【シゴトを知ろう】コンシェルジュ 〜番外編〜
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幅広い知識と情報を備え、ホテルにいるお客さんの相談ごとを解決するコンシェルジュ。今回はリーガロイヤルホテルで働く山本健二さんに、仕事の意外な事実や海外のお客さんへの対応、印象的なエピソードについて伺いました。丁寧な仕事ぶりの裏側には、たくさんの工夫が隠されていました。
この記事をまとめると
- お客様の要望や状況に合わせて最適な道案内を提供している
- 日常的に書店や街中散策で情報を入手するのが癖になっている
- 外国語のサービスでは「理解しよう」という姿勢で、できる限りの工夫をする
一人ひとりのお客様に合った、マンツーマンの道案内
――「これを知っていたらお客様に喜んでもらえた」という意外な情報があれば教えてください。
コンシェルジュとしては当たり前だけど意外に思われる情報の一つに、細やかな道案内が挙げられます。今は携帯があれば地図も検索できるので「道なんて尋ねる必要はない」と思っている方もいらっしゃるのは事実です。でもコンシェルジュが行う道案内は一般検索のそれとは一味違います。一人ひとりに合った最適な道案内を工夫して紹介しているからです。
急いでいる場合、団体で移動する場合、段差のない通りをお勧めしたい場合、小さなお子様やバギーをお持ちのご家族の場合……天候や周りたい場所も考慮して、希望時間に目的地に着けるよう、できるだけ分かりやすくポイントを明確にしてご案内することを心掛けています。
万が一道に迷ってお困りにならないよう、ホテル住所記載の地図をお渡ししたり、タクシーに乗車しやすいポイントをアドバイスします。ときには移動中に見える場所の歴史的なストーリー、お店の紹介など、楽しく感じていただける程度に情報を広げて案内することもあります。更には駅の出入り口の番号や乗車すべき車両位置、目印となる建物や看板などの写真をお見せしたり、絵で正確に書いて差し上げたりすると、とても喜んでいただけます。お帰りの際「無事に行けました!」「分かりやすかったです」とお褒めの言葉をいただくこともしばしばです。
――このお仕事ならではの「休日あるある」や、ついプライベートでもやってしまうことがあれば教えてください。
個人差はあると思いますが、私の場合、書店に行くと旅行情報誌、ファッション誌、レストラン、文化や芸術の特集などで目新しい面白そうなものが出ていると、女性誌だとしても目を通すようにしています。時間があれば寄り道をし、駅の出入り口などをチェックしながら「何か役に立つ新しい情報や素敵なお店はないかな?」と探してしまうのが癖になっている証拠ですね。
どの国のお客様に対しても、とにかく真剣に向き合うことが大切
――海外のお客様の対応をするために学んだことや、気を付けていることがあれば教えてください。
基本的なことですが、日本人のお客様でも海外からお越しのお客様でも、同じように笑顔でお迎えし、安心してお話いただけるよう、声のトーン、話すスピード、言葉遣い、お客様にとって分かりやすい言い回しなどを自然と調整しながら会話をしています。また複数でいらっしゃった場合、例えば上司の方など、その団体の中でキーパーソンとなる人に気を配りながらお話を進めなければ、お客様の安心感につながりません。もちろん海外のお客様でしたら、その方々が大切にされている習慣や宗教に関しても承知の上でご紹介するお店を選ぶ必要があります。
外国語でサービスを行う上で一番大切なポイントは、「理解しよう、つながろう」という姿勢と気持ちを持つことだと思います。そのお客様ときちんと真剣に向き合い、ときには筆談、絵、写真、身振りを用いるなど、できる限りの工夫をしています。私の経験上、理解したいと思う姿勢と気持ちはちゃんとお客様の心に響いています。
お客様との再会から、昔の自分の仕事が役立っていると知る
――最後に、お仕事の中で、一番の思い出や達成感を感じたエピソードについて教えてください。
思い返せばたくさんありますが、私自身がうれしくなった十数年前の大切なエピソードを一つ紹介します。ある日、イギリス人の女性がロビーから一直線に私の元へ向かってきて、とてもうれしそうにご挨拶してくださいました。話を聞くと、学会参加のため久しぶりに来日されたとのこと。実は更に数年前にロビーで私とお会いしたことがあったそうで、そのときのことを説明してくださったのです。
ほんの数日のご滞在で会話を交わした私を覚えていてくださっただけでもうれしい限りですが、その場でかばんから取り出してくれた資料を見て、私はとても驚きました。それは、京都観光に関する手作りの資料と地図。まだ勉強中の身だった私が、当時コンシェルジュカウンターにお越しになったそのお客様に手書きや写真の切り抜きを含めてお作りしたものです。お客様はそれを大事に保管して、今回はご友人を案内するためのツールとして持参されたとおっしゃるのです。
不恰好な資料に恥ずかしくなりながらも「情報も劣化して、今はお役に立つ資料かどうか不安だ」という気持ちを訴えてみたところ、「私にとっては初めての京都を素敵に体験できた一番分かりやすい地図で、私が持つどのガイドブックにも載っていない地元の情報が詰まっている、本当に大切な物なの。帰国後にも、京都へ向かう仕事仲間にコピーして配ったのよ」と言われたときは、心の底からうれしい気持ちになったことを今でも覚えています。そして単なる案内情報が、思い出作りの手助けにもなり得ることに改めて気付かされました。
豊富な情報で要望に応えるだけでなく、安心して楽しんでもらえるための気遣いも欠かせない仕事だということが、山本さんのお話を聞いて分かりましたね。このお仕事では人との関わりや、ありとあらゆる知識が生かせます。旅行に関することに限らず自分の興味のある分野を深めてみると、思わぬところで役立つかも。また、その知識を人に伝える際にどういう言い回しだと伝わりやすくなるのか、日頃から工夫してみるといいかもしれませんね。
【profile】リーガロイヤルホテル 宿泊部ゲストサービス課 山本健二
リーガロイヤルホテル大阪公式HP:https://www.rihga.co.jp/osaka
この記事のテーマ
「旅行・ホテル・ブライダル・観光」を解説
目指す業界の専門知識を学び、パソコンなどのスキルを身につけます。旅行・観光では資格取得や採用試験対策、ホテル・ブライダルでは、現地実習を通して実践力を養う研修が多く含まれます。共通して求められるのは、ゲストに非日常のサービスや空間を提供する接客技術やサービス精神。不規則な勤務に対応できる体力の養成も求められます。
この記事で取り上げた
「コンシェルジュ」
はこんな仕事です
ホテルの宿泊客および、来館者からの相談や要望に応えるコンシェルジュ。ホテルの「顔」ともいわれ、客の必要としている情報をいかに迅速かつ正確に提供できるかが大きなカギとなる。例えば、ホテル内のサービスや施設の案内、周辺の観光地やレストランの紹介、チケットの予約・手配などもコンシェルジュの業務だ。コンシェルジュの対応次第ではホテルのイメージやリピート客の集客にも影響を及ぼすため、責任は重いが、やりがいのある仕事でもある。
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