【シゴトを知ろう】国連職員 ~番外編~

国連機関の一つである国連開発計画(UNDP)に勤務している二瓶(にへい)直樹さんは、中央アジアにあるキルギス共和国に駐在し、PDA(*1)としてキルギスの平和を保つための活動を行っています。
国連機関で働く日本人のこと、そして、国連職員に求められることなどについて教えていただきました。
*1 PDA:平和・開発担当顧問。Peace and Development Advisorの略。
この記事をまとめると
- 国連で働く日本人は少ない。日本人がもっと活躍することが期待されている
- 紛争予防から教育、農業、人事、経理まで、国連にはいろいろな分野の仕事がある
- 語学や資格、専門分野の知識。国連職員に求められるものとは?
170人が働く職場で日本人はたった1人!
――職場や同僚について教えてください。
UNDPキルギス共和国事務所は、首都・ビシュケク市内の中心部にあるUN(国連)ハウスと呼ばれるビルの中にあり、私はそこでUNDPが運営する国連常駐調整官事務所に勤務しています。キルギスでは合計26の国連機関が活動をしていて、そのうちUNDPや国連児童基金(UNICEF)、国連人口基金(UNFPA)など14の機関が現地に事務所を置いています。国連常駐調整官事務所は、キルギスに存在する国連機関の全体事業を調整する役割を担っています。
国連常駐調整官事務所は調整官を含め10人ほどで構成されていて、上司である国連常駐調整官は、2017年1月に私が赴任した時はロシア出身の方、今はナイジェリア出身の方が務めています。私は平和・開発担当として仕事をしていますが、政務や防災、平和構築、総務、広報などを担当する同僚もいて、調整官と私以外はキルギス出身者です。
UNDPキルギス共和国事務所にはさまざまな分野のプロジェクトを実施する事務所が複数あり、約170人の職員が勤務しています。その多くがキルギス出身の職員で、外国籍の職員はナイジェリア、モルドバ、イタリア、モンテネグロそして日本と5カ国5名のみです。
――国連で働く日本人は何人ぐらいいるのでしょうか?
約3,000人が働いている国連事務局には、およそ80人の日本人職員がいます(*2)。UNDPや国連児童基金(UNICEF)など国連の関係機関全てを合わせると、およそ800人の日本人職員(*3)が活躍しているようです。
国際社会の一員として日本は国連の活動経費の多くに協力しているのですが、それに比べると職員数の割合は少なく、日本人が国連で活躍することに対する期待は非常に高いです。
*2 2015年6月末時点。職員数は、地理的配分の原則が適用されるポストに勤務する職員数であり全体の職員数ではない(総職員数の内の一部の職員)。
*3 2015年12月末時点。専門職以上の日本人職員の数。
JPOやYPP、国連で働く経験を積める制度がある
――国連で働きたい場合、どのような学校や学部を選べばいいのか教えてください。
国連にはさまざまな分野の仕事があり、国際関係や地域事情を勉強した人だけが働いているわけではありません。援助を専門にする仕事でも、私のように紛争予防の分野もあれば、教育や保健、栄養、環境、農業の分野もあり多岐にわたっています。普通の民間企業のように、人事や経理、調達などの仕事もあります。
将来を見据えて進学先を選ぶ場合、国連機関には開発途上国の問題を専門にする組織が多いので、何らかの分野で開発途上国における問題を研究できる学部がいいかもしれませんが、まず専門分野について学べる学部に入り、その後大学院などで途上国の問題に発展させていくのもいいでしょう。
――どのような採用ルートがあるのでしょうか?
日本のような新卒採用試験制度はなく、通常空席ポストに応募します。
また原則2年間、若手日本人を国際機関に職員として派遣するJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)と呼ばれる制度を外務省が行っている他、国連本部や世界銀行、アジア開発銀行などには、優秀な若手職員を2、3年間採用するYPP(ヤング・プロフェッショナル・プログラム)という制度もあります。
――国連で働くことはとてもハードルが高いように感じます。どのような能力が求められますか?
基本的に外国で働くことが前提となりますので、さまざまな背景を持つ人たちとコミュニケーションが取れる能力や調整能力、それから専門分野での知識や経験が非常に大事になります。英語は当然ですが、現地で使われている外国語ができるのなら大きな武器になります。
国際的な機関で働く以上、英語力は必須条件!
――国連の機関で働きたい場合、国連英検(国際連合公用語英語検定試験)を取得しておいた方がいいのでしょうか?
国連英検では、世界の平和や政治・経済、地球環境、人権など国連の活動につながる世界情勢や国際時事に関わる事柄が出題されます。
国連英検の勉強を通じて国連のことを知り、英語力を伸ばすことは有意義だと思いますが、国連英検に合格したからといって採用の際に有利になるわけではありません。
でも、専門分野について英語で活動できる能力が不可欠ですので、国連英検や実用英検(実用英語技能検定)、TOEIC、TOEFLなどを学生時代に受けておくといいでしょう。
―― 英語の他に習得した方がいい言語や取得が望まれる資格、学ぶべき学問の分野はありますか?
私の場合は、前職で中央アジアのウズベキスタンに赴任したことを契機に、旧ソ連で一般的に使用されているロシア語を勉強しました。ロシア語と同じく国連公用語の一つであるフランス語は国連の仕事が多いアフリカ地域でも広く使われていますし、近年話題になるアラビア語に関係する仕事も多くなってきています。
また、国連機関で働く場合、資格よりも自分が専門にする分野についての知見を常に磨くことが大事です。
国連機関で働くことを夢見る人の中には、「日本人が国連職員として活躍することが期待されている」という二瓶さんの言葉に背中を押された気持ちになった人もいるかもしれませんね。将来国連職員になりたいと思っている人は、紛争や食糧問題といった世界のさまざまな国や地域で起こっている問題について関心を持つことから始めてはいかがでしょうか。
【profile】UNDPキルギス共和国事務所 兼 キルギス国連常駐調整官事務所 平和・開発担当顧問 二瓶直樹(にへい なおき)
国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所
http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/
外務省 国際機関人事センター
<JPO派遣制度>
http://www.mofa-irc.go.jp/jpo/index.html
<国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)>
http://www.mofa-irc.go.jp/apply/ypp.html
●参照URL
http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/unp_a/page22_001263.html
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/sankakujokyo/2016/pdf/6-2.pdf
この記事のテーマ
「語学・国際」を解説
外国語を自在に使い、海外との良好なコミュニケーションを図ります。今後、社会のグローバル化が進む中で通訳や翻訳の仕事は、ビジネスや文化交流などあらゆる場面で求められてきます。この分野の仕事をめざすには、国際情勢などの知識や情報を収集する好奇心、語学力向上の努力が常に必要です。
この記事で取り上げた
「国連職員」
はこんな仕事です
国連とは国際連合の略称で、200近い国々が加盟し、国際平和や諸国間の友好関係の発展を目的として活動している組織だ。国連は、例えば世界保健機関(WHO)や国際原子力機関(IAEA)といった多様な機関を擁する。国連職員は、専門分野の知識やスキル、外国語を駆使し、紛争終結、人権擁護、貧困緩和、気候変動、経済問題など、地球上で起こるさまざまな問題解決に対応する。職場は国連事務局だけでなく、世界諸地域でのフィールドワークも多い。語学力、中立性、専門分野の確立、多国籍なチームワークなどが求められる。
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