【シゴトを知ろう】タイムキーパー 編
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テレビ番組の制作現場においてタイムキーパー(TK)の仕事をしているのは、ほとんどが女性といわれています。コミュニケーション能力と女性特有のきめ細やかさが求められるタイムキーパーは、いったいどのような仕事なのでしょうか。
フジテレビで放映されているバラエティ番組を中心に、30年近い経験を持つベテランタイムキーパーの松下絵里さんにお話を伺いました。
この記事をまとめると
- タイムキーパーは制作現場の要。番組の流れを把握・整理して時間管理を行う
- ディレクターを志望してテレビ局を見学。縁があってタイムキーパーに
- 秒単位で進む制作現場。失敗しても落ち込んでいる時間はない!
進行表で番組のイメージを共有。時間管理をして進行をコントロール
Q1. 仕事の概要と一日のスケジュールを教えてください。
私は有限会社ティービージーの社員で、フジテレビのバラエティ番組を制作する部署にタイムキーパーとして派遣されて勤務しています。私が働いている部署には12人のタイムキーパーがいて派遣スタッフが中心ですが、他の部署や他局では、フリーまたは会社に所属(派遣契約ではない)して仕事をするのが一般的です。
タイムキーパーは テレビ番組の放送・制作において時間に関わることを管理するのが主な仕事です。生放送番組ではディレクターの意図を酌み、時間配分・作業内容確認・指示を行い放送時間内に収めます。VTR番組の収録においては、収録時間・内容の記録・編集上がりの番組をチェックして放送テープを納品します。
テレビ番組の制作現場では、複数の会社からさまざまな職種のスタッフが集まって一緒に番組を作っています。緊張感あふれる現場なので、周囲への気配りやスタッフが仕事をしやすいムードを作る能力もタイムキーパーには求められます。
さらに私は、タイムキーパーを養成するスクールで講師も務めています。スクールでの講義はフジテレビでの仕事が終わってから行っています。
<ある一日のスケジュール>
09:00 出社
09:30 VTR番組のデータチェック
13:00 フジテレビにて作業
19:00 オフィスにてタイムキーパー養成スクール講義
22:00 帰宅
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
番組を完成させるという同じ目的に向かって、スタッフが一丸となってゼロから番組を作り上げていくことが楽しいです。同じことが日々繰り返されるわけではなく、担当する番組が変わればスタッフや出演者も変わるので、毎回新しい発見と出会いがあります。
また、番組を作っていく上で時間管理に関わる責任は全てタイムキーパーにあるので、その部分にやりがいを感じますし、時間管理以外の番組制作における私の発言やアドバイスがより良い番組作りにつながるとうれしいですね。
タイムキーパーの仕事は、スキルと経験を積み重ねて行けば一生の仕事にできると思います。結婚や出産で一度引退しても、また仕事に復帰する方が多いんですよ。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
タイムキーパーの仕事の醍醐味(だいごみ)でもあるのですが、常に緊張を強いられるので大変な面もあります。テレビに関わる仕事のため華やかなイメージを持たれることが多いのですが、実際は地味で緻密で孤独な仕事です。
担当する番組によって開始・終了時間が違い、生活リズムをその度に変えなければいけないので、そのリズムに体を慣れさせるのに半年はかかると思います。体力・自己管理が重要になってきます。
また、1つの番組にタイムキーパーは通常1人しかいないので、新人の時などは制作現場には知らない人ばかりという状況もあります。技術がまだ追いついていないのに、分からないことがあっても誰にも頼れず、孤立して周囲となじめない気持ちになり落ち込んでしまうことがあるんです。
私も新人の頃はそんな気持ちになったことがありました。それが原因で辞めてしまう人も少なくありません。
きっかけはテレビ局見学。まずは見習いからスタートした
Q4. どのようなきっかけ・経緯でこの仕事に就きましたか?
