知らなきゃ良かった! ハイヒールを履いた理由とは

女性のファッションアイテムとして欠かせない「ハイヒール」。履くことで脚が長く見えるという効果もあり、靴屋さんにはヒールのある靴が多く並んでいますよね。しかしハイヒールが生まれた起源というのが、現代からは想像もつかないとんでもないものだったのです。
この記事をまとめると
- 今では街中で当たり前に見かけるハイヒールには驚きの起源があった
- 中世ヨーロッパで、汚物を踏まないために履かれるようになったのがハイヒール
- 当時は男性もハイヒールを履いていた
ハイヒールに深く関係する、中世ヨーロッパのトイレ事情
「中世ヨーロッパ」と聞いて、皆さんは何を連想するでしょうか? 石造りの街、きらびやかな宮殿と優雅に振る舞う貴族たち……。それも正しいのですが、華やかな世界の裏側では、ある問題を抱え続けていたのです。
それはトイレの問題です。17~18世紀ころまで、ヨーロッパの各都市ではお城などを除いた住宅にトイレが設置されていませんでした。住人たちは”おまる”を使用し、それら汚物を一定の場所に持っていって捨てる、というルールがあったのです。
しかしこのルールを守る人は少なく、多くの人が窓から汚物を投げ捨てていました。当然、街中の道路は汚物で一杯となります。普通に歩いていると上から汚物が降ってくる……なんて光景も日常茶飯事でした。これらの衛生問題が原因でペスト菌が蔓延し、14世紀にペストで亡くなった犠牲者は2,500万人にものぼると伝えられています。それほど、中世ヨーロッパのトイレ事情は深刻で、「トイレ暗黒時代」とも呼ばれているほどのものでした。
そんな中で履かれるようになったのがハイヒール
そうした背景の中、17世紀にフランスでハイヒールが履かれるようになりました。ハイヒールはかかとがつま先部分より高くなっている形をしていますが、これには「路上に溢れている汚物を踏まないように」という意味があったのです。
そのため、ハイヒールが生まれた当時はハイヒールは女性だけの履物ではなく、男性も普通に着用していました。ルイ14世も、背を高く見せるためにハイヒールを好んで履いていたのだとか。
そして1800年始めに起こったナポレオン戦争を契機に、男性は運動性の高い靴を履くようになり、ハイヒールは徐々に女性の履物になっていったのでした。
ハイヒール以外にもいくつかの発明品を生んだ「トイレ暗黒時代」
中世ヨーロッパの「トイレ暗黒時代」は、ハイヒール以外にもいくつかの発明品を生み出しました。
たとえばフープスカート。裾が大きく広がっている形をした、中世の貴婦人が履いているイメージのあのスカートです。フープスカートは、立ったまま用が足せるようにデザインされた機能的な洋服だったのです。
また、紳士が被っていたシルクハットと外套(がいとう)・マントもそうです。当時は降ってくる汚物を被りやすい歩道の外側を男性が歩くのがマナーとされていました。そこで中世ヨーロッパの男性たちは、バケツ状の形をした帽子・シルクハットを被り、マントを羽織って汚物を凌ごうとしたわけです。
ハイヒールを始めとしたおしゃれなアイテムも、そんな事情から開発されたという秘話があったんですね。そうした身の回りのファッションアイテムの起源を探るのも「服飾・被服学」の一つですよ。
参考:ハイヒールの由来
http://mtislet.com/chie/thing/hihill.html
この記事のテーマ
「生活・服飾・美容」を解説
生活・服飾・美容の分野には、生きていくために必要不可欠なものだけではなく、それによって生活がより豊かで快適になることを目的としているものもあります。たとえば生活学では、だれもが安全で快適に暮らせる空間を実現するために、ユニバーサル・デザインの研究を行います。服飾や美容は、トレンドや利用者によって多様化するニーズに対応するために、素材、色、デザイン、施術方法など、あらゆる角度から美を追究しています。
この記事で取り上げた
「服飾・被服学」
はこんな学問です
服飾について専門的に学び、より優れた服飾を追究する学問。世界各地の服飾文化について、歴史や存在意義、機能性などを分析し、科学的な視点から服飾文化の向上や創造に役立てるのが主な目的。デザイン、縫製など服飾造形の技能を追究し、習得する「プロダクトデザイン分野」、繊維の性質や加工、管理を学ぶ「テキスタイル化学分野」、商品流通や消費を研究する「消費科学分野」のほか、文化財となる服飾品の保存を学ぶこともあり、領域は幅広い。