【シゴトを知ろう】児童指導員 編

家庭の事情により、家族と離れて暮らす児童養護施設の子どもたち。そんな彼らを親のように、ときには先生や兄姉のように見守り、支援しているのが児童指導員の方々です。今回は、東京都社会福祉事業団の児童養護施設で働く田畑奈留美さんに、仕事内容や学生時代に学んだことについて伺いました。
この記事をまとめると
- 児童養護施設で暮らす子どもたちをサポートし、自立に導く仕事
- 大学でさまざまな福祉の知識を学んだことが役立っている
- この仕事に就く前に、子どもに関わるボランティアをしておくとよい
毎日の子どもたちとのやりとりに楽しさを感じる
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
私たち児童指導員の仕事は「児童の自立支援」です。さまざまな理由により児童養護施設で暮らすことになった子どもたちが、社会に出て生活していけるよう、サポートしています。児童指導員の主なシゴトは、大きく分けて三つあります。一つ目は、朝起きてからご飯を食べさせて学校へ送り出すなど、当たり前の日常生活を提供すること。二つ目はその子の成長や進路について、児童相談所や学校などの関係機関、家族と連絡・調整をすること。そして、三つ目は子どもたちの身近な大人として他愛のない会話をしたり、悩みを聞いたりすることです。間違ったことをしたときには、場合によって指導をすることもあります。
<ある一日のスケジュール(ローテーション勤務の場合)>
5:00 起床(子どもたちが順次起き始める)
6:00 お弁当・朝食の準備
8:00 掃除
9:00 連絡会、事務作業、関係機関への連絡など
(会議や研修がある日もあります)
14:00 引き継ぎ・交代
子どもたちとの関わりの時間
18:00 夕食
子どもたちとの関わりの時間
23:00 就寝準備(それぞれ部屋に入る)
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
子どもたちが、日々関わっていく中で少しずつ職員を信頼し、いろいろな相談をしてくれるようになるととてもうれしく思います。真剣な話をすることもあれば、他愛のない話で盛り上がることもあり、毎日の子どもとのやりとりに楽しさを感じますね。そして、たくさんの苦難を一緒に乗り越えてきた子たちが高校を卒業し施設を巣立っていくときは、やはり大きな達成感があります。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
穏やかに過ぎていく日もあれば、ときには子どもとぶつかり合う日もあります。子どもの立場になって物事を考えたり、話をしたりするように心掛けてはいますが、時には大人として伝えなければならないこと、注意しなくてはならないこともあります。
私自身、子どものころは大人の言葉が理解できないこともありましたし「大きくなってからようやく意味や理由が分かった」という経験は誰しも持っていると思います。それでもこちらの伝えたいことをうまく伝えられず、子どもに理解してもらえないときにはもどかしさを感じます。根気強く伝え続けたり「この子にはどう伝えたら分かってもらえるのだろう?」と悩んだりすることもあります。
大学でさまざまな分野の福祉について学んだことが役立っている
Q4. どのようなきっかけ・経緯で児童指導員の仕事に就きましたか?
高校生のときに児童福祉に興味を持ち、大学の福祉学科に進学しました。そして、大学3年生のときに児童養護施設での実習を経験したことがきっかけで、児童指導員を志すようになったのです。
授業では福祉を満遍なく学び、個人では保育所や障害児支援センター、小学生のキャンプリーダーや児童養護施設の学習支援など、子どもたちと接するボランティアへ積極的に参加しました。
Q5. 大学では何を学びましたか?
大学では児童福祉だけではなく障害者福祉、高齢者福祉、地域福祉などを幅広く学びました。この仕事をしていると児童福祉に限らずさまざまな分野の制度や法律の知識が必要となるので、大学で受けたあらゆる授業が役立っています。例えば、児童養護施設では子ども自身が障がいを持っていることもあれば、ご家族の中に障がいを持つ方がいる場合もあります。また、介護の仕事を志す子どももいるので、彼らのサポートをする際にも学んだ知識が生かせます。
特に、在学中にしたボランティアの経験が子どもと接する上で大きく役立っているので、本当に参加していて良かったと思います。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
具体的な職業への夢はありませんでしたが、高校3年生のとき、児童虐待のニュースばかり目にする時期があり、「このような環境にいる子どもたちに何かできることはないか」という漠然とした思いを抱いていました。それが、大学で福祉を学ぶことにつながったのかもしれません。
まずは児童に関係するニュースをチェックすることから始めてみる
Q7. どういう人が児童指導員に向いていると思いますか?
児童指導員は、すぐに目に見える成果が表れる仕事ではありません。何カ月、何年とかけて信頼関係を築き、その子を社会に送り出すのです。そのためには、何より根気強さが必要です。諦めずに子どもを見守っていける人が、この仕事に向いていると思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
まずは児童に関係する新聞やテレビのニュースに興味を持ち、チェックするところから始めるとよいと思います。そして、可能であればボランティアなどを通して、子どもたちと接する機会をたくさん作っておくことをお勧めします。その経験が実習や就職後の働きに、絶対に役立ちますよ。
同じ施設で暮らす子どもたちでも、それぞれの家庭の背景や事情は異なります。個々に合った支援をするのは簡単ではないですが、田畑さんのお話からは、毎日試行錯誤しながら子どもたちと向き合うことへの楽しさや、責任が伝わってきました。この仕事に興味を持った方は、ボランティアができる施設を探したり、福祉を学べる学校を調べてみたりしてはいかがでしょうか。実際に体験することで、新たに見えてくるものがあるはずです。
【profile】東京都社会福祉事業団児童養護施設 田畑奈留美
公式HP:http://www.jigyodan.org/
この記事のテーマ
「福祉・介護」を解説
現場で福祉を担う介護福祉士などのスペシャリストや、福祉サービスの企画・提案ができる人材を育成します。通常の生活を営むことが困難な人の生活を助けるための専門知識、技術を身につけ、職種により就業に必要な資格取得を目指します。高齢化が進む中、精神的なケアや寝たきりを防ぐための運動指導など、必要な専門知識や技術も幅広くなっています。
この記事で取り上げた
「児童指導員」
はこんな仕事です
さまざまな家庭の事情により、家族と離れて児童養護施設で生活する1歳~18歳までの子どもたちに、生活を指導し、自立を支援する児童指導員。施設生活における親、兄弟のような存在でもある。児童養護施設の他に知的障がい児施設などで、子どもたちが心身ともに健全な成長を遂げられるように社会的知識を指導員が与える。また、養子縁組や里親制度、児童の親とのパイプ役など、施設を出た後もよりよい生活環境に身を置けるよう支援も行っていく。
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