もともとはディレクターを志望していたのですが、私が就職活動をしていた昭和の終わり頃は、テレビ番組の制作現場において女性がディレクターになれる機会はほとんどありませんでした。番組制作に関連する他の職種にしても、何かしらのコネがないと就けないことが当たり前だったんです。
私の場合は知人がフジテレビにいたので、ディレクターになりたいと相談してテレビ局の番組制作現場に連れて行ってもらったことが、タイムキーパーになったきっかけです。その現場でタイムキーパーが足りていなかったので、知人に勧められて最初は先輩タイムキーパーについて見習いからスタートしました。
Q5. 大学では何を学びましたか?
短期大学でベーシックアートコースを専攻しました。絵画や彫刻、デザイン、写真、映像など芸術の基礎を学ぶ中で映像に興味を持ち、テレビ番組の制作を職業にしたいと思うようになりました。
授業以外にも友達と楽しい思い出をたくさん作り、さまざまなことを学びました。学生時代を共に過ごした友達は、社会に出てからも大事な存在です。お金を出しても買えない宝物と出会うことができました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校生の頃からテレビ番組のディレクターになりたいと思っていたので、番組制作について学べる専門学校に行きたかったのですが、親に反対されて短大に進学しました。
短大卒業後、たまたまテレビ業界の方と縁があったことがタイムキーパーの仕事につながったので、結局この道を進んできて良かったのだと思います。
より良い番組作りにコミュニケーションは欠かせない
Q7. どういう人がタイムキーパーに向いていると思いますか?
テレビ番組の制作には多くのスタッフが関わっています。そこで大切なことは、コミュニケーションを円滑に取ってスムーズに番組制作を進行させることです。ですので、切り替えが早い人、声が大きい人、よく食べてよく寝てよく笑う人がタイムキーパーに向いています。
テレビ番組の制作現場は秒単位で動いています。少し失敗したくらいで落ち込んでいては制作が先に進みませんし、周囲のスタッフに気を使わせてしまいます。「1秒の失敗なんてどうだっていい!」くらいの図太い神経を持っている人がいいですね。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
やりたいことをやって、たくさん失敗してください。そして、学校では多くの友達を作って人との関わり方を学んでください。社会に出てからの挫折もたくさん経験するといいですよ。失敗や挫折を乗り越えていける人、それを楽しむ余裕がある人は、必ずいつか大きなチャンスをつかめると思います。
松下さんのお話から、タイムキーパーの仕事はテレビ番組の進行管理を任される大変重要な仕事であることが分かりました。周囲への気遣いが必要ですし、同時に制作現場のムードメーカーとして少々の失敗ではへこまない強い精神力、前向きな性格も求められます。
部活の練習をチームで頑張っている人、目標に向かって仲間と何かに一所懸命に取り組んでいる人、よく食べてよく寝てよく笑うことに自信がある人は、タイムキーパーに向いているかもしれませんね。
【profile】有限会社ティービージー 取締役・タイムキーパー 松下絵里
TBGタイムキーパースクール タイムキーパーBlog https://ameblo.jp/tbg-timekeeper
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
新しい感性やアイデアを常に発揮して、人を感動させたり驚かせたりする仕事です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種は多岐にわたります。声優やタレントをめざすには、在学しながら自分を磨きオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が大切です。
この記事で取り上げた
「タイムキーパー」
はこんな仕事です
テレビやラジオの番組収録中に、時間を管理するのが仕事。ストップウォッチを片手に、常に進行状況を把握し、残り時間を的確にスタッフに伝える。特に生放送では欠かせない存在である。仕事の流れとしては、まず番組の進行表を確認し、それに基づいて番組内の各コーナーの割り振りを秒単位で設定する詳細な「Qシート」に記載して全スタッフに配布する。そして、収録が始まれば「Qシート」を使って時間を管理していく。働き方としては、テレビ局、制作会社の社員や契約・派遣社員が多い。
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