【シゴトを知ろう】鍵職人 編
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帰宅した際、玄関の鍵を開けようにもどこを探しても鍵が見当たらない…… なんてことになれば誰もが途方に暮れてしまうことでしょう。自宅や車の鍵を紛失してしまうトラブルは後を絶ちません。そんなとき自宅に駆けつけ、鍵の開錠や合鍵の製作、鍵の交換などをスピーディに行うのが「鍵職人」の仕事です。今回は鍵職人として働くSLS株式会社の松本紀幸さんに仕事の内容についてお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 鍵屋の仕事は常に時間との戦いである
- 一人で行動するため気楽な反面、抱える責任も重大である
- 一人前になるためには、車の運転に慣れておくことが大切
難易度の高い鍵の開錠ができるようになり、日々成長を実感
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
仕事の大半は、各家庭の玄関の鍵に関するもので、鍵の交換、修理、開錠のいずれかを行います。家以外になりますと自動車とバイクの鍵製作、比較的年配の方が暮らす家庭では金庫の開錠もよくある依頼です。
当社コールセンターに寄せられたお客さまからの相談、依頼を受け、翌日車で現場に駆けつけるようにしています。平均して1日5~6件のお宅を訪問しています。鍵を紛失されたケースの対処法としては、ピッキングの道具を使って鍵穴の中の状態を把握した上で、車に積んである鍵の製作機を使いその場で合鍵を作ります。
車は会社が用意してくれ、毎朝直行で1件目のお宅に行き、最後の仕事が終わるとそのまま直帰となります。作業の難易度によっては1件あたりの時間がかかってしまい帰りが遅くなることもありますが、9時に始業し18~19時に終わるようにスケジュールを組んでいるため、一般的な会社勤めとあまり変わらないように思います。
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
無事に鍵を開けられたときに、お客さまが「ありがとう」とお礼の言葉をかけてくれることです。この言葉をまた聞きたいために、いつも頑張ろうという気持ちでいられます。
あと近年防犯意識が高まっていることもあり、簡単に開錠できないような防犯性の高い鍵が多く見られるようになりました。そんな難易度の高い鍵を開けられたときはやはりうれしいものです。私はこの仕事を始めて5年目になりますが、経験を積んで開けられる鍵の種類も年々増えてきたので、少しずつではありますが成長できているなと実感しています。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
難易度の高い鍵を開けるのには時間がかかるので、時間が経つほどプレッシャーを感じるところです。同時にお客さまも不安そうな目で見てくるので、余計にあせりがちになります。
どうしても開かない場合、最終的にはお客さまの許可を得て鍵穴を壊すことになります。壊した後は鍵穴の付け替えをしなければならないので、お客さまの出費も増えるので避けたいところではあります。また鍵穴を壊す場合、周囲を傷つけないように注意深く慎重に行わなければならず、これもまた技術的に難しいポイントです。
仕事を選ぶ上で、体を動かすことは外せなかった
Q4. どのようなきっかけ・経緯で鍵職人の仕事に就きましたか?
大学を卒業してからこの会社が2社目になるのですが、手に職があれば将来役に立つと思って転職を決意しました。前の仕事は設計に関する仕事だったのですが、1日中机に座りっぱなしの仕事だった上、常に「まだ終わらないのか、早くしろ」といった視線を受けながら仕事をしていました。
今の仕事ではデスクワークから解放され、車を運転して一人で現場に向かうので、誰からもプレッシャーを受けずに仕事ができているのでとても気楽です(笑)。同時に体も動かす仕事でもあるので、自分に合った職業に巡り合えたなと思っています。
Q5. この仕事に就くために何か学んだことはありますか?
大学は理系の機械科に進みましたが、このころは特に就きたい仕事もなく、大学での勉強が今の仕事に役立っているところは特にありません。ただし大学の4年間、パチンコ屋のホールのアルバイトをしていた経験は役に立っていると思います。
ホール係は接客業なので、社会人になる前に言葉使いをはじめ、いろいろなマナーを身に付けられてよかったと思っています。実は私はとても人見知りだったのですが、接客のアルバイトの経験があったからこそ、今の仕事で各家庭を訪問したとき、お客さまと円滑にコミュニケーションが図れるようになれたのだと思います。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
小学生の頃に野球を始めたので、ずっとプロ野球選手になりたいという夢はありました。中学生までは野球を続けていたのですが、高校生になると坊主頭になるのが嫌だったので野球部には入らなかったんです(笑)。その後はサッカーに興味が移り、何かスポーツに関する仕事に就きたいと思っていた時期はありました。
結局その夢は実現しませんでしたが、一連のスポーツを通じて運動することの大切さは常に意識するようになりました。前の会社を辞めたのも、健康面に不安を感じたことが理由の一つですし、今は同じ会社の仲間と休日にハイキングや登山をするなど、十分に体を動かす機会に恵まれていると思います。
インターネットやホームセンターなど身近な場所でも知識を吸収できる
Q7. どういう人が鍵職人の仕事に向いていると思いますか?
個人的には褒められて伸びる人ではないかと思います。私自身もそういうタイプですし、お客さまからの感謝の言葉はきっとその人の力になると思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
高校生の頃からいきなり鍵職人になりたいという人はあまりいないかもしれませんが、鍵に興味があるのなら、インターネットの動画サイトでピッキングのノウハウを紹介しているコンテンツを見て勉強するのがよいでしょう。あとはホームセンターでも鍵、錠前の部品が売られているので、そういう場所に足を運べば、どういう鍵、錠前の種類があるのか、どういう構造になっているのかなど、何となく鍵に関する予備知識が得られると思います。
それともう一つ、これはとても重要なことですが、鍵職人は基本的に車で移動するので、早く運転免許を取って車の運転に慣れておくことは大事です。車の運転に不慣れだったり、土地勘がなくすぐに道に迷ったりするようではなかなか仕事を任せてもらえませんからね。
鍵職人は常に独力で活動する仕事なので、時間との戦いでもあり自分のスキルを磨かなければ、1日に複数の依頼をこなすことは難しいでしょう。プレッシャーの多い仕事ではありますが、鍵を無事に開けられたときの喜びと達成感は大きな自信につながるはずです。鍵職人は多くの人に道が開かれている仕事です。何か技術を身に付けたいという人、困っている人の役に立ちたいという人はぜひ考えてみてはいかがでしょうか?
【profile】SLS株式会社 サービススタッフ 松本紀幸
公式HP:http://sls.co.jp/
この記事のテーマ
「デザイン・芸術・写真」を解説
デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。
この記事で取り上げた
「そのほかのデザイン・アート・写真系の職業」
はこんな仕事です
デザイン・アート・写真系の職業は、表現力や個性に関わるものであり、自由度が高く非常に裾野が広い。例えば、コンビニの看板やキャンペーンののぼり、店内のPOPやレシートですらデザインの一つである。アートは、買い手がいなければ職業にならないが、Tシャツや車のボディー、スケートボードに独創的なイラストを描いて人気を得ているアーティストもいる。ファインアートの世界も自由闊達で、広い世界が活躍のステージだ。写真も被写体の数だけ可能性がある。建築、料理、風景、動物など、それぞれ専門の写真家がいる。
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PICK UP! 「そのほかのデザイン・アート・写真系の職業」について学べる学校
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デザイン・芸術・写真について学べる学校

