京町家のカフェで建物の歴史を味わおう

京都らしい風景といえば、思い浮かべる風景の一つに京町家の美しい街並みがあるのではないでしょうか?
世界中を魅了している京都の街並みが美しく感じられるのには、洗練された質素さを感じさせる伝統的な京町家の演出によるところが大きいと考えられます。
京都には住宅の専用の町家だけではなくお店やカフェなど店舗になっている町家がたくさんあります。ここでは、京都の趣を感じるカフェ「京水庵」と「みんなのカフェ」のスタッフに聞いた、町家カフェの起源や楽しみ方をご紹介します。
この記事をまとめると
- 京都の街並みを美しく魅せる町家はうなぎの寝床のように細長い
- 京町家の起源はなんと平安時代から。江戸時代には今のような町家に
- 町家の機能性は風通しや空間だけでなく土壁にも
京都を美しく見せる町家とは? うなぎの寝床と呼ばれるほど細長く、独特な建築様式
京都の町家は京町家とも言われます。同じ読み方でも、店舗の場合は町屋、住居の場合は町家と書くことが多いようです。ちなみに、住居専用の町家は仕舞屋(しもたや)。店を仕舞った、つまり商売をやめたという意味からきているそうです。
町家の敷地形状は「うなぎの寝床」と呼ばれています。間口が狭くて奥行きが深いので、まるでうなぎのように細長い作りとなっています。これは江戸時代に税金が間口に応じて決められたため、なるべく間口を小さくしようとしたためです。
町家は「一文字瓦」の屋根、「紅殻格子(べんがらこうし)」「虫籠窓(むしこまど)」などの特徴を備えた外観が特徴的です。また、入り口から奥まで続く長い土間は「通り庭」と呼ばれ、風通しがよく採光に優れています。また、入り口から奥まで続く長い土間は「通り庭」と呼ばれ、風通しがよく採光に優れています。
入り口の格子は家の中からはよく見えるけれど道行く人からは立ち止まらないと中がよく見えない防犯的な意味も備えています。しかし中の様子が知りたい人にとっては立ち止まって見ることができるショーウィンドウのような役割もあります。
町家の歴史をさかのぼる。江戸時代にはコミュニティとしての役割も
京町家の起源は平安時代半ばまでさかのぼります。商人たちが公家から屋敷地を買い取り、そこに小屋を建て始めました。やがて町屋は軒を連ねて立ち並ぶようになりますが、時を経て豊臣秀吉が登場し、都市計画で通りが多く入ることになってしまったために短冊状の長方形スタイルへと変化していきました。
今の町家の原型は江戸時代の中期に形成されたとされます。
江戸時代には京町家の住民同士で町を守る共同的な自治活動があり、コミュニティへと発展していきました。
その後、残念ながら幕末の禁門(蛤御門)の変(1864年)で多くが焼失してしまいました。そのため、現存する町家はそれ以降に建てられたものがほとんどです。
町家の魅力。それは先人の知恵と工夫がつまった機能性とエコロジー
清水寺近くにアイスクリームと抹茶の町屋カフェを営んでいる京水庵さんによると、京町屋の魅力は、とても機能性に優れているところだと言います。例えば、町家ならではの「通り庭」のおかげで、風通しや日当たりの良さがあります。そして狭い敷地面積でもうまく有効活用しているとのこと。それは、階段下のスペースを利用した「箱階段」にも見られます。
伏見区で町家コミュニティカフェを営んでいるみんなのカフェさんによると、町家の土壁はとてもエコロジーとのこと。土と砂とスサや藁スサでできていて、製造過程で燃焼しないためエネルギーを消費しない上に、水と土を入れて練り直してもう一度塗り直すことで長期間使用できるそうです。そんな自然の土壁に、物を無駄にしない、先人たちの生き方を知ることができます。
また、そんな中で町家は残念ながら現在維持が困難で手放す人が多く、町家を保存しようと行政や民間の団体がいろんな試みが行われていることも知っていただきたいとのことでした。
京都に行く際には、町屋カフェでゆっくり京都の味を楽しみながら、町家の構造をじっくり見学してみてはいかがでしょう? 先人たちから引き継いできた町家の機能性は、現代の建築学を学ぶのに重要なヒントになります。新しい未来の建築をぜひ町屋から学んでみませんか?
この記事のテーマ
「文学・歴史・地理」を解説
文学は、長い歴史のなかで変遷してきた人間の生活や社会、人々の考え方や感情の変化などを、文章表現をもとに考える学問です。文献を読み解いて比較検討し、過去から現在、さらには未来に至る人間のあり方や社会について研究します。地理学や歴史学は、今日の私たちの生活や文化、経済活動などについて、基盤となった地形や気候、史実やさまざまな事象、最新の研究結果や歴史的な遺構をもとに、その成り立ちから考える分野です。
この記事で取り上げた
「歴史学」
はこんな学問です
歴史学とは、対象とする大陸・国・地域などにおいて、過去に起こった物事を取り上げ、当時それがどのような意味を持っていたのかを、残された物や建造物、文書などから研究する学問である。ただ、資料を正確に読み取るだけではなく、事実かどうかを疑い、踏み込んで検証する批判的視点も重要である。歴史学の基本的なラインナップには、日本史、東洋史、西洋史、考古学がある。また、政治制度・経済活動・芸術文化・信仰宗教などに特化した考察も行う。
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