【シゴトを知ろう】臨床検査薬情報担当者(DMR) 編
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皆さんは健康診断で血液検査を受けたことがありますか? 体に悪いところがないか調べるための検査には、臨床検査薬が必要です。こうした臨床検査薬を安全にかつ正しく使ってもらえるように、医師や臨床検査技師などの医療に携わる人たちに医療情報を提供する仕事をしているのが臨床検査薬情報担当者(以下DMR)です。
今回はロシュ・ダイアグノスティックス株式会社でDMRとして活躍する西中理子さんに、仕事内容や大学で学んだことについて話を伺いました。
この記事をまとめると
- 多種多様な人たちと出会えることが魅力
- DMRの仕事とは知らずに、面接を受けていた!
- 文系出身者で活躍している人も
いろいろな職業の人と出会えるのがDMRの魅力!
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
私はDMRとして医薬品・医療機器の分野の一つである診断薬の営業をしています。診断薬といわれても皆さんはあまりピンとこないと思いますが、健康診断や病気の診断のために行われる血液検査などで使われるもので、治療薬のように人の体内に入る薬ではなく、血液や組織、細胞といった人の体からとったもの(検体)を調べるために使う薬剤のことを指します。
多くの場合診断薬を使うのは臨床検査技師という職種なので、そうした方々がいらっしゃる検査室を訪問します。ただ、検査をするかどうかを判断するのは医師ですので、医師に対して疾患のガイドラインなどの情報を提供することもあります。
弊社では、各自が担当する病院をエリアごとに分け、効率よく訪問できるようにしています。私は神奈川県内の一部が担当で、エリア内の中小規模のクリニックから大学病院まで受け持っています。
<一日のスケジュール>
08:30 出社 事務作業・代理店訪問など
13:00 病院訪問(3-4カ所)
17:00 帰社・事務作業
19:00 退社
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
中小の病院から大学病院、クリニックや検査センターを訪問するため、お話させていただく相手は臨床検査技師や医師、場合によっては看護師だったりします。そのため、いろいろな人と関われるのが楽しいです。また、当然病院によって求められているニーズが違うので、考えれば考えるほどいろいろな提案の方法があります。それぞれの病院の要望を聞き取りして提案内容を考えるのも楽しいですね。
私は、この仕事は最終的に患者さんのためにあると思っています。患者さんに役立つようにと考えた提案が採用されたときに、とてもやりがいを感じます。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
医療の世界は日々進化しています。実際に医学的な論文が毎日アップデートされているので、そうした情報についていくのはとても大変です。
また、新規のお客様を訪問するときは大変さを感じます。お客様もこれまで利用していた会社があるわけですから、最初から友好的な雰囲気にはなりません。そういう時はできるだけ足を運んで、誠心誠意お話しさせていただくようにしています。
足を運ぶことのよいところは、話を聞いていただけそうなタイミングがつかめることです。例えば医師は忙しい方がほとんど。誰でもオペ(手術)のあとは疲れて不機嫌でしょうし、そういう時に話を聞いてもらうのは難しいです。何度か訪問することで「あ、この時間なら話を聞いてもらえるかも」というタイミングが、だんだん分かってくるのです。
入社試験の2次面接までDMRのことを知らなかった! 面接が進むにつれてDMRへの関心が高まる
Q4. どのようなきっかけ・経緯でこの仕事に就きましたか?
就職をする時に「営業に就きたい」と考えていました。なぜかというと、学生の私にとっては、どういう仕事なのかとてもイメージしやすく、また、営業に必要なコミュニケーション能力は、今後どんな仕事をするにしても必要になってくると思ったからです。
私は薬学部に在籍していましたので、就職活動では製薬会社を中心に受けました。
実は最初、弊社のことを製薬会社だと思っていたんです。グループ会社に製薬会社もありますが、弊社はあくまでも診断薬の会社。それに気付いたのは2次面接でした(笑)。面接官から「診断」や「検査」という言葉を聞いて、「薬の話と違うな?」と初めて気付いたんです。DMRは薬の仕事じゃないんだと知った次の瞬間、「面白そう!」と思いました。
それ以降は面接官に「診断って何ですか?」「検査って何ですか?」といろいろな質問をぶつけていき、面接が進むにつれて、志望度が高まっていきました。
そうはいっても、薬剤師になるために6年間学んできたので、目標を変えることへの不安もありました。実は内定をいただいた製薬会社と弊社のどちらにしようかと1週間悩みましたが、診断や検査で、より早期に病気を発見できることを患者さんに浸透させていくほうがやりがいを感じられそうだと思い、弊社への入社を決めました。
Q5. 大学では何を学びましたか?
