【シゴトを知ろう】コーラス 編
複数の人の声が重なることで生まれるハーモニーは聞いていてとても心地良いもの。皆さんが持っているCDの音源でも、メインボーカルの声の後ろで「ハモり」が聞こえることが多いのではないかと思います。このような音源やコンサートで、メインボーカルの歌声を支える重要な役目を担っているのがコーラスの仕事です。
今回は、数多くの有名アーティストをサポートしているシンガーのMANAMIさんに、コーラスの仕事について伺いました。
この記事をまとめると
- メインのボーカルをサポートするのがコーラスの仕事
- コンサートではダンサーの振り付けを一緒に覚えて踊る場合もある
- 高校、専門学校でさまざまな歌唱法を学んだことがこの仕事に生きている
いろいろな声色を使って、柔軟に要望に応えていく
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
私はライブやレコーディングなどで、メインのボーカルをサポートするコーラスシンガーとして活動しています。仕事はオーディションで決まることもあれば、一度関わったスタッフさんやミュージシャンの方から直接お声掛けいただくこともあります。ライブツアーに帯同する際は前もって渡された曲資料を聞いて、曲に合った声色作りをしたり、歌詞や振り付けを覚えたりして準備を進めます。本番の日は現場入りしてリハーサル前に声出しを行い、バンドと一緒にリハーサルをした後ヘアメイクや衣装着替えをしてステージに立ちます。
レコーディングでは、シンガーソングライターのサポートの場合、ご本人からコーラスの歌い方について「こうしてみよう!」とディレクションしていただくことが多いです。コーラスの人数にもよりますが、若々しい声、大人っぽい声などいろいろな声を使って、どんなご要望にも応えられるように最善を尽くしていきます。
また、私は講師としてアーティストやアイドルグループへの歌唱指導もしているので、1日に平均2、3回はスタジオやレッスン場を移動して仕事しています。
<一日のスケジュール>
12:00 現場入り。発声やストレッチ
13:30 リハーサル
16:00 食事
17:00 メイク、衣装替え
18:00 開演
21:00 退館
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
コーラスの仕事では、日本はもちろん海外など、自分が一人で歌っていたときには立てなかったステージに立てたり、出会えなかった人達に歌を聞いてもらえたり、存在を知ってもらえることがうれしいです。また、テレビやライブのステージでアーティストの歌に寄り添ってサポートし、喜んでいただけると本当にやりがいを感じます。さまざまな現場で、数多くの方々の歌に合わせていくコーラスでしか味わえない経験をさせていただいています。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
テレビやレコーディングに関しては、大体早くても曲をもらうのが収録の2、3日前だったり、当日行って初めて聴いたりすることもあるので対応力が必要になってきます。コンサートの場合はダンサーの振り付けを一緒に覚えて踊ることもあり、歌以外においても現場では柔軟な対応が求められます。これには毎度大変さを感じますね(笑)。
声楽、ゴスペルなどの多様な発声法がコーラスにつながる
Q4. どのようなきっかけ・経緯でコーラスの仕事に就きましたか?
幼い頃から歌手になりたくて、高校時代から声楽を習いながらバンド活動をし、作詞作曲を始めました。卒業後専門学校に入り、ゴスペルに出合って海外の先生のレッスンも受け始め、自身のバンドでインディーズデビューも果たしました。
そのバンドが解散し、シンガーソングライターとしてソロで活動していたときに、コーラス界で有名な今井マサキさんから「MANAMIちゃん、コーラスに興味ない?」と声を掛けていただきました。この一言で、私のコーラス人生が始まったんです。
当時は、生意気にもコーラスを仕事にするとメインの陰になってしまう寂しさを感じていたのですが、どこにいても存在感があって、どんな歌にも合わせられるプロフェッショナルな先輩方を見ているうちにこの仕事に魅了され、「もっといろんな現場でコーラスをしたい」と思うようになっていました。
Q5. 専門学校では何を学びましたか?
高校も音楽コースに所属し、週に10時間音楽の授業を選択して声楽でイタリア歌曲を歌っていました。専門学校ではゴスペルとバンド活動の両立という異色な経験をしましたね。ゴスペルでは、英語の発音から発声法、洋楽の課題曲に毎週追われ、バンド活動では1カ月に4、5回はライブをし、トータルで40曲くらいオリジナル曲も作っていました。
コーラスを仕事にし始めてからはコーラスのレッスンにも通い、現場での対応力を学びました。声楽、ゴスペル、バンド、コーラスという多様な発声法の経験が、今の仕事につながっていると感じます。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校生のときは、「とにかくたくさんの人の前で歌いたい」と思っていました。当時は自分がメインで……と思っていましたが、今はコーラスとして大勢のお客様の前で歌っています。また、現場によっては1曲メインを歌わせていただくこともあるので、夢が叶ってうれしいです。
何よりも「ブレンド感」が大事! 相手に合わせて工夫していく
Q7. どういう人がコーラスの仕事に向いていると思いますか?
協調性のある人ですね。どんな仕事に関してもそうだと思いますが、コーラスは何よりも「ブレンド感」が大事なので、自分本位な歌ではいくら上手くてもコーラスには向いていません。相手の声質や歌い癖、特徴に合わせて和音をブレンドさせていきます。その中で自分らしさを求められたときには自由に歌うなど、現場の雰囲気に合わせて対応していける人が向いていると思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
いろいろなジャンルの音楽を歌えることがコーラスにとって、強みになります。好きなジャンルや好きなアーティストの楽曲だけではなく、普段聞かない音楽にもぜひ触れてみましょう。そして、ある程度のステップや手の動きも大切になるので、体を使ったパフォーマンス磨きも頑張ってください。
いつか皆さんと一緒にステージに立てる日まで、私も日々精進します!
高校、専門学校で学んださまざまな歌唱法がコーラスの仕事に役立っていると話してくださったMANAMIさん。この仕事に興味がある方は、MANAMIさんのように音楽について学べる学校に行ってみると、より幅広く専門的な技術が身に付けられるのではないでしょうか。
【profile】シンガー MANAMI
MANAMI 公式HP:http://manami-music.com/index.html
公式Twitter:https://twitter.com/manamisherry
公式ブログ:https://ameblo.jp/manami-pinksherry/
この記事のテーマ
「音楽・イベント」を解説
エンターテイメントを作り出すため、職種に応じた専門知識や技術を学び、作品制作や企画立案のスキル、表現力を磨きます。音楽制作では、作詞・作曲・編曲などの楽曲づくりのほか、レコーディングやライブでの音響機器の操作を学びます。舞台制作では、演劇やダンスなどの演出のほか、舞台装置の使い方を学びます。楽器の製作・修理もこの分野です。
この記事で取り上げた
「コーラス」
はこんな仕事です
主にライブやコンサート、楽曲レコーディングの際に、別のアーティストのためにバックコーラスを担当するボーカリスト。メインボーカルを引き立たせるコーラスのための歌唱法ができることが重要だが、メインにも劣らないボーカルテクニックも必要だ。姿勢、口の開け方、呼吸法、高音の発声法といった歌うことの基本技術は必須。得意とする音域やジャンルによってコーラスを担当するミュージシャンが決まるので、豊かな表現力と幅広い対応力の有無で他との差がつく。ミュージシャンとの相性も重要。個性と協調性のバランスが問われる。