【シゴトを知ろう】タイムキーパー ~番外編~
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テレビの画面に映るのはタレントや俳優、アナウンサーなどですが、実はその裏では多くのスタッフが番組の企画から制作、収録、編集、記録、オンエアに至るまで関わっています。時間の管理をするタイムキーパー(TK)もその一人。
タイムキーパーとして長年テレビ番組の制作に携わりながら、タイムキーパー養成スクールを立ち上げて講師も務めている松下絵里さんに、実際の仕事の様子や愛用している道具などについてお話を伺ったので、番外編として紹介します。
この記事をまとめると
- 時間管理だけではなく、番組の記録を残すこともタイムキーパーの仕事
- 日本で唯一のタイムキーパー養成学校を開校。後継者を育てていきたい
- タイムキーパーは女性の仕事!? その理由は声質と気配りにある
番組制作や放送システムに関する知識も求められる
――松下さんが担当している番組を教えてください。
タイムキーパーになるきっかけがフジテレビから始まったこともあって、フジテレビが制作しているバラエティ番組を担当することが多いです。現在担当している番組は『ダウンタウンなう』(毎週金曜日21:55~)です。
――タイムキーパーの仕事について詳しく教えてください。
テレビ番組の制作を進める際の時間を管理するために、コーナーごとの時間を計算したり残り時間の秒読みをしたりします。番組作りやテレビ放送のシステムについても深く理解していないとできない仕事です。
また、番組収録時にスクリプトを取るのも大事な仕事です。スクリプトとは、簡単に言うと番組の記録のことで、出演者が話したことやそれぞれのコーナーの収録時間などを細かく記録していきます。番組ディレクターはそのスクリプトを見ながら編集するんですよ。昔はタイムキーパーも編集作業に関わっていましたが、現在はディレクターがパソコンで行うことが多いです。
テレビ局によって異なりますが、フジテレビでは完成した放送用の映像を納品する前に、タイムキーパーも立ち会って最後の確認を行います。急に呼ばれたり、予定していた時間が当日変更になったりすることは日常茶飯事です。日々のスケジュールはあってないようなものですね(笑)。
昔は仕事を覚えるために先輩に弟子入りするのが普通だった
――どのような思いがあって、タイムキーパー養成スクールを作られたのでしょうか?
タイムキーパーの仕事を講義スタイルで学べるように、15年前にタイムキーパー仲間で養成スクールを作りました。
それまでは徒弟制度のように、すでに活躍しているタイムキーパーに見習いとしてついて仕事を覚えていく方法が一般的だったのですが、この方法だといつ独り立ちできるのかが明確ではなく、仕事とは直接関係のない師匠との人間関係なども重要になってきます。
そこで、余計なストレスを無くし、タイムキーパーになるための情報や知識を系統立てて効率良く学べるようにという願いも込めて開きました。
――養成スクールで学べばタイムキーパーとして活躍できるのでしょうか?
私を含めて講師は全員現役のタイムキーパーなので、かなり実践的な内容を教えていますが、いざタイムキーパーとして独り立ちできるようになっても、現場の雰囲気になじめなかったりミスをするかもしれないプレッシャーに耐えられなくなったりして辞めてしまう人もいます。
現場ではタイムキーパーは1人しかいないことがほとんどなので、新人のうちは孤独で不安になることが多いのです。そこを乗り越えられるかどうかですね。
代替品が見つからない! 愛用するストップウォッチはミネルヴァ製
――仕事に欠かせない物にはどんなものがありますか?
タイムキーパーに必要な道具といえばストップウォッチです。これがないと仕事になりません(笑)。そして、どんなストップウォッチでもいいわけではないのです。テレビ番組の制作現場では、多くのタイムキーパーがスイスのミネルヴァという会社の機械式手巻きストップウォッチを使っています。
ミネルヴァ社のストップウォッチは、時計を動かす部分にバネを使用した他にはない独特の構造をしています。このバネによって、ボタンを押したり離したりする時間を計る操作が素早く確実にできて、耐久性も高くなっています。でも、残念なことに現在は生産中止のため新品を手に入れることが大変難しくなっていて、故障した場合は修理をしながら使っています。
もちろんデジタルタイプのストップウォッチもたくさん販売されていますが、使い勝手の良さではこれに勝るものはありません。針の角度で残り時間を判断できたり、数字にはない視覚での使い方ができることがアナログ時計の魅力です。
――タイムキーパーは女性の仕事というイメージがありますが、これはどんな理由からでしょうか?
スタジオでは多くのスタッフがインカムを使って連絡や確認をします。男性スタッフの声が飛び交う中では女性の高い声の方が聞き取りやすく、時間を伝える声が認識しやすいようです。
かつては、テレビ番組の制作現場に女性はめったにいませんでした。そのため、「タイムキーパー=女性」の仕事として確立した説があります。また、タイムキーパーは補佐的な立場で仕事をするので、きめ細かい配慮ができる女性の方が何かと重宝されるのです。
多くの人に発信し影響を与えることができるテレビに関わる仕事に憧れを持っている人は多いでしょう。でも、華やかに見える世界を作り上げるのは簡単ではなく、プロの技術と心構えを持って働く必要があります。
タイムキーパーは、テレビ番組の制作をスムーズに進めるためには欠かせない存在です。現場で受けるプレッシャーに負けるのではなくそれを楽しめるぐらいの人が、タイムキーパーとして活躍できるといえそうですね。
【profile】有限会社ティービージー 取締役・タイムキーパー 松下絵里
TBGタイムキーパースクール タイムキーパーBlog https://ameblo.jp/tbg-timekeeper
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「タイムキーパー」
はこんな仕事です
テレビやラジオの番組収録中に、時間を管理するのが仕事。ストップウォッチを片手に、常に進行状況を把握し、残り時間を的確にスタッフに伝える。特に生放送では欠かせない存在である。仕事の流れとしては、まず番組の進行表を確認し、それに基づいて番組内の各コーナーの割り振りを秒単位で設定する詳細な「Qシート」に記載して全スタッフに配布する。そして、収録が始まれば「Qシート」を使って時間を管理していく。働き方としては、テレビ局、制作会社の社員や契約・派遣社員が多い。
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