサキウニ自身も食べる海藻が無くなり身入り(ウニの可食部分)が少なくなってしまい、売り物にならないため獲られず、さらに増えてしまいます。そのため、三浦半島ではムラサキウニが駆除の対象になっていました。

そんな折、「ムラサキウニはなんでも食べるよね」と磯焼け対策を行っているグループのOBが話していたのです。身が入ってないムラサキウニでもしっかりと大きな体をしていますから、餌さえ食べて身が入れば利用できると考えました。そこで、三浦市にある当センターの目の前の海で採れたウニを200匹ほど水槽に入れて、いろいろなものを食べさせてみました。ウニはとにかくいろいろなものを食べるのですが、トウモロコシの皮、マグロの端材、ヨモギなどはあまり食べなかったですね。パンの耳は見向きもしてくれませんでした。最終的にキャベツだけを食べさせていたウニがとてもおいしかったです。

おいしいだけではなく身入りも良く、天然物だとウニの重量の2~3%しか身が入っていないものなのですが、2~3カ月間キャベツを食べさせたウニは平均で12.5%、最大17.3%もの身入りになりました。約6倍ですね。甘味が強く苦みが少ないのが特徴で、市販されていた天然のムラサキウニと変わらないレベルにまで到達していました。

キャベツは三浦半島の特産品なのですが、大きくなりすぎて割れてしまったものや虫食いなどは、食べられるにもかかわらず規格外で流通されない農業残渣(ざんさ)となっていました。その廃棄されるキャベツを有効利用し、駆除対象になっている厄介者のムラサキウニと組み合せることによって、甘味が強く苦みが少ない、そして特有の磯臭さが少ない「ウニ嫌いでも食べられる」と評価されたウニとなりました。厄介者同士をコラボしたら想像以上の素晴らしい結果となりました。

研究のために試食を繰り返し、なんと体重60kg増!

――研究のためとはいえ、さまざまな水産物の試食には大変なこともあるのではないでしょうか?

昔、深海ザメを試食してあたったことがあります。イカの塩辛の研究していた時は、イカの肝だけ何百個も食べたのでつらかったですね。決しておいしいものばかり食べているわけではないんですよ(笑)。
でも、いろいろと食べてみて分析・研究し、苦労の末においしくなる加工方法を見つけると、つらさ以上にやりがいや楽しさを感じます。

大変だったのは、この仕事について3年間で体重が60kgも増えたことです。80kgだった体重が、なんとお相撲さんレベルの140kgになりました。さすがにこれはまずいと思い、数年前から食生活を改善しています。炭酸飲料ではなくウーロン茶や麦茶を飲むようにしたり、食事の際、野菜から食べることで栄養吸収を穏やかにしたりして、100kgくらいにまで体重を減らしました。それでもまだ多いんですけどね(笑)。


――水産関係の研究者生活の中で身に付いた能力にはどんなことがありますか?

未知の水産物をはじめ、とにかくいろいろなものを食べてきたので、うま味以外にもさまざまな味わいを感じる味覚が非常に繊細になりました。

あとは、じんましんの原因となるヒスタミンが感知できるようになりました。ヒスタミンはアレルギー様の食中毒を引き起こす成分ですが、水産物の発酵食品などで水産物に含まれるアミノ酸のヒスチジンから微生物により生成されてしまうものです。


研究は日々試行錯誤の連続です。正解を導き出すためにあらゆる道を模索しなければならず、研究や開発に関わる人の仕事は決して楽ではありません。しかし、自身の研究成果が社会の役に立ち、さらには世間をにぎわせるような大発見につながる魅力を秘めた仕事でもあります。そんな大きな成果につながる水産系研究・技術者に興味がある人は、水産学について学べる学校へ進んでみてはいかがでしょうか。


【profile】神奈川県水産技術センター 企画資源部(企画調整担当)主任研究員 臼井一茂

神奈川県水産技術センター http://www.pref.kanagawa.jp/div/1730/

この記事のテーマ
動物・植物」を解説

ペットなど動物や観賞用の植物に関わり暮らしに潤いを提供する分野、食の供給や環境保全を担う農業・林業・水産業などの分野があります。動物や植物の生態や生育に関する専門知識を身につけ、飼育や栽培など希望する職種に必要な技術を磨きます。盲導犬や警察犬、競走馬、サーカスの猛獣などの調教・訓練や水族館や動物園で働く選択肢もあります。

「動物・植物」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「水産系研究・技術者」
はこんな仕事です

水産資源を調査し、水産業の技術開発をする仕事。水産業関係の企業などで、水産生物を持続的に利用できる管理法や漁業環境の改善について研究。併せて、養殖魚介類の品質改良を進めることで増養殖を、漁法や漁具の研究・開発で漁業技術の効率化を図る。自然環境の変化や乱獲などが原因で漁獲量が減少する近年、安全な水産物を安定供給できるように、水産系研究・技術者が活躍している。民間の企業の他、公務員採用試験に合格すれば、国立の水産研究所や都道府県の水産試験場などで働くこともできる。

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