大学の薬学部で6年間勉強しました。実は薬学部は広く浅く勉強するところなので、病気や薬について、基礎的な物理、化学、生物の分野も学びました。もちろん最終的には、国家試験合格が目標です。
1年目は割とのんびりしている感じでしたが、2年目からは必修科目が決まっていて、テストもたくさんありました。5年生の時は、1カ月半薬局、1カ月半病院の薬剤部で実習がありました。研究室に入ることが必須でしたので、そこでの研究、6年生になると卒業論文、それが終わると国家試験の準備と盛りだくさんの6年間でした。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
私は物心ついてから、漠然と人の役に立てるようなところで働きたいと思っていました。人の役に立てるとなると医療の分野がいいのかなと思い、薬剤師がパッと浮かびました。医師は血を見るのが苦手なので無理だろうと……(笑)。
医療に携わる仕事という意味では、高校時代の思いとつながっているのかもしれません。
医療に携わりたい気持ちさえあれば、文系出身でもDMRになれる可能性がある
Q7. どういう人が、DMRに向いていると思いますか?
医療に携わりたいという気持ちさえあれば、すごくやりがいを感じられると思います。そのため「こういう人でなければDMRは務まらない」というものはないと思います。理系出身者に比べると大変かもしれませんが、文系出身の方もいらっしゃいます。入社後に、仕事に必要な内容を勉強できる環境も設けられています。
もちろん研究に打ち込みたい人や人とコミュニケーションを取るのが嫌だという人には難しい仕事だと思いますが、お客様と接点があるというのは、社会人として一番勉強になると思うので、とてもよい仕事だと思っています。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
高校生は全ての可能性が自分の前に開けている状態だと思います。「これは自分には関係ないかな」と思っても、いろいろなことを見て、聞いて、経験してほしいと思います。その上で将来「DMRになってみようかな」と思ってもらえるといいなと思います。
日頃あまり耳にすることがないDMRという仕事について話してくださった西中さん。当初はDMRの仕事だと知らずに面接を受け、途中で気付いたというのはとても興味深いエピソードでしたね。
医療系の職種に就きたいと漠然と考えていた人も、DMRという新しい選択肢について知ることができたのではないでしょうか。興味がある人は、もっと深く仕事内容について調べてみましょう。
【profile】ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 ラボソリューション営業本部
東京第二支店 営業一課 西中理子
【取材協力】ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
https://www.roche-diagnostics.jp/
この記事のテーマ
「医療・歯科・看護・リハビリ」を解説
医療の高度化に伴い、呼吸器や透析装置、放射線治療などを取り扱う医療・検査機器の技師がますます求められています。この分野の仕事は、高度な知識と技術をもって患者に医療技術を施すスペシャリスト。めざすには、基礎知識から医療現場での実践能力に至る段階的学びが必要となります。
この記事で取り上げた
「そのほかの医療系の職業」
はこんな仕事です
医療の仕事範囲は多岐にわたり、超高齢化や医療の高度化に伴って、雇用も多様化している。今後も治療だけでなく、病気の原因を探ったり、疾病の早期発見、細胞やウイルス検査、新たな治療方法を開発していくような研究分野。また、来院・入院する患者の回復に尽くし、心身機能の回復をサポートしたり、心身障がいの回復を手助けする分野でも、新たな医療専門技術を持つ人材が求められている。一方、東洋医学や福祉、予防医学、医療情報管理系の人材も必要とされ、数多いスペシャリストが活躍できる分野だ。
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PICK UP! 「そのほかの医療系の職業」について学べる学校
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